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第13章 新たな「旅立ち」に向けて
第351話 小夜子からの質問、そして、判決
しおりを挟むループスとの決闘、からの、ガストとの戦い、からの、まさかの「学級裁判」。
小夜子がそう宣言した後、あれよあれよという間に、昨日に引き続き再び簡易裁判所が設置されると、春風、水音、歩夢、美羽の4人は揃って被告人に、そして小夜子は裁判長的な立場となり、現在に至る。
(うぅ。ホントに何でこうなった?)
と、心の中で嘆く春風をよそに、
「あ、あのぉ、すみません」
と、春風の隣に立つ水音が「ハイ」と手を上げた。
「む、何だ桜庭?」
「僕と春風はわかるのですが、どうして海神さんと天上さんまで被告人になっているんですか?」
と、水音が小夜子に向かってそう尋ねると、
「色々と聞きたいことがあるからな。まぁ、返答次第では『有罪判決』をくだすこともあるかもしれん」
と、答えたので、それを聞いて歩夢と美羽は
「「ガーン!」」
と悲鳴をあげて、2人はガクリと肩を落とした。
しかし、そんな彼女達を無視して小夜子は、
「さて幸村」
「は、ハイ!」
「決闘の最中にループス様が言っていたことは事実か?」
と、春風に向かってそう質問した。
その質問に対し、春風は「うぅ」と答えるのを躊躇ったが、
「……はい、事実です」
と、顔を下に向けてそう答えると、
「そうか。では、海神と天上のこと、お前はどう思ってる?」
と、小夜子は質問を続けた。
「うぐ! それは……」
と、春風は再び答えるのを躊躇ったが、
「……大変言い辛いのですが、ミウさんに関しては、突然のことでまだどうすればいいのか戸惑っていますが、ユメちゃんに関しては、その……凄く、大切に思ってます」
と、恥ずかしそうにそう答えた。
その答えに、周囲は
『オオォ!』
と、歓声をあげ、隣で聞いていた歩夢は嬉しそうに顔を赤くしたが、美羽は「え~?」と頬を膨らませてた。
その後、小夜子は小さく「そうか」と言うと、歩夢と美羽を交互に見て、
「では、海神に天上」
「「ハ、ハイ!」」
「2人は幸村のこと、どう思ってるんだ? 複数の女達に囲まれたこいつを」
と、幸村を指差しながらそう尋ねた。
2人はその質問に対して、お互い顔を見合わせた後、すぐに小夜子に向き直って、まずは歩夢が、
「凄く、大切です。もう二度と、離れたくありません」
と答えると、次に美羽が、
「ええ。それは私も同じです。というか、それ以上に、逃す気なんてありませんから」
と、強気な態度でそう答えた。
その答えを聞いて、周囲の人達は、
『オオオオオォッ!』
と、春風の時以上の大きな歓声をあげた。
小夜子も一瞬たじろいたが、
「そ、そうか、わかった」
と、すぐに真剣な表情になってそう言った。
その後、小夜子は「コホン」と咳き込むと、最後に水音に視線を移して、
「で、最後に桜庭」
「は、ハイ!」
「お前、私達のもとを去ってから、ウォーリス帝国で何があったんだ?」
「な、『何が』とは?」
「無論、セレスティア様とその『幼なじみ』とやらの関係についてだ。で、一体お前身に何があったというんだ?」
と、小夜子にそう問い詰められて、水音はダラダラと滝のように汗を流したが、やがて観念したのか、ゆっくりと口を開く。
「その……セレスティア様とは帝国で一緒の時を過ごしてたんです。兵士や騎士に混じって一緒に訓練を受けて、時には一緒に遠征任務に出て……」
「ほうほう」
「で、その際に色々と、鍛えられてしまいまして……」
『い、色々とな!?』
「さ、最初は必死で抵抗したんですけど……その……」
(ま、まさか!)
「い、いつのまにか、受け入れるようになってしまいました」
水音のその言葉に、春風達を含めた周囲の人達が沈黙すると、
「セレスティア様ぁ! あなた私の生徒に何をしたんですかぁ!?」
と、小夜子は傍聴席に座るセレスティアに向かって、怒鳴るように尋ねた。
尋ねられたセレスティアは、
「フフフ」
と、顔を赤くしながら不敵な笑みを浮かべた。
その態度を見て、小夜子はショックで膝から崩れ落ちそうになったが、どうにか踏ん張って再び水音に尋ねる。
「そ、そうか。で、セレスティア様の『幼なじみ』とは一体何なんだ?」
「はい、セレスティア様には2人の幼なじみがいまして、1人はセレスティア様に付き従う従騎士の女性で、もう1人はセレスティア様とその従騎士の女性の装備を造る鍛治師の女性です。僕のこの装備も、その人の作品なんです」
そう答えた水音の言葉に、小夜子は「なるほど」と小さく言うと、
「で、その幼なじみ2人とお前との間に何があったんだ?」
と、尋ねた。
水音は言いにくそうに答える。
「そ、そのぉ、えっと、実はその2人にも……色んな意味で鍛えられてしまいまして……」
その答えを聞いて、再び周囲の人達が沈黙すると、小夜子は空を見上げて、
「私の生徒にぃ、何をしたんだぁーっ!」
と、思いっきり叫んだ。
その叫びを聞いて、春風はチラリと傍聴席のセレスティアを見ると、彼女の隣に座っている帝国騎士と思われる女性が、なにやら顔を赤くしてモジモジしていた。
「ねぇ、水音。あの人がその幼なじみかな?」
と、春風が小声で水音にそう尋ねると、
「うん。彼女が幼なじみのリネットさん」
と、水音も小声でそう答えた。
すると、叫び終えた小夜子は、
「ハァアアアアアアア……」
と、深い溜め息を吐いて、
「ま、詳しいことは後で聞くとしよう。それでは、お前達に、判決を言い渡す」
と、真面目な表情で静かに言った。
その言葉に春風達を含めた周囲の人達が、皆ゴクリと固唾を飲む中、小夜子はビシッと判決を言う。
「私と他のクラスメイト達を心配させた罰として、お前達はこれからは私の監視下に置く!」
『え、えぇっ!?』
「特に幸村、お前はここにいる間は単独行動は一切禁止だからな!」
「そ、そんなぁ!」
文句を言いたい春風を無視して、
「以上、これにて閉廷!」
と、小夜子は声高々に宣言するのだった。
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