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第9章 出会い、波乱、そして……
第226話 再会、そして……
しおりを挟む場所は変わって、舞台は日本の某県某市内にある小さな商店街。
そこに、春風の養父、幸村涼司が店主を務める喫茶店「風の家」がある。
その日の夜、涼司は店内にあるテーブルに置かれた自身のスマートフォンの前でウロウロしていた。
「うう、まだかなぁ、まだかなぁ……」
何や落ち着きがない様子の涼司。彼が今、そんな状態になっているのには理由があった。
それは昨日、行方不明の大切な息子(血は繋がっていないが)の春風から電話がきたからだ。
地球を守る為に「エルード」という異世界で頑張っていると春風から聞いた時は、
(何でお前が、そんな危ねぇことしなきゃいけねぇんだよ!?)
と、原因を作った連中に怒りが湧いてきたが、地球を救うと決めた春風を見て、最終的には自分も応援しようと決めたのだ。
とまぁ、それはさておき、そんな涼司は今、また春風から電話が来ないかなと、スマートフォンを前にずっと待っていたのだ。勿論、喫茶店店主としての仕事はこなしている。
「ううぅ、今日はもう来ないのかなぁ……」
と、涼司が落ち込む寸前の状態になると……。
ジリリリリリッ!
「!」
スマートフォンが大きな音を立てて鳴り出した。
画面をよく見ると、そこにはキチンと「春風」の名前が表示されていた。
「来たぁ!」
涼司はすぐにスマートフォンを通話モードにすると、
「もしもし、春風か!?」
と、話しかけた。
すると、
「う、うん、そうだよ、オヤジ」
と、通話口の向こうから春風の声がきた。
「おおお、どうした息子よ! 俺の声が恋しくなったかぁ!? 俺は今日も元気で店長やってるぞぉ!」
涼司は嬉しさからか大声でそう話すと、
「あ、あのさ、オヤジ、ちょっと言いにくいんだけど、話したい事があるから、画面を展開するよ」
「お、おう、わかった」
涼司がそう返事をすると、持っているスマートフォンの真上に大きなモニター画面が現れて、そこに春風の姿が映し出された。
画面向こうで、とても言いにくそうな表情の春風が、意を決した様に口を開く。
「あのさ、オヤジ」
「ど、どうしたんだ春風?」
「今日はさ、オヤジに紹介したい人がいるんだ」
「紹介したい人?」
「う、うん」
春風はそう言うと、モニター画面から離れて、代わりに1人の女性と、2人の少年少女をその画面にだした。
その姿を見て、涼司が「誰だ」と頭上に「?」を浮かべていると、
「どうも、この度転生しました、光国冬夜です」
「同じく、光国雪花でーす!」
と、少年少女がそう自己紹介すると、それに続く様に、
「静流です。久しぶり、リョウちゃん」
と、女性がそう名乗った後、涼司に向かって言った。
その呼び名を聞いて、涼司が「え?」と、再び頭上に「?」を浮かべると、その女性の顔つきを見て、1人の女性が脳裏に浮かび上がった。
そして、「まさか……」と思った涼司は、
「……シズ?」
と、恐る恐る女性に向かってそう尋ねた。
すると、女性はニコリと笑って、コクリと大きく頷いた。
次の瞬間、涼司はバタンと仰向けに倒れた。
「オ、オヤジィーッ!」
「キャアアアアア、リョウちゃぁあああああん!」
その後、どうにか意識を取り戻した涼司は、春風から何が起きたのか事情を聞くことにした。
そして数分後、
「な、成る程、要するにその『英雄転生召喚』ってのを実行した結果、死んだお前の両親と俺の妻が『英雄』として転生されたってことだな?」
「う、うん。そうなんだ」
モニター画面に映るもの凄く気まずそうな春風を前に、涼司は顔を覆って「フゥ」と一息入れると、
「ハハ、やっぱお前、ホントすげぇよ」
と、乾いた笑いをこぼしながらそう言った。
「オ、オヤジ、その……」
モニター画面の向こうで春風が何か言おうとすると、
「なら、俺が言うべきことは1つしかないな」
と、涼司は何かを決意したかのように、春風にシズ……静流を出すように頼んだ。
「え、えっと、リョウちゃん?」
涼司に向かって静流が恐る恐る尋ねると、
「シズ、いえ、静流さん!」
「は、はい!」
涼司にいきなり名前を呼ばれて、静流は思わずピシッと姿勢を正した。
そんな彼女に、涼司は深く頭を下げて、
「もう一度、俺と、結婚してください!」
と、大声でそう叫んだ。
静流は「愛の告白」とも言えるその叫び聞いて、しばらく沈黙していると、両目から大粒の涙を流して、
「ハイ!」
と、笑顔でそう返事した。
涼司はそれを聞いて、
「いよっしゃあああああああっ!」
と、喜びの雄叫びをあげた。
モニター画面の向こうの春風、冬夜、雪花は、その様子を見て、
「「「オオ!」」」
と声を漏らしながら拍手をすると、
「春風ぁ!」
と、涼司は今度は春風を呼んだ。
「ハ、ハイ!」
突然呼ばれた春風は、驚きながらもそう返事をすると、
「ありがとな、お前はやっぱり、俺の自慢の息子だよ」
と、涼司は優しい笑顔で春風に向かってそう言った。
「オ、オヤジィ……」
その言葉を聞いて、春風は顔を赤くすると、照れ臭そうに口元を歪ませた。
そして、それから暫くの間、涼司は春風達と、楽しい「家族」の団欒を満喫した。
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