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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第107話 新たな仲間
しおりを挟む「それで、門番の目を掻い潜ってシャーサルの中に入る事に成功した時に、ケイトに拾われたというわけですね?」
「はい。その通りです」
春風達は現在、「七色の綺羅星」の拠点内にある食堂で、目の前にいる言葉を喋る人形、アイザックから、自身の生い立ちから人形になった後の話を聞いていた。人形であるが故に表情に変化はないが、その話から、たった1人の「家族」であるルーシーに会いたいという思いが伝わってきた。
それから暫くの間沈黙していると、
「私からも、聞いて良いでしょうか?」
と、アイザックがそう言って手を上げた。
それを見て、春風が「何でしょうか?」と尋ねると、
「私が人形になってから今日までの間に起こった全ての出来事を、教えて欲しいのです」
「ああ、そういえばまだ話してなかったですね、わかりました」
その後、春風達はアイザックに、村を出てから今日に至るまでの経緯を話した。表情はやはり変わらないが、話の内容を聞いて、アイザックはとても驚いていた。
「そ、その様な事があったのですか!?」
アイザックはそう言うと、アリア……否、アリシアの方を向いて、
「アリシアさん、辛いことをさせてしまって、本当にすまなかったね」
と、深々と頭を下げた。その姿を見て、アリシアも、
「そんな! 私の方こそ、小隊長達を止められなかったばかりに、本当にごめんなさい!」
と、大慌てでアイザックに頭を下げた。
アイザックは頭を上げると、次にルーシーの方を向いて、
「ルーシー、無事に生きてくれて、ありがとう。こうして再び君に会えて、私はとても嬉しいよ」
と言って、再び深々と頭を下げた。その言葉を聞いて、ルーシーは顔を赤くすると、
「わ、私も、またお爺ちゃんに会えて、すごく、嬉しい」
と言って、アイザックに向かって微笑んだ。
そして、アイザックは最後に春風の方を向いて、
「ハルさん……いえ、春風さんと呼べば良いでしょうか?」
「ハルで構いません。今はその呼び名で通してますので」
「わかりました。では、ハルさん」
「はい」
「大切な孫娘とその友達、そして幼いイアン君達を救ってくださって、ありがとうございました」
と、アイザックは三度深々と頭を下げてお礼を言った。
しかし、春風が何か言おうとすると、
「その、図々しいのを承知の上で、お願いしたい事があります」
と、アイザックが続けて話をした。
春風は「何ですか?」と首を傾げて尋ねると、
「私も、あなたの仲間に入れてほしいのです」
「勿論良いですよ」
「即答ですか!?」
春風のあまりの即答ぶりに、アイザックは思わずギョッとなった。
「え、ちょっと待ってください! 私、人形ですが、良いのですか!?」
慌てて質問したアイザックに、春風はアリシア達を見回しながら答える。
「最初は、アリシアさん達に生きて罪を償ってもらう為に助けたんですけど、フレデリック総本部長さんに『無理』だって言われた挙句、『あなたが助けたんですからあなたが面倒見なさい』みたいな事言われて、それで始めたレギオン生活でしたけど……」
春風はそう言うと、頭をぽりぽり掻きながら、
「いつの間にか、スッゲェ楽しくなって、いつの間にか、大切な『仲間』になっちゃいました」
と、照れ臭そうに言った。それを見て、アデルとルーシーは、
「アニキ……」
「ハル兄さん……」
と、恥ずかしそうに顔を真っ赤にした。それは、アリシア達も同様だった。
そんな中で、春風はさらに話を続けた。
「で、アイザックさん」
「は、はい」
「あなたは、そんな大切な『仲間』の、大切な『家族』なんです。拒む理由がどこにありますか? むしろ、こっちからお願いしたいくらいなんですけど」
「そ、それは……」
アイザックが言葉に詰まらせていると、春風はスッとそれまで座っていた椅子から立ち上がって、アイザックの側に近づいた。
そして、片膝をついて身を低くすると、右手をアイザックの前に差し出して、
「アイザックさん、俺達『七色の綺羅星』は、あなたを歓迎します」
と、優しく微笑みながら言った。
アイザックは人形の体をブルブルと震わせると、
「あ、ありがとう、ございます」
と言って、小さな人形の両手で、その手を掴んだ。
こうして、春風達「七色の綺羅星」に、新たな仲間が加わるのだった。
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