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第11章 断罪官の逆襲
第290話 決戦、断罪官23 春風vs「鉄鬼」再び2
しおりを挟むそれからもウォーレンは、エクスプロシオンの斬撃と砲撃、そして自身の技を存分に振るった。
「ハァッ!」
「ぐぅっ!」
最初は何とか避けることが出来ていた春風だったが、次第に攻撃に込める力を強くするウォーレンに、かなり苦戦するようになっていた。
「どうした! 固有職保持者の、『賢者』の力はその程度かぁ!?」
攻撃しながらそう挑発してくるウォーレンに対し、春風はというと、
(だから、俺は半人前の『半熟賢者』だっての!)
と、片膝を地面について肩で息をしながら、心の中でそう叫んだ。
その様子からして、かなり疲労が溜まっている状態だった。
「これで最後だっ!」
しかし、そんな状態の春風に向かって、ウォーレンは砲撃形態にしたエクスプロシオンから、かなり大きな炎の砲弾を放った。
迫り来る砲弾に、春風は動くことが出来ずにいた。
しかし、
「調子に、乗るなぁっ!」
と、春風はそう叫ぶと、その砲弾に向かって左腕を突き出した。
一方、砲弾の背後にいるウォーレンは、
(フ、これで勝ったな)
と、自身の勝利を確信したが、
「何ぃっ!?」
何と、砲弾は春風に直撃することなく、まるで春風に吸い込まれたかのように消滅したのだ。
(い、一体、何が……ハッ!)
突然のことに戸惑いながらも、何かに気づいたかのような表情になったウォーレン。
よく見ると、突き出した春風の左腕が、異様に大きくなっていた。
春風はニヤリと笑って、静かに言い放つ。
「へ、タクティカル・アタッチメントだぜ!」
そう、実は春風は砲撃が当たる前に、左腕のアガートラームMkーⅡにタクティカル・アタッチメントを装着し、その機能の1つである攻撃吸収能力で、エクスプロシオンの砲撃を吸収したのだ。
「さーらーにー……」
と言って、春風はスッと立ち上がると、左腕のタクティカル・アタッチメントを変形させた。
それは、大きな筒を持つ「大砲」だった。
春風はその「大砲」をウォーレンに向けると、
「お返しだ! くらえ、『灼熱大砲』!」
と叫んで、ウォーレンが放ったもの以上の大きさの、真っ赤な炎の砲撃をぶっ放した。
(い、いかん!)
と、咄嗟にエクスプロシオンを盾代わりにして、その砲撃を防ぐウォーレン。
だが、
「グゥオオオオオオオッ!」
あまりにも高威力なのか、それを防ぎきることが出来ずに飲み込まれ、そのままエクスプロシオンごと背後に吹っ飛ばされた。
「どうだ! あんたの攻撃に俺の魔力をミックスした一撃だ! 結構効いたろ!?」
と、吹っ飛ばされたウォーレンに向かって、声高々にそう叫んだ春風。
だがしかし、
「……うっそぉ」
砲撃の跡地に、ウォーレンは立っていた。
身に纏っていた鎧は破壊されて半裸になっていたが、肝心のウォーレン本人とエクスプロシオンは無事な様子だった。ただ、ウォーレンの方は多少のダメージを受けていたが。
春風はそんな状態のウォーレンを見て、
(オイオイ、これでも倒れないのかよ)
と、冷や汗を流しながら心の中でそう呟いた。
「……やってくれたな、異世界の賢者よ」
ウォーレンはそう言うと、防御の姿勢を解いた。
攻撃を受けた影響からか、筋骨隆々の上半身から、プシューと白い煙のようなものがいくつも立っていた。
「ほんと、『こんちくしょうめ』って感じだよ」
と、小さく弱音を吐いた春風。
(……あれ?)
だがよく見ると、ウォーレンの体の一部がおかしなことになっているのに気がついた。
(何だ? ウォーレンさんの両腕が、黒くなってる?)
そう、ウォーレンの肉体は、以前戦った時よりも筋肉が付いているのだが、その両腕はというと、まるで焼け焦げたかのように真っ黒くなっていたのだ。
「ウォーレンさん、その腕一体……」
と、春風がウォーレンに尋ねようとした、まさにその時、ジリリリリという音が左腕……否、正確には左腕にセットされた零号【改】からしたのだ。
「あーちょっと失礼」
春風はウォーレンにそう言うと、左腕の零号【改】を起動した。
すると、いきなり画面が光り出して魔法陣が展開し、そこからボタンを全部外した白いワイシャツに青いジーンズ姿の、真っ赤な短髪と立派な髭を生やした、ウォーレンにも負けない筋肉を持つ1人の男性が飛び出した。
「え、ど、どちら様ですか?」
春風は地面に素足で降り立ったその男性に尋ねると、男性は春風の方を向いて、
「すまねぇな春風。思わず飛び出しちまったぜ」
と、謝罪した。
突然の見知らぬ男性の登場に、ウォーレンは思わず、
「き、貴様、一体何者だ!?」
と驚いた表情のまま尋ねると、男性はウォーレンの方を向いて、
「俺はヘファイストス。『地球』の神の1柱にして『炎』と『鍛治』を司る者だ」
と名乗った。
まさかの神様の登場に、ウォーレンは呆気に取られていたが、
「い、異世界の神が、一体何のようだ!?」
とすぐにハッと我に返って、再びその男性、ヘファイストスに尋ねた。
すると、ヘファイストスは「フゥ」と一息入れて、
「ウォーレンだったな。悪いことは言わねぇ、今すぐその剣を捨てな。でねぇと……お前、死ぬぜ?」
と、ウォーレンの持つエクスプロシオンを指差してそう言い放った。
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