ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第8章 友との決闘

第168話 決闘当日

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 闘技場。

 それは、帝城に並ぶウォーリス帝国帝都の、もう1つのシンボルである。

 そして今日、その闘技場で、待ちに待った「ビッグイベント」が開催される。

 といっても、決まったのは3日前と急なのだが。

 しかし、そんな急に決まった「ビッグイベント」にも関わらず、闘技場周辺には様々な出店が並んでいて、そこには多勢の人が集まっていた。その中には、帝都に住む住人だけでなく、他所からやってきた旅人なども含まれていた。

 ゾロゾロと人が闘技場の内部に入っていく中。その内部に複数ある控え室の1つに、「ビッグイベント」の主役の1人である水音と、帝国第一皇女であるセレスティアがいる。

 「いよいよだな、水音」

 「はい。セレスティア様」

 水音とセレスティアはお互い向き合う形で、控え室内にある長椅子に座っていた。

 「緊張しているのか?」

 「……はい」

 「まぁ、当然だな。今日この時の為に準備してきたんだから」

 「……」

 「幸村春風も、緊張していると思うか?」

 「どうでしょう。あいつはいつも、『俺、メンタルは割と脆い方だから!』なんて言ってますが、実際の彼のメンタルはの様に太くの様に頑丈ですから、案外それほど緊張はしてないと思います」

 「ハハハ、それは強敵だな」

 困った様な笑みを浮かべて話す水音に対し、セレスティアは笑いながらそう言った。

 やがて時間が来て、水はスッと立ち上がると、

 「ではセレスティア様、行ってきます」

 「うむ、行って思いっきり戦ってこい」

 セレスティアにそう言われて、水音は扉を開けて控え室を出た。

 一方、時は遡って、水音が控え室でセレスティアと会話している最中、もう1人の主役である春風はというと、

 「フーちゃん、気分はどう?」

 「うん、凄く良い感じだよユメちゃん」

 と、水音達と別の控え室にある長椅子の上で寝転がっていた。

 そう、再会した幼なじみである「ユメちゃん」こと歩夢の付きで。

 「フフ。とイブリーヌ様、凄く不満そうだったね」

 「……うん。2人には悪い事したと思っているよ。師匠には本当に感謝しないとな」

 「2人共、凛依冴さんに引き摺られてたね。フーちゃん、終わったら大変そうだね」

 「うぅ、別の意味で不安になった」

 そう言って固まった春風の頭を、歩夢は「よしよし」と優しく撫でた。

 「……ねぇ、フーちゃん」

 「ん?」

 「今日の決闘、緊張してる?」

 「……そうだね。『してない』って言ったら、嘘になると思う」

 「でも、負ける気なんてないんだよね?」

 「勿論ないよ。この決闘、全力で戦って、絶対に勝つ。それが、俺が水音の思いに応える、唯一の方法だと思っているから」

 「うん。フーちゃんなら、きっと勝てる。私も、全力で応援するから」

 「ありがとう」

 と、そんな風に穏やかな会話をしていると、決闘の時間が近づいて、

 「よっしゃ」

 と、春風はスッとゆっくり起き上がると、長椅子から立ち上がって、壁際に立て掛けた彼岸花を手に取り、

 「じゃ、行ってくるよユメちゃん」

 「うん。私もみんなの所に行くね」 

 笑顔の歩夢にそう言われると、春風は扉を開けて控え室を出た。

 その後、スタスタと長い廊下を歩いていくと、戦いの舞台への入り口が見えた。

 (さぁ、いよいよだ。勝ちに行くぞ、春風!)

 そして、入り口を潜ると、舞台である大きな闘技台が見えて、その中央にあたる部分に、水音が立っていた。

 やがて春風が闘技台に立つと、周りの観客席から、「ワァアア!」と多くの歓声があがった。

 (うわぁ、めっちゃ見られてるぅ)

 と、春風が心の中でそう呟くと、

 「ハールーッ!」

 「春風様ぁ!」

 と、観客席の一角からリアナとイブリーヌの声援が聞こえた。よく見ると、そこはどうやら特別席の様な所で、2人の側には歩夢やヘリアテス、七色の綺羅星のメンバー達、そしてエリノーラら皇族の姿もあった。

 (あれ? 師匠は何処だ?)

 特別席に凛依冴の姿がないのを知ると、春風はキョロキョロと他の観客席を見回して凛依冴を探した。

 すると、

 「おーい、春風、こっちこっち!」

 と声がしたので、春風はその声がした方を向くと、そこには「実況席」と書かれたブースがあり、その席には凛依冴の他にも、実況役と思われる女性とギルバート皇帝、そして、何故か恵樹の姿があった。

 (えぇ? 何でケータがそこにいるの?)

 と春風が疑問に思っていると、

 「おーい、ハルゥ!」

 「ハールちゃあん!」

 と自分を呼ぶ声がしたので、その方向を向くと、そこには観客席に座る懐かしい顔ぶれがあった。

 (あ、先輩方達だ!)

 そう、観客席にいたのは、シャーサルで春風が世話になった先輩ハンター達だった。

 (あぁ良かった。元気そうでなによりだ)

 そう考えた春風は先輩ハンター達に向かって右腕を大きく左右に振ると、水音が話しかけてきた。

 「知り合いかい、春風?」

 「ああ、シャーサルで世話になった先輩達だ」

 「へぇ、なんか羨ましいな。でも、彼らには悪いけど……」

 水音は春風の方を見て、不敵な笑みを浮かべて、

 「この決闘、勝つのは僕だ!」

 と、春風に向かって高々にそう言うと、春風も不敵な笑みを浮かべて、

 「いいや。勝つのはこの俺だ!」

 と、水音に向かって自信ありげにそう言った。
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