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第9章 出会い、波乱、そして……
第210話 懐かしい「声」
しおりを挟む幸村涼司。喫茶店「風の家」の店主で、春風の養父。
両親を亡くした春風を引き取り、以後7年間を共に過ごす。
彼もまた数年前に妻を亡くしているようで、今のところ再婚の予定もなし(というより、本人にその気は全くないという)。
「そ、その声、もしかして春風か?」
そして現在、通話モードになった零号【改】から、その涼司本人の声が聞こえた。
「うん、そうだよ、オヤジ」
春風がその声に向かってそう返事すると、
「ほ、本当に、春風か?」
と、まだ疑っている様子の涼司の声がした。
春風はその声を聞いて、
「ちょっと待ってて」
と言って、零号【改】の画面を操作した。
すると、零号【改】の真上に大きなモニター画面が現れて、そこに1人の日本人男性の顔が映し出された。
春風はそれを見て、
(うわ! ちょっとびっくりした)
と思いながらも、
「ほらオヤジ、俺、春風だよ」
と、画面に映った男性ーー涼司に向かって笑って手を振った。
次の瞬間、
「ウオオオオオッ! 春風ぁあああああああっ! ホントに、春風なのかぁあああああああっ!?」
「うお、びっくりしたぁ! だから、俺、春風だって言ってるじゃん!」
画面越しに春風の顔を見て、ドバッと涙を流しながら叫ぶ涼司。そんな涼司を見て、春風は驚きのあまり危うく腰を抜かしそうになった。
しかし、涼司はそんな状態の春風に構わず叫び続ける。
「ヌオオオオオオオン! お前、今まで、一体ぃ、何してたんだよぉおおおおお!? 俺、すっごく、心配したんだぞぉおおおおおっ!」
「ご、ごめんってオヤジ! そして落ち着いて! こっちも色々あって……」
春風は何とか涼司を落ち着かせようとすると、画面の涼司の横で、扉を開く音がして、
「おーい、涼司さんよぉ、どうしたんだい?」
と、1人の中年の男性が入ってきた。
(あれ? この声って……)
「おお、魚屋の勘太さん! こっち来て見てくれよ!」
「え、ちょ、オヤジ待って……」
止めようとした春風を無視して、涼司はその男性、勘太を自身の側まで誘うと、
「ほら、これこれ!」
「おい、一体何なんだ……って、春坊?」
「あ、どうも、お久しぶりです、勘太さん」
画面に現れた勘太を見て、春風がそう挨拶をすると、
「ウオオオオオッ! 春坊ぉおおおおお! 何でハル坊が映ってんだぁあああああ!?」
と、勘太は驚いて涼司と同じような反応をした。
「そうだよ! 春風だよ! 俺の大事な息子の春風だよぉおおおおお!」
「ヌオオオオオ! どうなってんだよ一体ぃいいいいい!? ハ! こうしちゃいられねぇ! すぐに母ちゃんと皆を読んでくるからなぁ!」
「え、ちょ、勘太さん待って……」
それまで涼司の時と同じように腰を抜かしそうになった春風は、ハッと我に返って勘太を止めようとしたが、
「母ちゃーん! みんなぁあーっ!」
一足遅く、勘太は外へ飛び出してしまった。
そして数分後、
「あらぁ! ホントに春ちゃんなの!?」
「こいつはたまげたねぇ!」
「おやおや春風君、結構元気そうですねぇ」
「ああ、春風ちゃん、無事だったのねぇ!」
と、勘太連れてきた近所の知り合い達が、春風を見て様々な反応をした。
「え、えっとぉ、皆さん、お久しぶりです」
春風はダラダラと冷や汗を流しながらそう言うと、
「ちょっと春ちゃん、今どこにいるの!?」
「そうだぞ春坊! 一体今まで何してたんだよぉ!?」
「そうですねぇ春風君、その辺の説明をお願いしますよ「
「そうよ、一体あなたどういう状態なの!?」
と、知り合い達は一斉に春風に向かってそう尋ねてきた。
それを見て、春風は「ううぅ……」と唸ると、
「わ、わかりました! 説明します、ちゃんと説明しますからぁ!」
と悲鳴じみた叫びをあげて、今までの事をゆっくりと説明し始めた。
そんな春風を見て、ギルバートは、
「ハハ、どうやら春風のやつ、結構愛されているみたいだなぁ」
と、苦笑いを浮かべるのだった。
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