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第8章 友との決闘
第145話 帝都、到着
しおりを挟むセイクリア王国と肩を並べるもう1つの大国、ウォーリス帝国。
その中心地である「帝都」を見て、春風が抱いた第1印象は、
「ちょっと近未来的」
だった。
セイクリアの王都は走り抜けただけだったのでよくは見ていなかったが、建物から道までとても綺麗だったのはなんとなく覚えていた。
リアナ達と一緒に暮らしていたシャーサルは、とても活気に満ちていて、ハンターが多いことからかなりの力強さを感じた。
そして、このウォーリスの帝都は、そんなシャーサルを超える力強さに加え、建物と道の造りの作りがどこかセイクリア王都とシャーサルとは違うものを感じて、まるで少しだけ「未来」を感じた、そんな印象だった。
そんな近未来的な帝都の中を、春風達を乗せた馬車が通っていた。勿論、その最中はギルバートはレイモンドに、レイモンドはサイラスに変身していた。
「はぁ、凄いな」
馬車の窓から帝都内部を見て、春風はボソリとそう呟いた。そんな春風に、
「気に入ってくれたか?」
と、レイモンドの姿のギルバートが尋ねてきたので、春風はハッとなって、
「す、すみません! つい見惚れてしまいました!」
と、顔を真っ赤にしながら謝罪した。
ギルバートは「フフ」と笑いながら、
「その様子じゃ、結構気に入ってくれたみたいだな」
と、茶化すように言った。
そう言われた途端、春風は更に顔を赤くし、それを見たイブリーヌはムッとなった。
そういったやり取りをしているうちに、
「お、そろそろ着くぞ」
と、ギルバートが窓の外を見てそう言った後、馬車がピタッと止まった。
「じゃ、行こうか」
ギルバートはそう言うと、馬車の扉を開けて外に出た。
それに続くように、春風達も外に出ると、
「す、凄い!」
と驚いた春風の目の前には、とても大きくて立派な造りをした建物があった。ギルバートは春風の方を向いて口を開く。
「ようこそ、ウォーリス帝国の帝城へ」
ギルバートがそう教えた後に続くように、他の馬車からリアナ達が降りてきて、春風達と合流した。
「そんじゃ、今から帝城の中を案内するから……」
ギルバートが春風達を案内しようとしたその時、
「父上」
と、サイラスに変身したレイモンドが小声でギルバートの名前を呼んだ。
「ん? どうした?」
「あ、あそこに……」
と恐る恐る言ったレイモンドに促されて、ギルバートはレイモンドが指差した方向を見ると、
「んげ!」
帝城の中から、穏やかな笑みをした1人の女性が、春風達に向かって歩いてきた。
春風が「誰ですか?」と小声でギルバートに尋ねると、
「俺の妻のエリノーラだ」
と、ギルバートは冷や汗を流しながら答えた。
その後、女性ーーエリノーラが春風の側まであと少しといった所で、ギルバート前に出て、
「母上、ただいま戻りました」
と、レイモンドのフリをしてエリノーラにそう言った。
するとエリノーラは、穏やかな笑みのまま無言でサイラスに変身したレイモンドを「こちらに来るように」と言わんばかりに手招きした。
そしてレイモンドがエリノーラの側まで近づいた、次の瞬間……。
シュッ!
「「え?」」
ブチン!
「ゲッ!」
「ウッ!」
なんと、エリノーラは素早くギルバートとレイモンドの首に手を当てると、そこから「何か」を思いっきり引きちぎった。よく見ると、それは黒いチョーカーのようなものだった。
その後、眩い光に包まれた後、レイモンドはギルバートに、サイラスはレイモンドの姿に戻った。
目の前で起きた出来事に呆気に取られる春風達。
そして、元に戻った事で呆けているギルバートとレイモンドに、エリノーラは穏やかな笑みのまま口を開いた。
「おかえりなさい、豚アンド愚息」
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