ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第10章 動き出した五神教会

第255話 忘れてた

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 学、麗生に続いて、とうとう煌良までもが負けた。

 そのあまりの壮絶さに、その場にいる誰もが呆然としている中、

 「は、ハハ、勝っちまったよ」

 と、ギルバートは乾いた笑い声をこぼしながらそう呟いた。

 しかし、誰一人その呟きに反応する者はいなかった。

 何故なら、

 「……ハル、なの?」

 そう言ったリアナの……いや、リアナだけでない、その場にいる人達全員の目の前にいる人物が、春風とはだったからだ。

 その人物の背格好や手に持っている刀ーー彼岸花は、確かに春風のもので、顔付きも春風そっくりなのだが、髪は長く色は彼岸花と同じように真っ赤で、右目は髪の色と同じ炎に包まれていた。

 その姿を見て、誰もが「怖い」と感じていたが、同時に「美しい」と見惚れてもいた。

 すると、

 「どうしたの、みんな?」

 という声がして、その声に全員が「え?」となった瞬間、目の前にいる春風そっくりの長い赤髪の人物は消え、そこには春風本人がいた。

 頭上に「?」を浮かべて首を傾げる春風の姿を確認すると、

 「は、ハルゥーッ!」

 「ハル様ぁーっ!」

 と、リアナとイブリーヌが春風に駆け寄り、ガバッと抱き付いた。

 「うわっ! え、何!?」

 突然の事に春風が戸惑っていると、

 「うわーん、ハルの馬鹿ぁ! 馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!」

 と、リアナはそう叫びながらポカポカと春風を叩いた。イブリーヌに至っては春風に抱き付いたままわんわんと泣いていた。

 「えぇ? な、何? 何この状況?」

 春風はあまりの状況に混乱していると、

 「コォラァアア、ハルゥウウウウウ!」

 と、今度は鉄雄が駆け寄ってきた。そしてそれに続くように、恵樹や美羽らクラスメイト達や、アデル達七色の綺羅星メンバー、も集まってきた。

 「えぇ!? 何何何ぃ!?」

 集まってきた仲間達を見て、春風が更に混乱していると、

 「この、馬鹿野郎!」

 と、鉄雄はそう言いながら春風の頭を拳でぐりぐりしてきた。

 「い、痛い! 痛いってテツ!」

 訳がわからないといった感じで春風が痛がっていると、

 「はぁあるぅうかぁあさぁまぁあああああ」

 と、黒いオーラのようなものを纏ったジゼルが、ゆらりゆらりと近づいてきた。

 「じ、ジゼルさん、どしたんですか?」

 春風は恐る恐るそう尋ねると、

 「あなたという人はぁ! あれほど無茶はしないでくださいと言ったではありませんかぁーっ!」

 と、ジゼルは春風に向かって思いっきり怒鳴った。

 「ええぇ!? 俺そんなに無茶したぁ!?」

 春風は「心外です!」と言わんばかりの表情でそう言うと、

 「ああ。思いっきり無茶したよ」

 と、気絶している学を重そうに引きずる水音がそう返した。その隣には、同じく重そうに麗生を担ぐ歩夢の姿もあった。

 「水音、ユメちゃん」

 「……」

 歩夢は春風に近づくと、担いでいた麗生を地面に下ろし、静かに春風に抱き付くと、

 「……フーちゃんの馬鹿」

 と言って、抱き締める力を強めた。

 その言葉を聞いて、春風は漸く自分がしたことを理解すると、

 「……ごめん、みんな」

 と、仲間達に向かって謝罪した。

 その時、

 「う、うーん……」

 と、気絶していた学が意識を取り戻した。それと同時に、麗生も少しずつ目を覚ました。

 「あ、あれ? 僕は、一体……」

 学と麗生はまだ完全に目覚めていないのか、ゆっくりと辺りを見回すと、

 「あ、煌良!」

 と、倒れている煌良に気付いてハッとなり、2人はその勢いで飛び起きて煌良に駆け寄った。

 その後、春風と仲間達も煌良のもとに近づいた。

 未だ意識を失ってる煌良に、

 「ま、まさか、死んだりしてないよね?」

 と、恵樹が不謹慎なことを言うと、

 「勝手に殺すな」

 と、気を失ってる筈の煌良がはっきりと答えた。

 それを聞いて春風を除く面々が「うわぁ!」と驚くと、煌良はゆっくりと体を起こした。

 そんな煌良を見て、

 「……あー、大丈夫?」

 と、春風が尋ねると、

 「人をこれだけ酷い目に遭わせた人間が何言ってるんだ? 流石に死ぬかと思ったぞ」

 と、煌良は春風に文句を言った。

 「えっとぉ、ごめん」

 「謝るな。俺達はお互い全力を出し合ったんだ。で、結果俺が負けた。それだけだ」

 「そうなるのかな?」

 「なるんだ。今回は負けたが、次は俺が勝つからな」

 真っ直ぐな眼差しを向けてそう言い放った煌良を見て、春風はポカンとなったが、すぐに「フ」と笑って、

 「悪いけど、俺も負ける気はないからね」

 と、渾身のドヤ顔でそう返した。

 そのやり取りを見て、仲間達が「やれやれ」と苦笑いを浮かべた、まさにその時、

 「ヌオオオオオオっ! 何故だぁあああああ!? 何故勇者達が負けたぁあああああ!?」

 突然の叫び声に驚いた春風達は、「何事か!?」と一斉に声がした方に向くと、そこには息を切らして取り乱した様子のモーゼスがいた。

 そんなモーゼスの姿を見た春風は、

 「あ、忘れてた!」

 と、ついさっき思い出したかのようにそう言った。

 モーゼスはその言葉を聞いて、

 「ハゲゲェエエエエエエエッ!」

 と、悲鳴をあげて吹っ飛ばされた。
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