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第12章 集結、3人の「悪魔」
第332話 そして、少年と「神」の戦いが始まった
しおりを挟む「驚きました。まさか、このような場所があったなんて」
と、春風は今自分がいる場所を見てそう感心すると、
「どうだい春風。まさに『決闘』に相応しい場所だろ?」
と、ループスはニヤリと笑ってそう尋ねた。
ループスに案内された「決闘の場」。
そこは、まるで闘技場のような所で、廃都の中のようにあちこち朽ちてはいるが、以前水音との決闘で使われたウォーリス帝国の帝都にある闘技場よりも、広く、大きかった。
当然、そこには観客席のような場所もあり、春風に同行した人達は、皆そこに座っていて、その周辺には春風達を案内した者達と同じようなマントを羽織った仮面の人物が複数いた。
「……」
そして、肝心の春風はというと、その闘技場のような所の中心で、今回の決闘の相手であるループスと向き合っていた。
目の前にいるループスは、まるで人間のように2本足で立っていた。狼の頭部を除いて、上半身は鍛え上げた人間の男性だが、下半身は狼のものを人間みたいにしたようなものになっていて、お尻にはちゃんと狼の尻尾があった。
そして、そんな異様な姿をしたループスの手には、無骨だが切れ味の良さそうな片刃の長剣が握られていた。
「さて、俺の方は準備出来たが、そっちはどうだ?」
と、ループスが春風に向かってそう尋ねると、
「ちょっと待ってください」
と何かを思い出したかのようにそう言った後、春風は左腕のアガートラームMkーⅡに向かって、
「すみません、ジゼルさん」
と、話しかけた。
すると、アガートラームMkーⅡから……否、正確には内部に装着された魔導スマートフォン零号【改】から、ジゼルが出てきた。
「おお、ジゼルじゃないか! 久しぶりだな!」
ループスはジゼルを見て驚きの声をあげると、
「お久しぶりです、ループス様」
と、ジゼルはループスに向かって丁寧なお辞儀をしながら挨拶をした。
「うーむ。『精霊』になったという情報は耳にしていたが、なるほど、『幽霊』だった時とは違って強い『力』に満ちているのはわかるし、何より綺麗になったじゃないか」
「ありがとうございます。これも全ては、春風様のおかげです」
「おお、そうかそうか」
「と言いましても、精霊になれましたのはループス様のおかげでもあるのですよ。この姿になったきっかけは、あなたの分身と戦った後のことなのですから」
「え、マジで!?」
「はい。詳しいことはこの決闘が終わってからお話しします」
と、ループスとジゼルがそんなやり取りをしていると、側で聞いていた春風が「コホン」と咳き込んで、
「あー、すみませんが、ちょっとよろしいでしょうか?」
と言うと、ジゼルの方を向いて、
「ジゼルさん、申し訳ありませんが、みんなの所にいてほしいのですが……」
と、若干申し訳なさそうにそう頼むと、
「わかりました。では春風様、お気をつけて」
と、ジゼルはそう言って、仲間達のいる観客席へと飛んでいった。
春風はそれを確認すると、ループスに向き直って、
「さぁ、ループス様。これでこちらの準備が出来ました」
と言いながら、腰の彼岸花を鞘から引き抜き、構えた。
ループスはそれを見て、
「フム、そうか」
と言うと、自身も握っていた長剣を構えた。
その瞬間、春風とループスがいるその場は、一気に静寂に包まれた。
仲間達だけでなく仮面の人物達も、武器を構えたまま動こうともしない春風とループスを見て、ゴクリと固唾を飲んだ。
そして、仲間の1人の顔面からツゥっと汗が流れて、ポタッと地面に落ちた瞬間、
「「っ!」」
春風とループスが同時に動いて、それぞれの武器をぶつけ合った。
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