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第13章 新たな「旅立ち」に向けて
第380話 「占術師」のエスター
しおりを挟むギルバートがその女性に出会ったのは、今から数年前のことだった。
「あんたが『探し物が上手い』って評判のエスターさんかい?」
と、ギルバートがその女性、エスターに向かってそう尋ねると、
「いいえ、人違いです」
と、エスターはそう即答した。
しかし、それから暫くして、
「やっぱりあんたがエスターさんじゃねぇか」
と、エスターが『力』を使っていたところをギルバートに見られてしまい、
「よっしゃあ、確保ぉーっ!」
「え、ちょっとま……あああああれぇえええええっ!」
と、エスターは強制的にウォーリス帝国へと連行されてしまった。
その後、エスターは固有職保持者であることが知られてしまったが、
「へぇそうなんだ。じゃああんた、このままこっちで暮らしちまいなよ」
と、ギルバートにそう提案されて、以降はウォーリス帝国内にある訳あり者の為の「保護区」で暮らすことになって、現在に至るという。
「……とまぁ、こういうわけよ」
と、ギルバートがそう説明すると、
『いや思いっきり拉致っとるやないかーいっ!』
と、春風達はギルバートに思いっきり突っ込みを入れた。何故か関西弁になっていたが。
それから少しして、
「で、その保護している彼女がどうしてここに?」
と、ウィルフレッドが真面目な表情でギルバートにそう尋ねると、
「それは、私がお答えします」
と、ギルバートの代わりにエスターがそう答えた。
彼女曰く、いつものように「保護区」で占術師としての訓練をしていた時、「自身が春風達に出会って力を貸す」という「未来」が見えたのだそうだ。
一体何故そんな「未来」を見たのかを考えていたら、丁度配信されていた春風とループス、そしてガストとの戦いを見て、
(あれ? これってもしかして、近いうちに私の『力』が必要になってくる?)
と感じ、すぐにメルヴィンに話して準備をした後、大急ぎで春風達のもとへと出発したという。
エスターからの説明を聞き終えた春風は、
「はぁ、お話はわかりました。つまり、エスターさんは俺達を手助けする為にここに来たというわけですね?」
と、エスターに向かってそう尋ねると、
「その通りです」
と、エスターは真面目な表情でそう答えた。
するとそこへ、
「大丈夫だ春風、こいつの『力』は本物だ。ウチらもかなり世話になってるんだわ」
と、ギルバートがエスターのフォローに入ったので、
「わかりました。ギルバート陛下がそう言うのでしたら、俺もエスターさんを信じます」
と、春風はギルバートに向かってそう言った。
その時、
「ちょ、ちょっと待ってください!」
と、水音が「待った」をかけてきて、周囲が「何だ何だ!?」と驚いていると、
「春風、ちょっとこっちへ!」
「うわ! 何!?」
と、水音は春風を強引に連れてテントの外に出た。
ついでに、リアナも2人を追うようにテントの外に出た。
「何だよ水音?」
と、春風が若干不機嫌気味に水音にそう尋ねると、
「春風、本気であの人に頼ろうとしてるの?」
と、水音は小声でそう尋ね返した。
どうやら水音はエスターのことを疑ってる様子だったので、
「あれ? もしかして水音、占いとか信じてない方だったり?」
と、不機嫌気味の表情から一転して、ちょっと揶揄ってやろうと言わんばかりの表情で水音に尋ねた。
すると水音は、
「い、いやぁ、そんなことはないけど、相手は初対面の人だし……」
と、ちょっと焦った様子でそう返したので、
「水音、気持ちはわかるけど、今の俺達はこれからどうすればいいのかわからない状況なんだ。あの人の『力』でこの状況をどうにか出来るなら、それに賭けてみるしかないんじゃないかな?」
と、春風は真面目な表情になって水音を諭した。
因みに、リアナもそんな春風の横でうんうんと頷いていた。
水音は「いやでも……」と何か言おうとしたが、
「……わかったよ春風。君がそう言うんなら、僕も信じてみるよ」
と、観念したかのような表情でそう言った。
春風はそんな水音を見て、
「ありがとう。じゃあ、行こっか!」
と、笑顔でそう言うと、リアナと水音と共にテントの中へと戻った。
「お、どうやら話は決まったようだな?」
と、ギルバートが尋ねると、
「はい、今決まりました」
と、春風はそう返事をした。
そして、春風はエスターの方へと視線を向けると、
「エスターさん、どうか俺達に力を貸してください。お願いします」
「「お願いします」」
と、リアナ、水音と一緒になって、エスターに向かって深々と頭を下げた。
エスターはそんな3人を見て、
「わかりました、私の方こそ、よろしくお願いします」
と、エスターも3人に向かって深々と頭を下げた。
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