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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第135話 そして、彼らは立ち上がる
しおりを挟む「オ、オイ、止マレ! 言ウコトヲ聞ケ!」
ーーグォオオオオオオオッ!
第3の目からそう叫ぶループスを無視して、異形のものへと変わり果てたループスの分身。
それを見て、春風を含む多勢の人達が戦慄した。
そんな中、
「う、うーん」
「あ、テツ!」
と春風が気付いた様に、それまで気を失っていたテツこと鉄雄が目を覚ました。そしてそれに続く様に、恵樹、美羽、彩織、詩織、そしてレイモンドも目を覚ました。
目覚めたばかりの鉄雄は、ゆっくり体を起こしながら周囲を見回した。
「あ、アレ、ここは?」
「ここは外だよ、もう脱出したから安心して……て言いたいんだけど」
春風はそう言うと、鉄雄に向こうを向く様に促した。
「あ? 何だよ……」
そして鉄雄が春風が指差した方を振り向くと、
ーーグォオオオオオオオっ!
「うぉおおっ! 何じゃありゃあ!?」
と、変わり果てたループスの分身を見て、驚きのあまり飛び起きた。樹達も同様の反応だった。そんな彼らに、春風は気まずそうに言う。
「あー、なんか暴走しちゃったみたい」
「ハァ!? なんかって何だよ!?」
ーグォオオオオオオオッ!
春風と鉄雄のやり取り前にしても、ループスの分身は雄叫びを上げ続けた。それが効いているのか、ハンターや騎士達の中から恐怖のあまり腰を抜かす者が出てきた。
その状況の中、春風はループスの分身を見て「やかましいなぁ」と小さく呟くと、真っ直ぐループスの分身を見たまま鉄雄に尋ねた。
「テツ、みんな、動けるか?」
「え、『動けるか』って、どうする気だよ?」
「どうする気って、こいつをここで倒すんだよ」
「『倒す』って、正気かよ!? 勇者の攻撃を受けても、ピンピンしてるんだぞ!? そんな奴勝てんのかよ!?」
鉄雄のそのセリフを聞いた瞬間、春風はピキッとなって、鉄雄の方を向いた。
「はあ? 何? お前もう諦めてんの?」
「へ?」
ポカンとなった鉄雄に向かって、春風はゆっくりとシャーサルを指差して言う。
「あそこには多勢の人達がいるんだぞ? 今守れるのは俺たちしかいないんだぞ? ましてやお前ら『勇者』なんだろ? だったらここは立ち上がらないといけねぇだろ!? ていうか……」
次の瞬間、春風は鉄雄の胸ぐらを掴んだ。
「『退屈だ』って言われた挙句、何も出来ないまま丸飲みにされて、悔しくねぇのかよ!? えぇ!?」
「う! そ、それは……」
春風の問いかけに、言葉を詰まらせる鉄雄達。
「……チッ」
春風はそんな彼らを見て小さく舌打ちすると、鉄雄の胸ぐらを掴んだ手を乱暴に離して、ループスの分身に向き直った。
「だったら俺1人でも戦う。君達はイブリーヌ様やレイモンド様、それと動けない人達を守ってくれよ。戦う心が折れても、それくらいなら出来るだろ?」
そう言うと、春風は腰の彼岸花を鞘から抜いて構えた。
「良いですよね、ループス様」
「アア、コウナッテシマッタラ我ニモ止メラレン。スマナイ」
そのやり取りの後、春風の隣にリアナが近づいて、
「私も戦うよ、ハル」
と、愛用の両剣を構えた。
さらに、
「私も……」
と、反対側に歩夢が近づいて、
「フーちゃんと一緒に、私も戦う。凄く、悔しかったから」
と、自身の武器である薙刀を構えた。
「ありがとう、ユメちゃん」
春風は歩夢にお礼を言った。それを聞いて、歩夢はニコリと笑う。因みに、リアナはそれを見てムッとなったが、春風は無視する事にした。
ループスの分身を前に武器を構えた3人を見て、鉄雄は、
「ダァアアアアアアアチクショオオオオオオオ! わかった、わかったよ! 俺だって悔しいよコンチクショー!」
と、上に向かってそう叫んだ後、春風達の側に近づいて拳を構えた。
そしてそれに触発されたのか、
「そうだねぇ。俺達だって悔しいもんねぇ」
「そうね。『退屈だ』って言われて、凄くムカついたもの」
「うん。このままで良いわけないよね」
「よーし、やってやろうじゃん!」
恵樹も、美羽も、彩織も、詩織も、春風達の側に近づき、それぞれの武器を構えた。
「で、倒すって言ってもどうすんだよハル?」
鉄雄のその質問に、春風は不敵な笑みを浮かべて答える。
「そんなの決まってんだろ?」
そして、真っ直ぐループスの分身を見て言い放つ。
「『必殺技』だ!」
『……え?』
「それも、スキルから生まれたものじゃない、俺達自身の、オリジナルのものだ!」
その言葉を聞いて、リアナも、勇者達も、レギオンメンバーも、イブリーヌも、レイモンドも、ハンターと騎士の連合軍も、そしてループス本人も、
『な、なんだってぇえええええええ!』
と、驚きの声をあげるのだった。
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