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第8章 友との決闘
第184話 春風vs水音14 そして、2人は並び立った
しおりを挟む水音が覚醒する前に、水音の頭の中で「声」がした。
「新タナル目覚メガ起キマシタ」
「個人名『桜庭水音』ノ目覚メヲ確認シマシタ」
「個人名『桜庭水音』ノ、『強キ魂ノ輝キ』ト、神名『水ノ女神マール』ニ対スル『反逆ノ意志』ヲ確認シマシタ」
「ソレラノ情報ヲ基ニ、現在ノレベルト所持スキルヲ除キ、新タナ『ステータス』ヲ構築シマシタ」
「神ヘノ『反逆ノ意志』ノ発現ニヨリ、職能『聖戦士』ト、称号『勇者』ガ消滅シマシタ」
「職能『聖戦士』ノ消滅ニヨリ、新タナ職能ガ目覚メマシタ」
「固有職能『戦鬼』ガ目覚メマシタ」
「専用スキル[鬼闘術]、[鬼人化]、[鬼の威圧]ヲ入手シマシタ」
「称号『神に逆らいし者』ヲ入手シマシタ」
「以上ヲモチマシテ、新タナ『ステータス』ノ構築ヲ終了シマス」
そして、現在。
「じゃあ、もう『聖戦士』の職能は無くなったの?」
そう尋ねた春風に、水音はコクリと頷いて、
「といっても、レベルや能力値、それと今まで身につけてきたスキルはそのままだけどね」
と答えた。
春風は早速[英知]を使って、水音の新しい職能を調べた。その結果……。
戦鬼(固有職能)……戦いに生きる「鬼」の力を操る戦士。あらゆる武術、武器を扱い、体力、魔力とは異なるエネルギー「鬼力」を操る事により、脅威的な戦闘力を発揮する。
(おお、なんかスゲェな!)
心の中で驚きの声をあげた春風は、更に詳しく調べようとした。
ところが、
「あり得ない!」
(ん?)
突然の声に、春風と水音は「何だ?」と声がした方に視線を向けると、そこには今にも「信じられない!」と叫び出しそうな表情になっている、女神マールの姿があった。
マールは春風達を見て更に叫ぶ。
「どうして!? どうして私に逆らうの!? しかも、固有職保持者になるなんて!」
ヒステリックにそう喚き散らすマール。そこへ、
「わかりませんか?」
と、地球の神の1柱、アレスが割り込んできた。
その言葉を聞いたマールは、キッとアレスを睨みつけたが、アレスは怒ることなく冷静になって話す。
「春風君の『友を信じる』という『想い』と、水音君の強い『意志』が、あなたの悪き呪縛を打ち破ったんです。その結果、水音君は新たな力に目覚めたんです」
「認めない! そんなの絶対に認めない!」
アレスは説明しても頑なに認めようしないマールを見て「ハァ」と溜め息を吐くと、春風と水音に向かって、
「じゃあ、春風君。それに水音君も」
「「は、はい! えーと、あなたは?」」
「ああ、申し遅れてしまいましたね。僕はアレス、『戦い』の神です」
「「あ、これはどうも、よろしくお願いします」」
「うん、よろしくね。僕は下がっていてるから、こいつの始末は君達に任せるよ。と言っても、こいつ自身『思念体』の様なものだから、本当に殺す事は出来ないけど、それでもぶちのめすくらいなら出来るから」
「「はい、わかりました!」」
2人返事を聞いたアレスは、「フフ」と笑うと、そのまま特別席の方へ下がった。
それを確認すると、
「春風、『任せる』って言われたけど、僕達どうすれば良いんだろう?」
と、水音がそう尋ねてきたが、春風はというと、
「困ったなぁ」
とボソリと呟いたので、水音は「どうしたの」と尋ねた。
すると、春風はマールの方を見て、「ハァ」と溜め息を吐くと、
「俺、女性と女の子は大切にする方なんだけどな」
「あ、そういえばそうだね……て、いやいや春風、あいつ『悪い奴』なんだから、そんな事言ってる場合じゃないだろ!?」
と、水音がそう突っ込みを入れると、
「春風様ぁあああああっ!」
と、特別席にいるイブリーヌが、大きな声で春風を呼んだ。
春風は「な、何!?」と驚いてイブリーヌの方を見ると、イブリーヌは更に叫ぶ。
「わたくしが、許します! ですので……思いっきり、やっちゃってください!」
その叫びを聞いて、春風は「ハハ」と苦笑いすると、
「お姫様からオッケー貰っちゃった」
そう言って、春風は深呼吸して気持ちを落ち着かせると、
「水音」
「……な、何?」
「今から君に、すっごい偉そうな事を言うけど、良いかな?」
と、自信の無さそうな表情で水音に尋ねた。
水音はニコリと、笑って答える。
「良いよ、聞かせて」
その答えを聞いて、春風は嬉しくなって水音の隣に立つと、
「それじゃあ……」
と、スッと水音に右の握り拳を差し出して言う。
「行こうぜ、相棒!」
それを聞いて、水音は、
「ああ、行こう!」
と、春風の握り拳を、グーでコツンと軽く叩いた。
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