ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第11章 断罪官の逆襲

第261話 動き出した断罪官

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 「そうか、モーゼス教主が……」

 「そ、それは本当なのか?」

 「……はい」

 ウィルフレッドが騎士から報告を受けていた同時刻。

 セイクリア王国王都内にある五神教会総本部。その中にある異端者討伐部隊「断罪官」の本部では、大隊長のウォーレンと副隊長のルークが、大隊長室にてウォーリス帝国から戻ってきた信者から報告を受けていた。ウォーレンは落ち着いた表情で報告を聞いていたが、ルークはあまりの内容に顔を真っ青にしていて、今にもその場から飛び出しそうになっていたが、その後ウォーレンに「落ち着け」と注意されたので、ルークはハッと我に返ってどうにか踏みとどまった。

 その後、ウォーレンは信者に尋ねる。

 「それで、モーゼス教主は今どうしている?」

 「はい、教主様は帝国から戻ってすぐに自室に篭ってしまいました。何度か扉の外から呼びかけたのですが、残念ながら反応はありませんでした」

 そう答えた信者に向かって、ウォーレンは「そうか」だけ言うと、

 「報告は以上か?」

 と再び信者に尋ねた。

 「はい、今言ったもので全てです」

 「わかった。下がれ」

 ウォーレンにそう言われると、信者は「失礼しました」と言って、その場を後にした。

 すると、

 「邪魔するぜ」

 「失礼します」

 と、それと入れ替わるように、2人の人物が大隊長室内に入ってきた。1人はウォーレンと同じくらいの体格を誇る何処か荒々しさが目立つ赤髪の男性で、もう1人はその男性とは対照的に、冷静沈着を思わせる雰囲気を纏った青い長髪を持つ長身の女性だった。

 「ギャレット。ダリア。聞いていたのか?」

 男性をギャレット、女性をダリアと呼んだウォーレンは、入ってきた2人に向かってそう尋ねると、

 「悪りぃな旦那、聞かせてもらったぜ」

 「申し訳ありません」

 と、男性ーーギャレットは悪びれもなく答え、女性ーーダリアは深々と頭を下げて謝罪した。

 「いや、謝罪はいい。聞いていたのなら話は早い。今の報告を聞いて、お前達はどうする気だ?」

 ウォーレンのその問いに、ギャレットとダリアは真面目な表情で答える。

 「んなもん決まってるだろ、俺は行くぜ旦那」

 「私も同じくです」

 「……相手が『異世界の神の使徒』であってもか?」

 「へっ! オイオイ旦那、忘れちまったか? 俺達は『断罪官』、異端者をぶっ殺す者だ。『春風』だっけか? ソイツが何者だろうが関係ねぇよ」

 「その通りです、大隊長。相手が何であれ、『異端者』は全て抹殺するのが、我々の使命です」

 「お前達……」

 「それに旦那、アンタには感謝してるんだぜ? 碌でもない俺達に、こうして『居場所』を作ってくれたんだからよ」

 「ええ。ですので、そんなあなたを打ち破ったなどというその戯けた男を、我々は絶対に許しません」

 そう答えた2人言葉の中に、激しい怒りを感じたウォーレンは、ルークの方を向いて尋ねる。

 「ルーク、お前はどうなんだ?」

 そう尋ねられたルークは少し考え込んだが、意を決したかようにウォーレンを真っ直ぐ見て答える。

 「大隊長、私は2人に賛成です」

 「理由を聞いてもいいか?」

 「それにつきましては私も2人と同じですが、もう1つあります」

 「もう1つだと?」

 「はい、信者の報告を聞いて、今回モーゼス教主様は多大な精神的ダメージを受けた事がわかりました。ただでさえ奴によって女神マール様が潰されたあの日から、信者の数が少しずつ減っていったというのに、今回の事が広まってしまえば、ますます信者が去っていくでしょう。そうなってしまえば、最早教会の存続が怪しまれてしまいます。コレはもう、我々『断罪官』の中だけの問題ではありません。『五神教会』全体の誇りがかかっているのです」

 「教会全体の、か。随分と大きく出たな」

 「それだけ、今回の事はあまりにも大きな事なのですから」

 そうハッキリと答えたルークを見て、ウォーレンは少しの間考え込んだ後、スッと座っていた椅子から立ち上がって、

 「直ちに全隊員達に準備するよう伝えろ! それが済み次第、我々はウォーリス帝国に行くぞ! 目標は、『半熟賢者』幸村春風の討伐だ!」

 と、ルーク、ギャレット、ダリアに向かってそう命令した。

 それを聞いて3人は、

 「「「ハッ!」」」

 と返事をすると、すぐに大隊長室を出ていった。

 そして翌日、ウィルフレッドに何も告げないまま、ウォーレン率いる断罪官達は、春風のいるウォーリス帝国へと旅立った。

 その道中、ルークは心の中で呟く。

 (ハル……いや、幸村春風。首を洗って待っていろ!)

 その頃、ターゲットの幸村春風君は、

 「ん? 春風、何をしてるの?」

 「いや、なんか遠くで『首を洗って待ってろ』って言われた気がしたから、ちょっと念入りに首を洗ってるの」

 「へ、へぇ、そうなんだ」

 本当に首を洗っていた。
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