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第12章 集結、3人の「悪魔」
第313話 北の大地での再会
しおりを挟む春風達を乗せたウォーリス帝国の馬車が辿り着いた場所。
そこはまさに、「廃墟」と呼ぶに相応しい、酷く荒れ果てた所だった。
かつて「最初の固有職保持者が生まれた国」と呼ばれていた国の主要都市だったその場所は、現在では1人も人がいない代わりに、無数の瓦礫の山と数多の魔物の巣だけが存在する、危険な場所と成り果てていた。
そんな危険な場所から少し離れた所では、大国・セイクリア王国と中立都市シャーサルからきた人間達がたてた、「作戦本部」という名の大きなキャンプがあり、今、そのキャンプ……といってもそこから更に少し離れた場所に、ウォーリス帝国の馬車が到着した。
数多くの馬車がその地に止まると、馬車の出入り口が開かれて、そこから皇帝ギルバートとセイクリア王国第2王女イブリーヌの他に、大勢の騎士、兵士、魔術師達が降りてきた。
勿論、その中には春風達「七色の綺羅星」や、水音や歩夢ら「勇者」達もいるのだが、肝心の春風だけはというと、
「あぁ、悪りぃが春風は、ちょっと中で待ててくれ」
と、ギルバートに言われて、春風だけ馬車の中に残された。
「……まぁ、色々やらかしちゃったから、仕方ないか」
と、1人馬車の中でそう呟いていると、
「よし、降りていいぞ」
と、ギルバートに呼ばれたので、春風は漸く馬車を降りることが出来た。
そして実際に降りてみると、馬車の前では多くの騎士や兵士達が、
「中は絶対に見せん!」
と言わんばかりに、皆向こうにいる人達に馬車の中を見せないように集まっていて、まさにバリケードのようになっていた。
春風はそんな彼らを見て、
(皆さん、本当にすみません)
と、心の中で謝罪した。
その後、春風は仲間達と合流し、兵士達と一緒にテントをはっていると、向こうの方から数人の人物がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
春風はそれを見て、「何だろう?」と思いつつテントをはる作業に戻ると、
「春風、陛下が来てくれって」
と、水音に呼ばれたので、春風はすぐに水音と共にギルバートのもとに向かった。
ギルバートの近くに着くと、そこにはギルバートとイブリーヌ、そして帝国第1第1皇子レイモンドと、その妹である第1皇女セレスティア、そして、歩夢や鉄雄達の他に、
(……あ)
「久しぶりだな、幸村春風殿」
セイクリア王国国王ウィルフレッドがいた。
ウィルフレッドに挨拶された春風は、最初は少し驚いたが、すぐに真面目な表情になって、
「お久しぶりです、ウィルフレッド陛下」
と、ウィルフレッドに対して丁寧な挨拶をした。
そんな春風を見て、ウィルフレッドが少し戸惑っていると、
「……幸村?」
と、ウィルフレッドの背後から、白銀の鎧を身に纏った1人の気の強そうな女性と、数人の少年少女達が現れた。
その姿を見て、春風はポツリと呟く。
「……あ、先生。それにみんなも……」
それは、春風のクラスの担任教師である高坂小夜子と、前原翔輝を含めた他のクラスメイト達だった。
「本当に、幸村なんだな?」
小夜子は春風に向かってそう尋ねると、
「……は、はい。お久しぶり……です」
と、春風は気まずそうにそう答えた。
その後、小夜子はプルプルと体を震わせると、
「ゆぅきぃいむらぁあああああっ!」
と、春風に向かって走り出した。
「え、あ、いや、ちょ……!」
突然のことに春風は戸惑うながらも身構えると、
「……え?」
小夜子は、春風をガバッと抱きしめた。
未だ戸惑っている様子の春風に、小夜子は口を開く。
「無事で良かった。本当に、心配したんだからな」
「っ!」
その言葉に無言で驚く春風に、小夜子は更に言う。
「おかえり」
それを聞いた春風は、叱られた子供のようにシュンとなると、
「……ごめんなさい、先生」
と謝罪し、更に続けて言う。
「……ただいま」
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