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第11章 断罪官の逆襲
第295話 決戦、断罪官28 春風vs「鉄鬼」再び7
しおりを挟む(うーむ、2人から凄まじい気迫を感じるな)
互いに武器を構えて睨み合う春風とウォーレンを見て、ヘファイストスは心の中でそう呟いた。
その時、
「ヘファイストス様!?」
と、自分の名を呼ぶ声がしたので、ヘファイストスはその声がした方へ振り向くと、
「おお! 凛依冴ちゃんじゃないか!」
そこにいたのは、凛依冴だった。
そして、その側にはリアナや水音をはじめとした春風の仲間達も集まっていて、それぞれの肩には自分達が倒した断罪官の隊員達が担がれていた。
因みに、全員死んではいない。
「う。うぅ……」
その中の1人、副隊長であるルークが、水音の肩に担がれている状態で目を覚ました。
そしてそれに続くように、リアナと歩夢に担がれているギャレットと、アデルチームに担がれているダリアも目を覚ました。
「わ、私は、生きているのか?」
少しずつ意識がはっきりしてきたルークはそう尋ねたが、それに答えた者は誰もいなかった。
何故なら、皆、目の前で起きてる戦いに視線を向けていて、それどころではなかったからだ。
「ヘファイストス様、一体これはどのような状況なのですか?」
凛依冴にそう尋ねられて、ヘファイストスは視線を春風達に向けたまま答える。
「うむ、実はな……」
そして、ヘファイストスはこれまでの経緯を説明する。
「……と、いうわけだ」
「そ、そんな!」
ヘファイストスの説明を聞き終えて、ルーク、ギャレット、ダリア、ユリウスは顔を真っ青にした。当然である。「神」より賜った武器の所為で、命どころか存在まで危うくなってしまったという事実を知ってしまったのだから。
「だ、大隊長、やめてくださ……うぅっ!」
「あ、ちょっと! 無茶しないで!」
ルークはウォーレンを止めようと叫んだが、ダメージがまだ残っているのか最後まで言うことが出来なかった。
そんなルークに向かって、ヘファイストスが口を開く。
「若造、よく見届けよ、春風がこれからやろうとしていることを」
その言葉を聞いて、ルークは視線を春風に移した。
一方、ヘファイストス達が見守る中で、春風達の方はというと、
「よっしゃ、行くぜぇっ!」
と、カルドがエクスプロシオンの中から叫んだ後、ウォーレンが春風に突進した。
しかし、それに対して春風は、槍と化した彼岸花を構えたまま、その場から一歩も動こうとしなかった。
それを見たカルドが、
(勝てる!)
と確信するのと同時に、ウォーレンはエクスプロシオンを振りかぶる。
そして、
「死ねぇ、小間使いの小僧ぉっ!」
という叫びと共に、力いっぱい春風に向かって振り下ろされた。
ドゴンという大きな音と共に、もの凄い衝撃波が発生する。
それを受けたヘファイストス達は、飛ばされないように必死で踏ん張った。
その後、全員が衝撃波が発生した場所を見ると、そこにはエクスプロシオンを振り下ろしたばかりのウォーレンがいたが、春風はそこにいなかった。
「ああ、そんな……ハル……」
リアナをはじめ、仲間達はその状況にショックを受ける中、
「ぎゃーははは! やった、やったか!」
と、カルドはエクスプロシオンの中から声高々に叫んだ。
だが、
「やってねぇよ、バーカ」
「……は?」
突然の声に、カルドが間の抜けた声を漏らすと……そのすぐ横に春風が現れた。
「ハル!」
「フーちゃん!」
突然現れた春風に、リアナと歩夢は驚きと喜びの声をあげた。それは、他の仲間達も同様だった。
実は振り下ろされたエクスプロシオンがあたる直前、春風はスッと真横に動いてその攻撃を避けると、すぐに彼岸花を地面に突き立てて衝撃で飛ばされないように踏ん張った後、ウォーレンとカルドを油断させる為に[気配遮断]のスキルを使って、自身の気配を消していたのだ。
そして、春風はスキルを解除すると、地面に突き立てた彼岸花を抜いて、
「し、しまっ……!」
「じゃーな!」
エクスプロシオンを貫き、粉々に破壊した。
「ぎゃあああああああっ!」
という断末魔の叫びと共に、破壊されたエクスプロシオンから「何か」が空に向かって飛び去った。
(これで良し! 後は……)
そう思った春風が横を振り向くと、そこには真っ黒になった右腕で春風に殴りかかろうとするウォーレンの姿があった。
「……」
無表情かつ無言で拳を繰り出したウォーレン。
しかし、春風はそれを難なく避けると、彼岸花を左手に持ち替えて、右手で握り拳を作ると、
「ウォーレンさん、歯ぁ食いしばれぇ!」
その拳で、思いっきりウォーレンの左頬をぶん殴った。
その時、
「父上ぇ!」
という叫び声を聞いて、ウォーレンはその声がした方を向くと、
「ルー……ク?」
と、小さく呟いて、そのまま数回ほど体を地面にバウンドさせると、そのまま動かなくなった。
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