310 / 608
第11章 断罪官の逆襲
第281話 決戦、断罪官14 アリシア、「過去」との戦い4
しおりを挟む(こ、怖い……)
目の前で大技を放とうとしているユリウスに対し、アリシアは凛依冴に貰った刀で、「居合い切り」をしようとしていた。
表面上は真っ直ぐユリウスを見つめているのだが、心の中では、
(実際にやろうとすると、こんなにも怖いものだったなんて!)
と、恐怖に支配されていた。
無理もない、なにせ実戦で使うのはこれが初めてだから、失敗した時のことを考えてしまうと、どうしても刀を握る両手が震えてしまうのだ。
しかし、そんなアリシアの状態を知らないユリウスは、
「へぇ。その構え、次の一撃で私を斬り殺す気なのね? 良いわよ、やれるものなら、やってみなさい!」
と、両手に持った槍に込める力を更に強くした。
(くっ!)
その余波を受けて、アリシアは思わず目を閉じてしまった。
(ど、どうしよう。私は、ここでやられるわけにはいかないのに!)
そう思ってはいるのだが、やはりそれでも恐怖に精神が支配されてしまう。
やがて耐えられないと思ったのか、アリシアは刀を握る手を緩めてしまった。
その時だった。
「姉さん!」
「!」
その声にハッとなったアリシアが、声がした方向を向くと、そこには煌良達と合流した、鉄雄、恵樹、美羽、彩織、詩織、アデル、ケイト、クレイグ、ルーシー、そして妹であるフィオナの姿があった。
(みんな、無事だったんだ)
彼女達の姿を見て、アリシアはホッとなったのを感じた。
(そうだ、ここで倒れるわけにはいかない。今も戦っているハル君の為に、フィオナと、みんなと生き残る為に!)
そう考えたアリシアは、すぐにユリウスに向き直ると、グッと刀を握る手に力を入れた。
ユリウスはそんなアリシアを見て、
「フ。どうやら覚悟は決まったようね」
と、不敵に笑いながら言うと、オーラのようなものを纏った、2本の槍の先をアリシアに向けて、
「くらいなさい! 二槍奥義、『閃光大連星』!」
と、準備が出来ていた大技を放った。
それは、前に煌良が使った「紅蓮大流星」とは違う、眩い光を纏った2つの大きな流星だった。
今、その2つの流星が、アリシアに襲い掛かろうとしている。
しかし、アリシアは構えを解かず、刀を握る手を緩めず、ウォーレンと煌良を相手にしていた春風と同じように、その場にジッとしていた。
(ああ、やっぱり怖い。ハル君、君はこんな思いをしながらも、私達の為に戦ってくれたんだね? そして今も……)
迫り来る流星を見て、心の中でそんなことを考えるアリシア。
恐怖は確かにある。
だが、
「私は、絶対に逃げない! 絶対に勝つ! だから……」
そう小さく叫ぶと、真っ直ぐ流星の後ろに立つユリウスを見て言い放つ。
「ユリウス小隊長! 今こそ見せます、私の『覚悟』を!」
そして、2つの流星がアリシアの眼前にまで迫った次の瞬間、
「薙ぎ払え、『桜吹雪』!」
と、アリシアは、凛依冴に貰ったその刀の名前を叫ぶと、鞘から勢いよく抜いた。
すると、抜いたのと同時に、桜色の魔力の斬撃が放たれた。
斬撃が2つの流星にぶつかると、流星はまるで、桜の花びらのようになって、消滅した。
そして、残された斬撃はというと、消滅することなくそのままユリウスに迫っていた。
それを見てユリウスは、穏やかな表情になると、
(ああ、アリシア。見事だわ)
と、心の中で呟いた。
その後、持っていた2本の槍を地面に捨てると、ゆっくりと両腕を広げて、その斬撃を正面から受けた。
ドォンという音と共に大きな爆発が起きて、その中心にいたユリウスは思いっきり後ろに吹き飛んだ。その際、身に纏っていた鎧はバラバラに砕け散った。
そして何度も体を地面にバウンドさせると、そのままピクリともしなくなった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる