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間章4
間話22 ある日の訓練場にて
しおりを挟むそれは、仲間達が凛依冴の新たな弟子となって間もない時だった。
「よーし、ちょっと体を動かしてきますか」
そう言って、春風が帝城内にある訓練場に向かうと、
ーーうぎゃあああああああっ!
「……え?」
遠くから何やら、悲鳴のようなものが聞こえた。
それを聞い春風は、
「何だ、今のは?」
と、首を傾げていると、
ーーうわぁあああああああっ!
「?」
ーーヒィイイイイイイイっ!
「!?」
と、立て続けに2回も悲鳴のようなものが聞こえた。
(あれ? 今の声がした方向って……)
そう思った春風は、すぐにその悲鳴のようなものが聞こえた方向へ駆け出した。
そして着いた場所は、春風が向かおうとした訓練場だった。
(い、一体何が起きてるんだ?)
春風は恐る恐る訓練場に入ると、
「あれ? 水音?」
入ってすぐの所に、水音が立っていた。
「……あ、春風」
春風の声を聞いて、水音はゆっくりと首を動かして、背後にいる春風の方を向いた。
「水音。今、悲鳴のような声がしたんだけど、何があったの?」
春風は少々様子がおかしい水音に向かってそう尋ねると、
「……あれだよ」
と、自身の前方を指差してそう答えた。
「『あれ』?」
春風は「何だろう?」と思って、水音が指差した方向を見ると、
「何じゃこりゃあああああああっ!?」
それは、まさに「地獄絵図」と呼ぶに相応しい光景だった。
鉄雄らクラスメイト達や、アデル達七色の綺羅星のメンバーが、訓練場内で見るも無惨に倒れ伏していたのだ。
(え、何!? 何がどうなってんの!?)
あまりの光景にショックを受けた春風。
だが、よく見ると、訓練場の中央に、とある人物達がいた。
その人物達とは、
「え、師匠? それに、リアナにユメちゃん?」
師匠である凛依冴と、彼女に対面する様に立っているリアナと歩夢だった。
訓練用の木製棒を構えるリアナと歩夢に対して、凛依は素手……丸腰だった。
「かかって来なさい」
そう言って、凛依冴は右手をクイックイと動かしてリアナと歩夢を挑発した。
リアナと歩夢は、その仕草にピキッとなったのか、
『はぁあっ!』
と、武器(木製棒)を持って凛依冴に襲いかかった。
しかし、凛依冴はそんな2人の攻撃を難なく交わすと、
「ふんっ!」
と、丸腰であるにも関わらず、2人を思いっきりぶん回した。
「「うぇえええええっ!?」」
ぶん回された2人は、そのまま受け身を取ることも出来ずに訓練場の床に背中からドサっと落ちた。そしてその後、2人はグルグルと目を回して、やがて意識を失った。
「ふーっ、良い仕事したわ」
と、凛依冴が一息入れていると、
「師匠ぉ、なぁにやってんの!?」
と、春風が凛依冴に向かってそう尋ねてきた。そんな春風に向かって、凛依冴は、
「ん? あ、はーるかー! マイスウィートハニー! 今の見てたぁー?」
と、春風に向かって腕をブンブン振るってきた。
「あ、はい見ました……じゃなくって、ホントなぁにやってんですか師匠!?」
春風が凛依冴に向かって、そうノリ突っ込みを入れながら問い詰めると、
「何って、新しい弟子達と体を動かしてたんだけど?」
と、凛依冴はなんともあっけらかんとした表情でそう答えた。
(いや、『体を動かしてた』って、どう見てもそんなレベルじゃないと思うんですけど!?)
そう思った春風は、目の前に転がっている仲間達を見て、たらりと冷や汗を流した。そしてそれは、横にいる水音も同様だった。
すると、
「あ、そうだ! 丁度良いから……」
「「?」」
凛依冴の言葉に、春風と水音が首を傾げていると、
「春風、水音、2人共まとめてかかって来なさい!」
と、リアナと歩夢にしたのと同じように、右手をクイックイと動かして、春風と水音を誘った。
そんな凛依冴の仕草を見て、
「……なぁ、水音」
「……なに、春風」
「……これ、どう見ても絶対に逆らっちゃいけない奴だよな?」
「……うん、僕もそう思うよ」
そう考えた2人は、凛依冴の誘いに乗って、訓練場の中央によった。
そして、2人が凛依冴の前に立つと、
「じゃ、軽く手合わせといくわよ」
凛依冴はそう言って、春風と水音、2人を相手に「手合わせ」を行った。
その結果、2人は凛依冴を相手に善戦したが……結果は、凛依冴の一人勝ちに終わった。
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