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第12章 集結、3人の「悪魔」
第343話 「妖刀」5
しおりを挟むその後、春風が見たのは、彼岸花を鍛えた鍛治師の女性による、壮絶な戦いだった。
襲い来る異形の魔物の群れに対し、女性は彼岸花を手に、たった1人で戦いを挑んだ
魔物の群れ自体も凄まじかったが、女性の凄まじさはそれに負けないくらい……いや、それ以上だった。
戦う前の女性は綺麗な長い黒髪だったが、彼岸花に力を込めた瞬間、その刀身と同じように真紅に染まった。
更に女性の右目は、まるで本当に燃えているかのように、彼岸花の刀身と同じ真紅のオーラに包まれていた。
それ自体も恐ろしいものを感じた春風だが、やはり1番恐ろしかったのは、彼岸花を握る女性の右腕だった。その腕には、彼岸花から伸びたいくつもの金属の触手が巻き付いてたのだ。
そんな状態で戦う女性を見て、春風は「怖い」と感じていたが、それに負けないくらい「綺麗だ」とも感じていた。
それから女性は一匹、また一匹と魔物を倒していくと、やがて今まで戦ってきたもの以上に大きな魔物と対峙した。
その魔物を見て、女性は小さく呟く。
「漸く、見つけた」
女性はニヤリと笑いながらそう言うと、彼岸花に更に力を込めて、その大きな魔物と戦った。
自分よりも大きな相手を前にしても屈さない女性の精神力と鬼神の如き戦いぶりを見て、
(……す、凄い)
と、春風はそう感じた。
そして激しい戦いの末、勝ったのは……女性だった。
女性の最後の一撃を受けた大きな魔物は、
ーーギャアアアアアアアッ!
と、大きく断末魔の悲鳴をあげると、そのまま息絶えた。
「や、やった……」
と、肩で息をする女性。
しかし、
「!?」
その後すぐに、女性もバタンとその場に倒れた。
「あ!」
それを見た春風が、急いで女性のもとへと向かうと、女性の顔色はまるで生気を失ったかのように青白くなっていた。
更に右腕に巻き付いた彼岸花の触手もいつの間にか増えていて、最早腕全体にまで至っていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
と、春風は大慌てで女性に話しかけたが、やはり聞こえてないのか、彼女からの返事はなかった。
その後、女性はゴロンと仰向けになると、触手が巻き付いてない左腕を上にかざし、
「……みんな、仇はとったよ」
と、涙を流しながら天に向かってそう言った。
次の瞬間、女性の身に「異変」が起きた。
彼岸花からまた無数の触手が伸びて、腕だけでなく女性の左腕だけでなく頭のてっぺんからつま先にまで巻き付いたのだ。
「……」
女性は抵抗する気がなかったのか、先程までかざしていた左腕をパタリと倒した。
それから暫くすると、女性を覆い尽くしたその触手が、全て彼岸花に戻った……のだが、
「あれ!? い、いなくなってる!?」
女性の肉体は影も形もなく消えていた。
(ど、どうなってんだ!?)
と、春風が驚いたその時、春風の脳裏に、水音との決闘中に言ってた凛依冴の言葉が浮かんだ。
ーー剣の『悲しみ』に喰われて、全てを失う。
(あれは、こういうことだったのかよ!?)
そう考えて、春風は女性が消えた跡と、残された彼岸花を見て、ギリっと歯軋りをした。
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