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第6章 結成、ユニークなレギオン?
第91話 リアナの「答え」と、春風の「迷い」
しおりを挟む「そ、そんな、馬鹿な……」
「嘘……でしょ?」
「何だよそれ。何なんだよそれ!?」
「嘘! そんなの嘘だよ!」
「……」
「ひ、酷い、酷すぎます!」
春風から「全て」の話を聞いたアリシア達は、ショックで顔が真っ青になった。幼いイアン、ニコラ、マークはというと、話をする前に別室に移動させられていた。その際自分達も聞きたいと言っていたが、
「大丈夫、君達にも後でちゃんと話すから」
と、ツクヨミに優しく諭されて、3人は渋々女性職員に連れられて総本部長室を後にした。
話を戻して、全てを聞き終えて重苦しい雰囲気に包まれた中、フレデリックが口を開いた。
「ツクヨミ様、でよろしいでしょうか?」
「ええ、良いですよ」
「今、あなたと春風さん達が仰った事は、全て事実で間違いないのですね?」
「はい、その通りです」
「そうですか」
フレデリックはそう言うと、「ふう」と息を吐いて天井を見上げた。その後、視線を天井から春風達に向けると、
「春風さん。リアナさん」
「「はい」」
「これまでの話を聞いて、あなた達が予言の『悪魔』だと言う事は理解出来ました。その上で、質問します」
「「……」」
「あなた達は、『世界』を救う為に『神々』を殺しますか?」
「!」
フレデリックのその質問に、アリシアはハッとなった。無理もないだろう、裏切ったとはいえ彼女もまた教会に属する人間だったのだから。
アリシア達が見守る中、リアナが先に答えた。
「私は、私を育ててくれた『お父さん』と『お母さん』を苦しめた『偽物の神々』を許さない。だから私は、『世界』の為というよりも、『お父さん』と『お母さん』を助ける為に、あいつらを倒します」
真っ直ぐフレデリックを見てそう言ったリアナ。その時の姿は、茶色の髪をした普通の人間の姿ではなく、白い髪に少し尖った耳、そして狐の尻尾が生えた本来の姿だった。
フレデリックは「そうですか」と言うと、春風の方を見て、
「春風さん、あなたはどうですか?」
と質問した。
「俺は……」
春風は答え辛いのか顔を下に向けたが、すぐにフレデリックに向き直って、
「俺は、召喚が行われて、アマテラス様……地球の神様達から地球消滅の危機を知らされたあの日、この世界を『悪い世界』だと決めつけました。この世界の所為で、俺の大切な家族と、大切な人達を危険に晒したから」
「……」
「だから、俺は最初、この世界を見捨てるつもりでした。いやもっと言えば、地球を救う為に、この世界には犠牲になってもらおうとも考えてました」
「! ま、待ってくれ、それは……」
アリシアは何か言おうとしたが、ツクヨミに視線を向けられて何も言えなくなってしまった。その瞬間、自分には何も言う資格はないと理解してしまったのだ。そして、それはアデル達も同じだった。
「それは……当然ですね」
フレデリックはそう言って肩を落とした。
しかし、春風の話は終わらなかった。
「だけど……」
『?』
「今の俺、凄く迷ってます」
「どういう意味でしょうか?」
「勿論、この世界……というより、召喚を行ったセイクリア王国や、『偽物の神々』に対する怒りはありますが、ハンターとして生活するうちに、まだシャーサルの中だけですからわかりませんが、その人達にとって『偽物の神々』は、間違いなく本物の神様なわけで、俺がやろうとしているのは、その人達から神様を奪おうとしてるんだなって、考える様になりました」
「春風……」
リアナが心配そうに見守る中、春風はさらに話を続ける。
「総本部長さん」
「何ですか?」
「あなたは先程『世界を救う為に神々を殺しますか?』と尋ねましたが、俺の答えは、『わかりません』です。俺の心の中では今、『当然ぶっ殺すべきだ!』と叫ぶ自分と、『嫌だ! そんな事したくない! 殺す以外にも方法があるはずだ!』と叫ぶ自分がせめぎ合っているんです。良くないとわかっているのに、こうして今も迷っているんです」
そう言った後、フレデリックからツクヨミ方に体を向けて、
「ツクヨミ様」
「何かな?」
春風は深く頭を下げた。
「覚悟の弱い、情けない契約者で、申し訳ありませんでした」
「え、普通に許すけど」
4秒の沈黙後、
『そ、即答したぁあー!?』
総本部長室内に、リアナとアリシア達の叫びが響き渡った。因みにフレデリックはというと、無表情のまま固まっていた。
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