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第12章 集結、3人の「悪魔」
第325話 その後の国王と皇帝と……
しおりを挟む春風の裁判(?)中に突然現れた、「邪神」こと「月光と牙の神ループス」。
春風に1対1の決闘を申し込むと、そのままスゥッと目の前で消えた。
ウィルフレッドとギルバートはそれぞれの兵士達に探すよう命令したが、結局見つかることはなかった。
その夜、
「大変なことになったな」
「ああ、そうだなぁ」
帝国陣地にある皇族専用のテントの中で、ウィルフレッドとギルバートは「ハァ」と溜め息を吐きながらそう言った。
「まさか、春風殿が『神』から決闘を申し込まれることになるとは……」
「ったく、どんなイベントだっつーの。ていうか、『勇者』思いっきり無視されてんじゃねーかよ」
「ハハ、確かにな。彼らに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいだよ」
そんなやり取りの後、2人は再び「ハァ」と溜め息を吐いた。
それから少しすると、不意にギルバートはテント内に立つ1人の騎士を見て、
「なぁ、お前さんはどう思うよ?」
と話しかけた。
顔全体を兜で隠したその騎士は、ギルバートの問いに少しだけ沈黙していると、
「……そうですね。確かに、大変なことになりましたね」
と答えた。
その声に聞き覚えがあったのか、ウィルフレッドは、
「む。そ、その声は……」
と、騎士に尋ねようとすると、騎士はウィルフレッドの前に出て、兜を脱ぎ、その場に跪いた。
「ウォーレン・アークライト大隊長!」
「お久しぶりです、ウィルフレッド陛下」
その騎士の正体は、断罪官大隊長、ウォーレン・アークライトだった。
「な、何故、其方がここにいるのだ? というか、その格好は一体?」
まさかのウォーレンとの再会に、ウィルフレッドは戸惑った様子で尋ねると、
「ハッ! 我ら断罪官は、幸村春風とその仲間達との戦いに敗れた後、小隊長並びに隊員共々、ウォーリス帝国で治療を受けていたのです。その後、邪神……否、『真の神』ループスと戦いに向かうこと、その戦いに幸村春風も加わることを知り、ギルバート皇帝陛下に無理を言って、こうしてこの場に同行させてもらったのです。因みにこの鎧姿は、『断罪官がいるって知られたら色々面倒だから、ついてくるならこいつを身につけろ』と、ギルバート皇帝陛下が用意してくださったものです」
と、ウォーレンは跪いたままそう答えた。
「おお、そうだったのか……ん? ちょっと待て。今、『真の神』と申したのか? もしかして其方、昨日の我々とアマテラス様の話を……」
と、ウィルフレッドがウォーレンにそう尋ねようとすると、
「はい。真に勝手ながら、全て聞かせてもらいました。我らの『歴史』のことも、今、この世界に起きようとしていることも、そして、幸村春風の『本当の目的』も」
と、ウォーレンは跪いたままそう答えた。
それを聞いてウィルフレッドは、たらりと冷や汗を流すと、
「……そ、それでは、今日の裁判も、聞いていたのか?」
と、再びウォーレンにそう尋ねると、
「はい、そちらも全て聞かせてもらいました。どうやら陛下は、相当ヤンチャのようでしたな」
と、何度も言うが、ウォーレンは跪いたままそう答えた。
それを聞いた瞬間、ウィルフレッドは顔を恥ずかしそうに顔を真っ赤にしたが、すぐに首を横に振るって真面目な表情になると、
「そうか、聞いていたのなら、話は早いな。そう、春風殿には大切な『目的』があってこの世界に来た。そして私は、一国の主であると同時に、1人の『父親』なのだ。この世界の為、セイクリアの為に、そして、我が娘イブリーヌの幸せの為に、どうか春風殿の命を狙うのはやめてほしい」
と、ウォーレンに向かってそう命令した。
それを聞いたウォーレンは、
「……わかりました、彼の命を狙うのはやめます」
と、その命令を受け入れたので、ウィルフレッドは「感謝する」とホッと胸を撫で下ろした。
だが、
「ですが、『戦い』自体は、これからも挑ませてもらいます」
と、ウォーレンは顔を上げてはっきりとそう言った。
「え、な、何故だ!?」
まさかの言葉にウィルフレッドが慌てて尋ねると、
「当然でしょう? 私は既に幸村春風に敗北しているのですよ? この事実、断罪官大隊長として絶対に許すわけにはいかないのです」
と、ウォーレンは「何を言ってるのだ?」というオーラを出しながら、真面目な表情でそう答えた。
その答えに、「え、えぇ?」と戸惑うウィルフレッドとギルバートを前に、ウォーレンは更に口を開く。
「それに……」
「そ、それに?」
「幸村春風、奴には私に精神的なショックを与え、隊員達の純情を弄び、ギャレットとダリアに深い精神的なダメージを与えた『罪』を償ってもらわねばなりませんから」
「な、なんだとぉ!?」
その後、春風の「魅力」を巡って、ウィルフレッドとウォーレンは激しい口論を繰り広げた。
それを見てギルバートは、
「……やれやれ、春風も罪な奴だなぁ」
と、本日3度目の溜め息を吐いた。
(あれ? そういやぁ、春風は今どこにいるんだ?)
その頃、肝心の春風はというと、
「……ほんと、やれやれだよ」
只今、セイクリアの騎士達に囲まれていた。
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