ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

文字の大きさ
上 下
361 / 608
第12章 集結、3人の「悪魔」

第325話 その後の国王と皇帝と……

しおりを挟む

 春風の裁判(?)中に突然現れた、「邪神」こと「月光と牙の神ループス」。

 春風に1対1の決闘を申し込むと、そのままスゥッと目の前で消えた。

 ウィルフレッドとギルバートはそれぞれの兵士達に探すよう命令したが、結局見つかることはなかった。

 その夜、

 「大変なことになったな」

 「ああ、そうだなぁ」

 帝国陣地にある皇族専用のテントの中で、ウィルフレッドとギルバートは「ハァ」と溜め息を吐きながらそう言った。

 「まさか、春風殿が『神』から決闘を申し込まれることになるとは……」

 「ったく、どんなイベントだっつーの。ていうか、『勇者』思いっきり無視されてんじゃねーかよ」

 「ハハ、確かにな。彼らに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいだよ」

 そんなやり取りの後、2人は再び「ハァ」と溜め息を吐いた。

 それから少しすると、不意にギルバートはテント内に立つ1人の騎士を見て、

 「なぁ、お前さんはどう思うよ?」

 と話しかけた。

 顔全体を兜で隠したその騎士は、ギルバートの問いに少しだけ沈黙していると、

 「……そうですね。確かに、大変なことになりましたね」

 と答えた。

 その声に聞き覚えがあったのか、ウィルフレッドは、

 「む。そ、その声は……」

 と、騎士に尋ねようとすると、騎士はウィルフレッドの前に出て、兜を脱ぎ、その場に跪いた。

 「ウォーレン・アークライト大隊長!」

 「お久しぶりです、ウィルフレッド陛下」

 その騎士の正体は、断罪官大隊長、ウォーレン・アークライトだった。

 「な、何故、其方がここにいるのだ? というか、その格好は一体?」

 まさかのウォーレンとの再会に、ウィルフレッドは戸惑った様子で尋ねると、

 「ハッ! 我ら断罪官は、幸村春風とその仲間達との戦いに敗れた後、小隊長並びに隊員共々、ウォーリス帝国で治療を受けていたのです。その後、邪神……否、『真の神』ループスと戦いに向かうこと、その戦いに幸村春風も加わることを知り、ギルバート皇帝陛下に無理を言って、こうしてこの場に同行させてもらったのです。因みにこの鎧姿は、『断罪官がいるって知られたら色々面倒だから、ついてくるならこいつを身につけろ』と、ギルバート皇帝陛下が用意してくださったものです」

 と、ウォーレンは跪いたままそう答えた。

 「おお、そうだったのか……ん? ちょっと待て。今、『真の神』と申したのか? もしかして其方、昨日の我々とアマテラス様の話を……」

 と、ウィルフレッドがウォーレンにそう尋ねようとすると、

 「はい。真に勝手ながら、全て聞かせてもらいました。我らの『歴史』のことも、今、この世界に起きようとしていることも、そして、幸村春風の『本当の目的』も」

 と、ウォーレンは跪いたままそう答えた。

 それを聞いてウィルフレッドは、たらりと冷や汗を流すと、

 「……そ、それでは、今日の裁判も、聞いていたのか?」
 
 と、再びウォーレンにそう尋ねると、

 「はい、そちらも全て聞かせてもらいました。どうやら陛下は、相当のようでしたな」

 と、何度も言うが、ウォーレンは跪いたままそう答えた。

 それを聞いた瞬間、ウィルフレッドは顔を恥ずかしそうに顔を真っ赤にしたが、すぐに首を横に振るって真面目な表情になると、

 「そうか、聞いていたのなら、話は早いな。そう、春風殿には大切な『目的』があってこの世界に来た。そして私は、一国の主であると同時に、1人の『父親』なのだ。この世界の為、セイクリアの為に、そして、我が娘イブリーヌの幸せの為に、どうか春風殿の命を狙うのはやめてほしい」

 と、ウォーレンに向かってそう命令した。

 それを聞いたウォーレンは、

 「……わかりました、彼の命を狙うのはやめます」

 と、その命令を受け入れたので、ウィルフレッドは「感謝する」とホッと胸を撫で下ろした。

 だが、

 「ですが、『は、これからも挑ませてもらいます」

 と、ウォーレンは顔を上げてはっきりとそう言った。

 「え、な、何故だ!?」

 まさかの言葉にウィルフレッドが慌てて尋ねると、

 「当然でしょう? 私は既に幸村春風に敗北しているのですよ? この事実、断罪官大隊長として絶対に許すわけにはいかないのです」

 と、ウォーレンは「何を言ってるのだ?」というオーラを出しながら、真面目な表情でそう答えた。

 その答えに、「え、えぇ?」と戸惑うウィルフレッドとギルバートを前に、ウォーレンは更に口を開く。

 「それに……」

 「そ、それに?」

 「幸村春風、奴には私に精神的なショックを与え、隊員達の純情を弄び、ギャレットとダリアに深い精神的なダメージを与えた『罪』を償ってもらわねばなりませんから」

 「な、なんだとぉ!?」
 
 その後、春風の「魅力」を巡って、ウィルフレッドとウォーレンは激しい口論を繰り広げた。

 それを見てギルバートは、

 「……やれやれ、春風も罪な奴だなぁ」

 と、本日3度目の溜め息を吐いた。

 (あれ? そういやぁ、春風は今どこにいるんだ?)

 その頃、肝心の春風はというと、

 「……ほんと、やれやれだよ」

 只今、セイクリアの騎士達に
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-

mao
BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:94

溺れるカラダに愛を刻んで

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:846pt お気に入り:13

失くしたあなたの物語、ここにあります

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,418pt お気に入り:5

婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした -番外編-

恋愛 / 完結 24h.ポイント:13,561pt お気に入り:307

【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,816pt お気に入り:734

半神の守護者

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:133

転生王子はダラけたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,651pt お気に入り:29,425

処理中です...