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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第112話 水音編2 水音、気に入られる
しおりを挟む水音からの攻撃を受けて吹っ飛ばされたセレスティアは、周囲の人達と同じ様に呆然としていると、
「フ、フハハ、フハハハハハハハ!」
と、大きな声で笑い出した。
突然の事に水音を含む周りがポカンとなっていると、セレスティアはジャンプして水音の目の前に立って、
「良い! 良いな、今の一撃! お前、中々良いものを持っているではないかぁ!」
「え、えっとぉ……」
いきなり褒められて水音はオロオロしていると、セレスティアは近くにいた兵士に、
「オイ、槍だ! 新しい槍をよこせ!」
と命令し、それを受けた兵士は「は、はい!」と叫ぶと、大慌てで新しい訓練用の槍を用意し、それを渡した。
兵士から槍を受け取ると、セレスティアは水音の方に向き直って尋ねる。
「お前、名前は?」
「え? み、水音です、桜庭水音。桜庭が名字で、水音が名前です」
「ふむ、水音、か。よし、水音」
「な、何でしょうか?」
セレスティアは受け取った槍を構えると、
「第2ラウンドだ。勿論、さっきの攻撃付きでな」
と、不敵な笑みを浮かべて言った。
「え、えぇ?」
その後、水音とセレスティアによる、「手合わせ」という名の激闘が続いた。
そのあまりの壮絶な戦いに、小夜子と他のクラスメイト達、そしてセイクリアの王族達も、黙って見守るしかなかった。
ただ、水音のあの「青い炎」による攻撃を受けた時のセレスティアの顔が、何処か気持ちよさそうだったのが気になったが、全員、気の所為だろうと思うことにした。
それから時が過ぎて、時刻は夕方。手合わせが終わって、小夜子とクラスメイト達は夕食にしようと食堂に向かっていた。全員、何処か疲れた表情をしていて、特に最後まで戦っていた水音は、力を使い過ぎた為か他のクラスメイト以上にふらついていた。ともあれ、セレスティア本人は一緒に来た騎士2人と共に何処かに行ったようで、クラスメイト達は「やっと解放された」と思い、ホッと胸を撫で下ろした。
ところが、食堂に入ると、
「お、やっと来たか!」
セレスティアがいた。ついでに騎士2人も一緒だ。
その姿を見てげんなりした小夜子とクラスメイト達は、皇女の前にも関わらず軽く挨拶を済ませると、それぞれ自分達の分の食事を受け取って席に座ろうとした。
だが、
「オイ、水音」
「はい!?」
名前を呼ばれて、水音はビクッとしながらセレスティアの方を向くと、
「お前はこっちだ」
と、セレスティアは自分の隣の席をポンポンと叩きながら水音を誘った。
「へ? あ、あのぉ……」
まさかのお誘いに水音が戸惑っていると、
「言っておくが、お前に拒否権はないからな」
と、セレスティアに鋭い眼光を向けられた。
水音はすぐに他のクラスメイト達に、
(た、助けて!)
という視線を送ったが、全員ふいっとそっぽを向かれたので、諦めてお誘いに乗ることにした。
そして夕食が始まったのだが、小夜子と他のクラスメイト達はともかく、水音はもの凄く生きた心地がしなかった。隣に帝国の皇女がいるのだから、それは当然だろう。
食事がある程度進むと、水音は恐る恐るセレスティアに尋ねた。
「あ、あの、何故、僕を隣に誘ったのですか?」
その問いに対し、セレスティアは「ん?」となって答えた。
「単純に、お前が気に入ったというのもあるが、ちょっと聞きたいことがあってな」
「何でしょうか?」
すると、セレスティアは真剣な表情になって、
「幸村春風」
「!」
「知っているぞ。召喚された初日にお前達の下を飛び出したもう1人の異世界人をな。そいつについて知ってることがあったら、ぜひ教えてほしいんだ。あ、これも拒否権はないからな」
脅しにも聞こえるそのセリフに、水音は少し考え込んだが、
「……わかりました。お話しします」
と、セレスティアと騎士2人に、春風について話すことにした。
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