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第10章 動き出した五神教会
第228話 「奴」が動いた
しおりを挟む春風が「英雄転生召喚」を行ってから少しして、セイクリア王国王城では、
「何だと!? それは、真の話か!?」
「ハッ! 恐れながら、事実であります!」
国王ウィルフレッドが、配下の騎士から「とある報告」を受けていた。
ウィルフレッドは報告を聞いて大層驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻して、
「……わかった、下がってくれ」
と、騎士に下がるよう命じた。
命令された騎士は、深々と頭を下げると、そそくさと謁見の間を後にした。
「……」
ウィルフレッドが「報告」の内容を思い出して、深刻な顔をしていると、
「貴方……」
隣の玉座に座る王妃マーガレットが、心配そうな表情でウィルフレッドに話しかけた。
その声を聞いて、ハッとなったウィルフレッドは、
「ああ、すまない。大丈夫だ」
と、弱々しい笑みを浮かべて返事をした。
その後、ウィルフレッドは「フゥ」と一息入れると、
「まさか、モーゼスが私に黙って事を起こすとはな……」
と、天井を見上げてそう呟いた。
その時、扉が開かれた音と共に、
「陛下、失礼します!」
と、先ほどの騎士とは違う騎士が入って来た。
「む、どうしたんだ?」
ウィルフレッドが騎士にそう尋ねると、騎士は何やら困っている様子で、
「じ、実は、勇者様方の中から3人ほど、今朝から見当たらないのです!」
と、ウィルフレッドとマーガレットにそう告げた。
その言葉を聞いたウィルフレッドは、
「……何だと?」
と、首を傾げた。
一方その頃、ウォーリス帝国の帝城では、
「よーし、では皆さん、その状態を維持するように!」
と、今日も春風による魔術の訓練が行われていた。
(ほんと、こんな事してて良いのかな?)
と、はじめは悩んでいた春風だったが、
「大丈夫、これも春風にとって必要な事だから!」
と、周囲からの励まし(?)もあって、今では自身も鍛えながら、仲間達や帝国の魔術師達、更には帝国の騎士や兵士達にまで、自身の魔術を教えていた。
因みに、今教えているのは、スキルが無くても出来る簡単な「魔力の制御」だ。
何故、そんな事を教えているのかというと、春風曰く、
「誰だって、自分の『力』の所為で人が傷つくなんて嫌でしょ? もっと言えば、それが自分にとって、『一番傷つけたくない人」だったら、もっと嫌なんじゃないかな?」
との事で、それを聞いた人達は何かを感じたのか、
「自分も、訓練に参加させてください!」
と言って、春風の訓練に参加する様になったのだ。
とまぁ、そんな感じで、いつものように訓練をしていると、
「春風!」
「ん?」
不意に名前を呼ばれた春風が後ろを振り向くと、
「オズワルド様?」
そこにはオズワルドがいた。
春風は訓練を中断して、
「どうしたんですか?」
と尋ねると、
「訓練中にすまない、すぐに謁見の間に来てくれ」
と、何やら若干穏やかじゃない様子のオズワルドにそう言われて、春風はすぐにオズワルドと共に謁見の間に向かった。当然、訓練は続けるように言ってからだ。
「失礼します」
春風はそう言って謁見の間に入ると、
「おう、待ってたぞ春風」
そこには深刻な表情のギルバートとエリノーラが玉座に座っていて、その隣にはレイモンド、セレスティア、エドマンド、アンジェリカもいた。
(何だ、この空気は?)
入った瞬間、何か妙なものを感じた春風は謁見の間の中央に立って、
「あの、陛下、どうかしたんですか?」
と恐る恐るギルバートに向かってそう尋ねると、
「よく聞け春風、遂に、奴が動き出した」
と、ギルバートはいつになく真剣な表情でそう答えた。
その言葉を聞いて嫌な予感がした春風は、
「奴……とは?」
と、再び恐る恐る尋ねると、
「五神教会教主モーゼス・ビショップが、数人の配下を引き連れて、このウォーリス帝国帝都に向かっているそうだ」
と、ギルバートは更に真剣な表情でそう答えた。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、今日から本編第10章の開始です。
遂に動き出した五神教会に対して、主人公春風と仲間達はどう立ち向かっていくことになるのか?
彼らの今後の活躍に、ご期待ください。
応援ありがとうございます!
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