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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第118話 帰った後のあれこれ
しおりを挟むクラスメイト達が帰った後、レギオン「七色の綺羅星」拠点では、
「それじゃあみんな、明日も仕事だから早めに休むように!」
と、リーダーの春風がメンバーに向かってそう言うと、
『はーい!』
と、メンバー全員がそう返事した。皆とても疲れている様子で、特に幼いイアン、ニコラ、マークの3人はとても眠そうだった。
全員がゾロゾロと食堂を出ていく中、
「さて、俺ももう寝るか」
と、春風も食堂を出ようとすると、
「ハル」
「ん?」
急に名前を呼ばれて振り返ると、そこには何やら思い詰めた表情のリアナがいた。
「どうしたのリアナ?」
春風がそう尋ねた次の瞬間、リアナはガバッと春風に抱きついた。
「えっとリアナさん、これは何の真似かな?」
「……ハルは、強くなってるよ」
「え?」
「ハンターになってからも、レギオンリーダーになってからも、ハルはちゃんと強くなってるよ。それは、私が保証するから」
「……ありがとう」
「あと、昔の事を話してる時のハル、とても辛そうだった。だから、もしその事で辛いって感じたら、いつでも頼って良いんだからね」
「……うん。そうなったら、その時は頼らせてもらうよ」
「それと、もう1つあるんだけど」
「何?」
「今日会った『勇者』達の中に、好きな子がいるんでしょ?」
その瞬間、春風はピシッとなったが、すぐにフッと笑って抱きついてきたリアナを剥がすと、
「教えない」
と、満面の笑みで答えた。
その後、ムカッとなったリアナに追い回され、その様子をニヤニヤしたアデル達に見られる事になった。
一方その頃、宿に戻ったクラスメイト達は、騎士や神官達にこっ酷く叱られた(といってもディックのフォローもあってそれほど酷くはなかったが)後、それぞれの部屋に戻った。
その一室で、クラスメイトの1人、海神歩夢は、ベッドの上で体育座りをしていた。
(……久しぶりに会った幸村君、元気そうだったなぁ)
自分以外誰もいない部屋で1人考えていたのは、春風の事だった。
(ハンターっていうのになってて、レギオンリーダーっていうのになってて、仲間に囲まれてて、あ、そういえば小さい子達もいたなぁ)
そんな事を考えていた次の瞬間。
ーーハルと私はぁ、かったぁい絆で結ばれてるんだよぉ。
と、歩夢の脳裏に浮かんだのは、ギルド総本部で言っていたリアナの言葉だった。その言葉を思い出して、歩夢はちょっとだけムカッとなった。
「ハンター、か」
歩夢はボソリとそう呟いた後、ベッドを降りて部屋を出て、隣の天上美羽の部屋に向かい、トントンと部屋の扉をノックした。
「はーい」
そう返事をした後、ガチャリと部屋の扉を開けて、美羽が顔を出した。
「どうしたの海神さん?」
「あの、相談したい事があるの」
「?」
翌日、ギルド総本部内。
「えっと、どういう事、ですか?」
ピクピクと頬を引き攣らせる春風の目の前にいるのは、
「朝日鉄雄改め、テツ!」
「野上恵樹改め、ケータ!」
「天上美羽改め、ミウ!」
「氷室彩織改め、イオリ、です」
「氷室詩織改め、シオリ!」
「海神歩夢改め、ユメ」
『俺(私)達、ハンターになりました!』
と、自身のギルドカードをかざすクラスメイト達だった。
ポカンとなっている春風を除く「七色の綺羅星」のメンバー達。特にリアナはわなわなと体を震わせていた。
そんな様子の彼らを気にせずに、クラスメイト達はさらに続ける。
「そして俺達は……」
『七色の綺羅星に、入団します!』
4秒の沈黙後、
『ええ~っ!』
七色の綺羅星だけでなく、総本部内にいる全ての人達の悲鳴があがった。
そんな中、春風はというと、
「う、嘘だろ?」
と、理解が追いつかない状態でそう呟いた。
そんな状態の春風に、クラスメイト達は近づいて、
「じゃ、よろしくなリーダー」
「そうそう、よろしくリーダー」
「うん、よろしくねリーダー」
「よ、よろしくお願いします、リーダー」
「うんうん、よろしくリーダー」
「よろしく、リーダー」
と、順に春風の肩を叩いた。
叩かれた春風は、
「嘘だろぉ?」
と、ガクリと肩を落とすのだった。
こうして、思わぬ形で一気にメンバーが増えた、春風達「七色の綺羅星」。
そして、丁度その頃、シャーサルから少し遠く離れた森の中で、1つの黒い影が、着々ととある「準備」を進めていた。
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