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第9章 出会い、波乱、そして……
第200話 春風vsアデレード4 呆気ない決着
しおりを挟む白熱する春風とアデレードの戦い。
アデレードが優勢の中、春風はどんな反撃をするのだろうかと周囲がワクワクする中、肝心の春風はというと、
(駄目だ。これ、どうやって戦えば良いんだ!?)
と、心の中で弱音を吐いていた。
しかし、それを知らないアデレードは、
「ヒャッハーッ!」
と、狂った様に叫びながら、何度も鞭形態にしたビッグヴァイパーによる攻撃を繰り出してきた。
春風はアデレードの攻撃を避けながら、心の中で呟く。
(折角あれから色々魔術を作ったのに、こんな状況じゃなぁ……)
「ヒャッハァーッ! ホラホラ、もっともっといくよぉおおおおおっ!」
(ダメージ覚悟で懐に飛び込めばいけるかなぁ?)
「ヒャアーハハハ! イケイケイケイケェ!」
(いや、駄目だ。逆にこっちがバラバラになる未来しか浮かばねぇな)
「ヒャッハァアアアアア!」
(……)
ーーブチッ!
その瞬間、春風の中で、「何か」が切れた音がした。
そして……。
ーーガシッ!
「ヒャハ? あれ?」
何か妙な音がしたと共に、体が動かなくなったアデレードが自身の周囲を見ると、地面から伸びた無数の真紅の鎖が、アデレードの体中に巻き付いていた。
アデレードは必死にその鎖から逃れようともがくが、もがけばもがく程、その鎖はアデレードを締め付けた。
それでもアデレードが必死にもがいていると、
「さっきから黙って聞いてれば……」
と、ボソリとそう呟いた春風は、アデレードの頭上に巨大な魔法陣を描いた。それは、女神マールを潰した、あの必殺技と同じものだった。
そして、そこから出てきたのは、マールを潰した大きな握り拳だった。
「え? あ、あれ?」
その時、アデレードの[狂人化]の制限時間がきて、アデレードは正気に戻った。
しかし、そんな彼女に構わず、
「『ヒャッハー』うるせぇえええええええっ!」
春風は怒りのままに、マールを潰した必殺技、「マキシマムパニッシャー」を放った。
その叫びと同時に、アデレードに巨大な握り拳が落ちてくる。
「えええええええっ!?」
真紅の鎖に拘束されて身動きが取れないアデレードは、避けることが出来ず……。
ズドォオオオオオオオンッ!
「ヒィアアアアアアアッ!」
直撃した。
女神マールが潰れた時と同じことが今、目の前で起きた為、周囲の人々は口をあんぐりと開けた。
その後、落ちた握り拳はスゥッと消えて、残されたのは、体をピクピクとさせて倒れ伏しているアデレードだけだった。
そして、その頭には、まるで漫画のような大きなこぶが出来ていた。
誰もが呆然としている中、審判役の男性が簡易闘技台に上がって、アデレードの戦闘不能を確認すると、
「勝者、幸村春風!」
と、声高々に叫んだ。
それに反応したかの様に、それまで呆然としていた周囲から、
『ウオオオオオオオッ!』
と、歓声があがった。
ギルバートら皇族達は大きく拍手し、リアナ達は春風の勝利にホッと胸を撫で下ろし、帝国兵や騎士達は春風の圧倒的な強さを喜び、アレス教会の信者達は、
「ああ、やはりあのお方は凄いお方なんだ!」
と、皆感動の涙を流していた。
だが、
「あれ? ハル?」
勝利した春風の様子がおかしいことに気づいたリアナは、「どうしたんだろう?」と首を傾げていると、
「ど、どうしよう」
と、春風はボソリと呟いて、その場に膝から崩れ落ちた。
その姿に驚いた審判役の男性が、「どうしたんですか!?」と言って春風に近づくと、
「……したのに……」
と、小声で何かを言っていた。
審判役の男性がもう一度「どうしたんですか?」と声をかけると、
「技は成功したのに、俺、俺は何てことを……」
その言葉を聞いて周囲の人達は一斉に「?」を浮かべると、春風は、
「俺、女の子や女性は大切にする方なのにぃいいいいいいいっ!」
と、悲しみと後悔を込めた叫びをあげた。
それを聞いた周囲の人達は、
『え、ええええええええ?』
と、なんとも言えない声を漏らすのだった。
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