ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第7章 襲来、「邪神の眷属」

第115話 全てを聞き終えて・3

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 「……それって、ホントの話、ですか?」

 水音がウォーリス帝国にいる理由を聞いてから、「七色の綺羅星」拠点の食堂内がシーンと静まり返っている中、最初にそう口を開いたのは、リアナだった。彼女の問いに対し、レイモンド皇子が答える。

 「ああ、全て事実だよ。父上が彼を連れて来た時は、私も母上も流石に驚いたよ。因みに、その後父上と妹のセレティアは、母上にこっぴどく叱られたけどね」

 「はぁ、そうですか。それで、その皇帝陛下は、ハルのことも貰うからと言ってたんですよね?」

 リアナのその質問に、レイモンドの代わりにサイラスが答える。

 「その通りです。陛下は皇帝としての自覚はあるのですが、時折仕事をほったらかして脱走してはエリノーラ皇妃様にお仕置きをされるという問題がある上に、『欲しい』と思ったものを見つけるとあらゆる手段を使って手に入れるというなんとも困った所がありまして、その所為でいつの間にか『強欲皇帝』などという異名がついてしまったのです」

 その答えを聞いて、リアナ達は「えぇ?」と引いたが、春風だけは無言でじっとしていた。

 その後、再び食堂内が静かになると、

 「……て、冗談じゃありませんよ! そんな危ない人なんかに、ハルは絶対に渡しませんから!」

 と、リアナはテーブルをバンと叩いてそう怒鳴った。

 「ていうかハル! ハルも黙ってないでなんか言ってよ!」

 リアナは春風の方を向いてさらに怒鳴ると、それまで黙ってた春風が、レイモンドに向かって口を開いた。

 「……水音は今、元気ですか?」

 真っ直ぐレイモンドを見てそう尋ねた春風に、レイモンド本人は、

 「ああ、今はセレスティアに鍛えられながら、元気に過ごしているよ」

 と、同じく真っ直ぐ春風を見て、優しく微笑みながら答えた。

 「そう、ですか」

 それを聞いて、春風は何処か複雑な表情を浮かべながらも、ホッと胸を撫で下ろした。その様子を見て、今度はレイモンドが春風に尋ねる。

 「嬉しくないのかな?」

 「嬉しい、とは思ってるんですけど、同時に不安というか、ちょっと、やばいかもしれません」

 「やばい、とは?」

 「セイクリア王国を飛び出してからの4ヶ月間で、水音は俺が強くなってるって思っているんですよね?」

 「ああ」

 「正直言いますと、俺、そんなに強くなってないと思います」

 春風のその言葉に、リアナを含む「七色の綺羅星」のメンバーは全員「えぇっ!?」と驚いたが、レイモンドはそれに構わず質問を続ける。

 「私も水音から君のことを聞いたが、君はずっと『強さ』を求め続けているそうだね?」

 「ええ、それは今も変わっていません」
 
 「特に、2年前の『出来事』を機にさらにその思いが強くなっている、とも聞いている」

 「……それは、どの『出来事』のことを言ってるのですか?」

 「2年前、君は武装した集団にさらわれた子供達を救う為に、たった1人でその連中の本拠地に向かい、見事に全員を助け出したそうだね?」

 「……っ」

 その言葉を聞いた次の瞬間、レギオンメンバー全員が「え、そうなの?」と春風に視線を向ける中、春風は左手でグッと自身の右腕を掴んだ。掴んだのは、肘から下の、包帯が巻いてある部分だ。

 春風は右腕を掴んだまま辛そうな表情になるが、少しずつ落ち着きを取り戻した後、ゆっくりと口を開いた。

 「……運が、良かったんです。向こうで味方になってくれた人達がいて、敵の最新兵器を奪えたっていうのもあったし、何より師匠が『彼岸花』を貸してくれたから」

 「彼岸花?」

 「刀……いえ、この世界に刀はないから、剣の名前と言えば良いでしょうね」

 「もしかして、その腰のベルトに挿してるものかい?」

 レイモンドはそう言うと、春風の腰の「赤刀・彼岸花」を指差した。

 春風はそれに「いいえ」と答えると、スッと椅子から立ち上がり、彼岸花の柄を握ると、ゆっくりと鞘から抜いた。真紅の刀身を見て、レイモンドが「おぉ!」と驚きの表情になった。

 「こいつも『彼岸花』なのですが、こいつはから僅かに力を分け与えられた『分身』みたいなものなんです」

 「ほう、分身……て、あれ?」

 「どうしました?」

 「いや、君の右目が

 レイモンドがそう言った途端、クラスメイトの1人、鉄雄が、

 「え? あ、本当だ! 確かに真っ赤になってる!」

 と、驚きの声をあげた。それは、他のクラスメイトも同様だった。

 その様子を見て、春風は冷静に説明する。

 「ああ、ですか? こいつを抜くとこうなってしまうんです。だからこれだけですが、2年前のあの時、を抜いた時はもっと凄かったんですよ」

 「何! そうなのかい!?」

 是非もっと詳しく聞きたいと言わんばかりに目をキラキラ輝かせているレイモンドを見て、春風は「うーん」と唸ると、

 「本当はあんまり見せたくないんですけど、仕方ありませんね」

 と言って、彼岸花を鞘に収めると、全員の前で右腕に巻かれた包帯を解いた。

 「これが、オリジナルの彼岸花を抜いた、みたいなものです」

 包帯を解き終えた春風はそう言って、包帯の下にあるものを見せると、レイモンドを含めて周囲は全員、

 『ウッ!』

 と、悍ましいものを見た様な表情になった。
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