316 / 608
第11章 断罪官の逆襲
第287話 決戦、断罪官20 「戦鬼」と「師匠」と「英雄達」の戦い5
しおりを挟む(くっ! 凄いパワーを感じるわ!)
ルークから発せられるエネルギーに触れたのか、凛依冴は思わず膝をつきそうになった。そしてそれは、冬夜、雪花、静流も同様だった。その瞬間、凛依冴達は目の前にいるルークが、何か大きな「技」を放とうとしていると理解した。
しかし、1人だけ、そんなルークに挑もうとしている者がいた。
「……水音?」
そう、水音だった。
水音は凛依冴達のように膝をつきそうになりながらも、真っ直ぐ目の前のルークを見て、
「師匠、冬夜さん、雪花さん、静流さん。ここは、僕がやります」
と言った。
「……大丈夫なの?」
と、凛依冴が尋ねると、水音は凛依冴を見ずに、
「……正直に言いますと、凄く怖いです。でも、なんとなくですが、ここは、僕がやらなきゃいけないと思いました」
と、答えた。
すると、今度は冬夜が尋ねる。
「勝算はあるのかい?」
そう尋ねられた水音は、無言でズボンのポケットに手を入れると、そこから「あるもの」を取り出して、
「師匠、これ、使わせてもらいます」
と、それを見せながら凛依冴に言った。
それは、小さな青い宝石がはめ込まれた銀の指輪だった。
「あ、それ……」
その指輪を見た瞬間、凛依冴は思い出した。
それは、春風と水音が高校入学した時に、自身がプレゼントした「お守り」だった。
「そう、使うのね?」
「はい」
「……いいわ、思いっきりやりなさい」
「……はい!」
凛依冴とそうやり取りすると、水音は指輪を左手の人差し指にはめて、それに自身の力を注いだ。
次の瞬間、指輪の青い宝石が眩い光を放ち、パキンという音と共に指輪諸共砕け散った。
そして、砕けた指輪のかけらは青い小さな光になると、水音の両手に纏わり付き、再び眩い光を放った。
やがてその光が消えると、水音の両手には銀の装飾が施された黒い革製のグローブになった。
よく見ると、装飾はまるで「歯車」のような形をしていて、その中央には指輪と同じ青い宝石がはめ込まれていた。
「これは、一体?」
水音がそのグローブに見惚れていると、
「『フォース・ギア』。それがそのグローブの名前よ」
と、凛依冴が答えた。
「フォース……ギア?」
「ええ。それにはあなたの力を制御し、効率的に運用させる機能が備わっているの。頑丈に造ってあるから、勿論、武器としても使うことが出来るわ」
と、親指を立ててそう説明した凛依冴。
それを聞いた水音は、そのフォース・ギアを身につけた両手をグッと握ると、
「……確かに、身につけてなかった時以上に、力を上手く扱えるようになるのを感じます。これなら、いけます!」
そう言って、水音はフォース・ギアをつけた状態で、自身の愛剣であるガッツを握った。
ルークはそんな水音を見て、
「フン! 今更何をしようと無駄だ! 私のこの最後の一撃で、お前達を纏めて葬ってくれる!」
と言うと、更に握っている剣に力を込めた。
空気が変わったのを感じた凛依冴達は一瞬怯んだが、水音だけは落ち着いた表情でガッツを構えた。
そして、静かに目を閉じると、
「……力、借りるよ」
と小さく呟いて、水音はガッツに力を込めた。
水音の全身から、青いオーラのようなものが溢れ出てくる。
ガッツの漆黒の刀身が、その青いオーラのようなものを纏い始める。
オーラは刀身から柄、柄から握っている手までも包むと、やがて1つの形を形成した。
それは、以前帝城での学との戦いの時に見せた、巨大な刀のような角を持つ鬼の頭部で、名前は、「鬼力剣・一本角」。
しかし、学の時とは違って、その鬼の頭部ははっきりとした姿形をしていて、刀のような角も、以前より鋭く、切れ味の良さそうなものになっていた。
「おお、これは凄いわ」
その形に見惚れる凛依冴達をよそに、
(うん、出来た)
と、水音は心の中でそう呟くと、
「鬼の力を持って絶望を切り裂く、名付けて……」
と、今度は声に出して、
「鬼力剣・一本角、『武ッ汰斬り形態』!」
その新たな形の名を叫んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる