ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第9章 出会い、波乱、そして……

第193話 闇のスキル

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 時は遡ること数分前。

 「あぁ、やっとひと段落ついた」

 皇子としての仕事を終えたオズワルドは、自室に戻る途中、

 (ム! あれは幸村春風!)

 と、目の前を通っていた春風を見て、こんな時間に何処に行くのだろうと思い、こっそり後をつける事にした。そして、ルーシーの部屋で「裏スキル」についての話をしようとしているとわかると、

 (ここは自分の出番だろう!)

 と、部屋の扉を開けて2人の話に入り、今に至る。

 「や、闇のスキル、ですか?」

 と、春風が恐る恐るそう尋ねると、

 「そうだ……と、その事について説明をする前に……」

 と言って、オズワルドはルーシーの方を向いて、

 「そこの君!」

 「は、はい!」

 「確か君も固有職保持者だったね。話の内容からして、もしかして君、『裏スキル』を持ってるのかな?」

 と、一歩一歩近づきながらそう尋ねてきたので、ルーシーはビクビクしながら答えた。

 「は、はい、[憤怒]っていうんですけど……」

 「おぉ! それはどんなスキルなんだい!?」

 「あ、あの、わ、私が怒れば怒る程、か、体が、強くなったり、武器が強く、なったり、攻撃の、威力が、上がったり、します! ただ、いっぱい、魔力を、使い、ますが!」

 「成る程、『怒り』と『魔力』を用いてあらゆるものを強化するスキルか! これは凄い!」

 ルーシーの話を聞いて興奮するオズワルドに、若干ドン引きしていた春風だったが、

 「あの、そろそろ説明をお願い出来ますか?」

 と、このままでは話が進まないと考えて、オズワルドに説明を求めることにした。

 オズワルドは「む?」と言わんばかりの表情になると、すぐに「コホン」と咳き込んで、

 「すまない、つい興奮してしまった。では、説明するとしよう」

 「お願いします」

 春風にそう言われて、オズワルドは説明を開始した。

 「まず君達固有職保持者は、普通の職能保持者と違って自由にスキルを選ぶことが出来るっていうのはわかっているね?」

 「「はい」」

 「で、今話に出てきた『裏スキル』っていうのは、その固有職保持者の中でも限られた者達にしか入手出来ないスキルなんだ」

 「どういう意味ですか?」

 「これは極秘な話になるが、我々ウォーリス帝国の皇族達は、長い間国の発展の為に様々なものを調べ、可能ならそれらを全て取り込んできた。当然、固有職保持者や裏スキルといったものもな」

 「「……」」

 「で、さっき固有職保持者の中でも限られた人間にしか入手出来ないって言ったが、調べた結果、実はこのスキルを持った者達には、ある「共通点」があるってことがわかったんだ」

 「共通点? それは一体……?」

 「闇属性の魔力を持つ者。それが共通点だ」
 
 (あぁ、だから『闇のスキル』ってことですか)

 春風がそう納得していると、オズワルドは再びルーシーを見て尋ねる。

 「ところで君!」

 「は、はい!」

 「君はいつからそのスキルを入手したんだい?」

 「ち、小さい頃、おじいちゃんと、旅をしていた時、と、盗賊に、襲われて、おじいちゃんが、傷ついて、『許せない』って思った、時に、『声』が、聞こえたんです」

 「声?」

 「『私を身につけて』。そう、言ってました。と、とても、暗くて、嫌な声、だったけど、お、おじいちゃんを、助けたかったから」

 「うーん。話を聞く限りじゃ、感情の昂りが鍵になってると見て間違いなさそうだな」

 そう考え込むオズワルドに、春風は「あれ?」と思い、質問した。

 「ちょっと待ってください。俺身につけられる様になってから結構感情動いたりしましたけど、そんな声全然聞こえなかったんですが?」

 「あぁ、多分それは一時的な昂りだったから、声が聞こえるまでに至らなかったんだろう。もっと心のそこから湧き上がってきたものじゃないといけないんだと思う。それこそ、深く、暗い所から、な」

 「「……」」

 「ま、これについては父上と相談することにしよう。春風、それとルーシーだったな?」

 「は、はい」

 「君はそのスキル、なるべく頼らない方が良い。春風も、もしルーシーが言ってた様な声が聞こえても、絶対に耳を貸さない方が良い」

 「え、な、何故ですか?」

 ちょっとだけギョッとなった春風を見て、オズワルドは何処か悲しそうな表情で答えた。

 「全てがそうというわけではないが、『裏スキル』を使い続けた者の多くは、皆悲劇的な最期を迎えていたんだ。もしも君達が光ある道を歩いていきたいと思っているなら、その力は頼らない方が良いと、俺は思っているんだ」

 そう言うと、オズワルドは部屋を出ていった。

 そして、残された春風とルーシーは、たらりと冷や汗を流したまま、何も言うことが出来なかった。
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