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第10章 動き出した五神教会
第253話 春風vs煌良3 燃え上がる流星
しおりを挟む煌良が大技を放とうとして矛に魔力を集めているのに対し、春風は静かに「居合い切り」の構えをとった。
その姿を見て、
「な、なあ、アレって……」
「ああ、間違いない。ウォーレン大隊長を破った『あの時』と同じ構えだ」
「何!? アレがか!?」
アデルとアリシアの話に割って入るように、ギルバートは2人を問い詰めた。
アリシアは答える。
「そうです陛下。彼はあの技で、ウォーレン大隊長の最強技『聖光轟雷斬』を撃ち破り、同時に『聖剣スパークル』を真っ二つにしたのです」
「マジかよ、そりゃすげぇな」
アリシアの言葉に、ギルバートはタラリと冷や汗を流した。
するとそこへ、
「あの、父上」
と、ギルバートの側に立っていたオズワルドが声をかけてきた。
「ん? どうしたオズ?」
振り向いたギルバートがそう尋ねると、
「春風、つい先程『全スキル、オフ』と呟いていましたので、調べて見たのですが……」
オズワルドの言葉を聞いて、その場にいる全員が、
『……え?』
と頭上に「?」を浮かべると、
「春風のスキルは今、全て使用不能状態になっています」
『……ハァッ!?』
その瞬間、全員がタラリと冷や汗を流した。
するとそこへ、
「あ、そういえば!」
と、冬夜が何かを思い出した。
「え、どしたのフユッち、何か心当たりがあるの!?」
恵樹は慌てて冬夜に詰め寄ると、
「春風、ついこの間、持ってるスキルを『オン』と『オフ』に切り替える事が出来るようになったって言ってたな」
と、なんとも緊張感のない口調でそう答えた。
「お、『オン』と『オフ』? それって、自分の意思でスキルを発動出来なくする事が可能になったって事?」
「うん、そう」
「今ハルッち、『全スキル』って言ってたよね。という事は、今のハルッちは全てのスキルが使えなず、スキルからの恩恵も受けてないって事だよね?」
「そうなるね」
「……じゃあ、今のハルッちはそんな状態で、力石君のあの大技(?)に挑もうとしてるって事?」
「うん」
恵樹と冬夜のそんなやり取りから数秒後、
『ちょっと待てぇえええええええっ!』
2人を除いた全員の突っ込みが響き渡った。
一方、大技(?)の準備をしている煌良はというと、
(フ、『スキルなしでの居合い切り』か。随分とふざけた事をしてくれる。なのに……)
煌良は居合い切りの構えをとったまま動かない春風を見て、
(何故だ! 何故奴に勝てるイメージが浮かばないんだ!?)
と、心の中で叫んだ。
そう実は春風が構えをとった瞬間、どういう訳か煌良の脳裏に春風に敗北するイメージのようなものが浮かび上がったのだ。そしてそれは、煌良が技の準備をしている最中でも、そのイメージが消える事はなく、寧ろ、よりはっきりと浮かび上がるようになっていた。
(ぐ! 弱気になるな俺! この俺が出来る最大の技で、奴に勝つんだ!)
心の中で再びそう叫ぶと、煌良は矛に纏わせた魔力を変化させた。それは、まさに激しく激しく燃え盛る「紅蓮の炎」のようだった。
その後、
「良し、準備が終わった! いくぞ、幸村ぁっ!」
「……来なよ、力石君」
煌良は春風に向かって、その「紅蓮の炎」を纏わせた矛による技を放った。
「槍技、『紅蓮大流星』!」
放たれたそれは、少し前に放った「流星三連」とは違って、まさに「炎を纏った大きな流れ星」だった。
その流れ星の如き真っ赤な「突き」の波動が春風に向かって襲いかかる。
だがそれでも、
「……」
春風は落ち着いた表情で、構えを解かずその場から動こうとしなかった。
(は、ハル兄さん!)
そんな春風を見て、ルーシーが何かをしようとすると、
「駄目よ、ルーシーちゃん」
と、凛依冴がルーシーの肩に手を置いた。
「し、師匠さん、で、でも!」
駄目と言われて戸惑うルーシー。そんなルーシーに、凛依冴は優しく言う。
「大丈夫。春風なら、絶対に負けない。だから、あの子を信じて」
その瞬間、凛依冴にそう言われたルーシーは、それまでの焦りが消えて、何処か落ち着きを取り戻した表情になった。
そしてルーシーは春風に向き直ったが、その一方で、煌良が放った炎の流れ星は、春風に近づきつつあった。
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