ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第13章 新たな「旅立ち」に向けて

第353話 「私の為に争わないで!」

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 「あ、あの人が、アーデさんのお母さん?」

 突然のアデレードのお母さんにしてグレイシア王国の女王クローディアの登場というイベントに、春風とその仲間達は理解が追いつかなかった。

 そんな春風達をよそに、アデレードはクローディアに向かって、

 「お母様、一体どうしてこちらに?」

 と、尋ねると、

 「母親が娘に会いに行くのに理由がいるのか?」

 と、クローディアは「何言ってんだ?」と言わんばかりの表情でそう尋ね返した。

 そんなクローディアに対して、アデレードは「え?」となりながら、

 「わ、私に会いに、ですか?」

 と、恐る恐る再び尋ねると、クローディアはニコリと笑って答える。

 「ああ。『強い奴と戦う為にハンターになる』と言って国を出て以来、全くと言っていいほど帰ってこないうえに、『白金級ハンター』になったからといってどうも調子に乗っている阿呆で愚かな娘に会いに、な」

 「ふぐぅ!」

 (き、厳しいーっ!)

 クローディアのあまりの言葉を聞いて、精神的ダメージを受けたかのように苦しむアデレードを見て戦慄する春風。そんな春風の横では、

 「うわぁ、相変わらず娘に対して厳しいなぁおい」

 と、ギルバートが呆れ顔でクローディアを見ていた。

 だが、そんな春風達をよそに、クローディアは更に話を続ける。

 「まぁ、ここに来たのはお前以外にもう1人……いや、会いたい人物がいるのだがな」

 「わ、私以外に、ですか?」

 「そうだ。お前以外に……」

 そう答えると、クローディアは、

 「なぁ、幸村春風にリアナ・フィアンマ」

 と、ギロリと春風と隣にいるリアナの方へと視線を向けた。その視線を受けて、春風はビクッと身構え、リアナは思わず「ヒィッ!」小さく悲鳴をあげた。

 視線を向けたクローディアは、素早くその場から春風達の前へと移動すると、

 「はじめまして、幸村春風とリアナ・フィアンマ。私の名は、クローディア・リンジー・グレイシア。グレイシア王国現・女王にして、向こうにいるアデレードの母である。以後よろしく」

 と、先程までアデレードに見せたキツい態度とは違って気品に満ちた挨拶をしたので、

 「お初にお目にかかります、クローディア女王陛下。幸村春風と申します」

 「り、リアナ・フィアンマです! ハンターを務めております!」

 と、春風は礼儀正しく、リアナは緊張しているのか丁寧にしつつも何処かにぎこちない挨拶を返した。

 その挨拶に、クローディアは「ほほう、これはご丁寧に」と言うと、

 「少し失礼する」

 と言って、春風とリアナの顔に触れながらジィっと見つめて、

 「ふむ、中々良い顔立ちだ。特に幸村春風の方は、まさに女と思えるくらいにな。そして、2人共強い意志を秘めた良い目をしている」

 と、評価すると、

 「決めたぞアデレード! この2人は我々グレイシアが貰う!」

 と、アデレードに向かってそう言い放ったので、春風、リアナ、アデレードは思わず、

 「「「ハァアッ!?」」」

 と、驚きの叫びをあげた。

 その叫びに反応したのか、

 「おいコラ、ちょっと待てクローディア!」

 と、ギルバートが声を荒げると、

 「ん? どうしたギルバート?」

 と、クローディアが尋ねてきた。

 「『どうした』じゃねーよ! いきなりやって来たかと思ったら、春風とリアナを貰うだぁ!? ふざけんじゃねぇよ、リアナはともかく春風はもうウォーリス帝国もんだ!」

 怒りながら文句を言うギルバートに、リアナが「ちょっと! 私はいいの!?」と突っ込みを入れようとしたが、それより先に、

 「何だと? 貴様のとこは十分国として潤ってるではないか! ならば1つくらい我らによこせ!」

 と、クローディアがそう怒鳴ったので、

 「冗談じゃねぇ! 『よこせ』と言われて従う馬鹿がいるかぁ! 春風こいつ帝国うちの発展の為に必要な存在なんだ!」

 と、ギルバートはグイッと春風を両肩を掴みながらそう怒鳴り返した。

 それが火に油を注いだのか、クローディアは更にカッとなって怒鳴る。
 
 「貴様ぁ、まだ自分の国を大きくしたいのか!? そうやって貴様が何でもかんでも欲しがって手に入れまくるから、我々小国が全然発展しないんじゃないか! いい加減その強欲ぶりを何とかしろ!」

 「やーだね! 『強欲』は俺の専売特許なんでな! 『何とかしろ』って言われて従うかっての!」

 「何だとぉ!?」

 お互い怒鳴り合いながらバチバチと火花を散らす皇帝と女王。

 そんな2人を見て、春風は「や……」オロオロとした末に

 「やめて、私の為に争わないでぇっ!」

 と、思わず周囲から「何処のヒロインだ!」と突っ込みを入れられそうな叫びをあげた。
 
 しかし、

 「止めるな春風。これは国を背負う者達の『誇り』をかけた戦いなんだ」

 「そうだ。だが安心しろ、私はそう簡単にやられたりはしないからな」

 と、真面目に返されてしまい、

 「ああ、もう! 誰かこの2人を止めてくれぇ!」

 と、春風は更に悲鳴をあげた。

 すると、

 「

 と、なんとも場違いな発言が聞こえたので、その場にいる誰もが「え?」となった次の瞬間……。

 ーーガシッ!

 「「うぐ!」」

 と、ギルバートとクローディアは誰かに頭を思いっきり掴まれた。

 「こ、この手の感触は……」

 「ま、まさか……」

 2人は恐る恐るその手の持ち主の方へと視線を向けると、

 「どうもぉ、

 そこにいたのは、

 「え、エリー!?」

 「エリノーラ!?」

 エリノーラだった。
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