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第6章 結成、ユニークなレギオン?
第80話 教主、ショックを受ける
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*今日から新章開幕です。
それは、五神教会教主のモーゼスが、いつもの様に教会本部の執務室で仕事をしていた時のことだった。
「フゥ、今日もいつも通り特に問題は無い様ですねぇ。召喚した勇者達も順調に育っている様ですし」
と呟きながら目の前の書類に目を通していると、ドンドンと執務室のドアを強く叩く音が聞こえた。
「ん? どうしました?」
「教主様、大変急ぎのご報告があります!」
「入りなさい」
「ハッ! 失礼します!」
そう言って強くドアを開けて入ってきたのは、モーゼスの側近を務める男性だった。
「どうしたのですか? そんなに慌てて」
そう尋ねるモーゼスの言う様に、男性は何やら大慌てでここまで来たのか、肩で息をしながら「ゼェハァゼェハァ」言っていった。その様子からして、余程重要な報告だろうとモーゼスはそう感じた。
「た、大変です、教主様! たった今、断罪官のウォーレン大隊長の部隊が戻って来たのですが……」
「何ですってぇえ!? ウォーレン大隊長が、たった1人の異端者に、敗北したですってぇえええええ!?」
男性の報告を聞いて、モーゼスは声を荒げて椅子から立ち上がった。
「そ、それは、本当なのですか!?」
「はい! 本当の事です!」
「そ、そんな馬鹿な! 歴代の大隊長よりも強いと言われ、鬼神の如き強さと鋼鉄の精神を持つことから、『鉄鬼』と異名を持ち恐れられてきた、あの、ウォーレン・アークライト大隊長が!?」
「はい! 信じられない事ですが、事実です!」
「そ、それで、ウォーレン大隊長は、どうなってしまったのですか!?」
「はい、負傷はしましたが、命に別状はありません! ですが……」
「ですが、なんですか!? 他にもあるのですか!?」
「はい! そ、それは……」
「な、なぁあんですってぇえええええええ! 大隊長の証である『聖剣スパークル』が、真っ二つにされたですってぇえええええええ!?」
「はい! その異端者は、真紅に輝く魔剣を用いて、ウォーレン大隊長の最大の奥義『聖光轟雷斬』を真っ向から打ち破り、そのまま聖剣スパークルを、真っ二つに折ったのです!」
「そ、そんな……神聖剣最大の奥義をも破った……ですって?」
モーゼスはそれらの報告を聞くと、へなへなと背後の椅子に座り込んだ。その姿を、男性は心配そうに見た。
「そ、それで、他の隊員達は?」
「はい。副隊長のルーク・ウェリントン含む隊員10数名も、異端者の操る技と見たこともない魔術によって全員負傷したとの事ですが、幸いにも1人も死者は出ておりません」
「そ、そうですか」
男性からの報告に、モーゼスはホッと胸を撫で下ろすと、次の質問に移った。
「それで、その異端者というのは何者なのですか?」
「はい、『ハル』というハンターの少年です」
「ハル?」
その名前を聞いた瞬間、モーゼスの脳裏に、1人の少年の姿が出てきた。
「ちょっといいですか?」
「? はい」
「その少年が使ったという見たこともない魔術とは、どの様なものなのですか?」
「はい、ルーク副隊長によると、風、土、火、水の4つの属性の魔術を操っていた様です」
「よ、4つですか!?」
「はい、4つです」
「そ、その魔術の名前と詠唱は?」
「いくつか出てきたのですが、その内の1つは確か……」
ーー求めるは“風”、『ウインド』。
その魔術の名前を聞いて、モーゼスは恐る恐る尋ねた。
「もう一ついいですか?」
「は、はい」
「そのハルという少年は、もしかして黒い髪に可憐な少女の様な顔つきではありませんでしたか?」
「はい、その通りです。そしてその所為で、隊員2名が純情を弄ばれ、ウォーレン大隊長もショックを受けたと申しておりました」
「んなぁ!」
男性からの報告に、モーゼスは開いた口が塞がらなかった。
「あ、あの、教主様?」
「その報告、他の人に話しましたか?」
「い、いえ、教主様だけです」
モーゼスはその言葉を聞いて再びホッと胸を撫で下ろすと、男性に向かって、
「いいですか。今、報告した事は他言無用です。絶対に外に漏らしてはなりません。ルーク副隊長にもそう伝えてください」
「え、それは、ウィルフレッド陛下にもですか?」
「陛下にもです! わかったらすぐに伝えに行きなさい!」
「は、ハイ! わかりました! 失礼しました!」
モーゼスに怒鳴られると、男性はまた大慌てで執務室から出ていった。
1人になった瞬間、モーゼスは「ハァ」と溜め息を吐くと、
「うおおおおおおおっ! またか! また貴様かぁあああああああ!」
モーゼスは怒りに任せてそう叫ぶと、机にあった大量の書類を床にばら撒いた。
だが、それでもモーゼスの怒りはまだ治らず、
「おのれ許さん! 許さんぞぉおおおおお! 幸村春風ぁあああああああっ!」
と、この場にいないその少年、ハンターのハルこと幸村春風に、憎悪を込めた叫びをあげるのだった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、今日から新章の始まりです。
前回の最後で書きました通り、今章では春風君が、ある大きな「決断」をすることになります。
一体どんな決断をするのでしょうか?
この後の彼の行動に、ご期待ください。
それは、五神教会教主のモーゼスが、いつもの様に教会本部の執務室で仕事をしていた時のことだった。
「フゥ、今日もいつも通り特に問題は無い様ですねぇ。召喚した勇者達も順調に育っている様ですし」
と呟きながら目の前の書類に目を通していると、ドンドンと執務室のドアを強く叩く音が聞こえた。
「ん? どうしました?」
「教主様、大変急ぎのご報告があります!」
「入りなさい」
「ハッ! 失礼します!」
そう言って強くドアを開けて入ってきたのは、モーゼスの側近を務める男性だった。
「どうしたのですか? そんなに慌てて」
そう尋ねるモーゼスの言う様に、男性は何やら大慌てでここまで来たのか、肩で息をしながら「ゼェハァゼェハァ」言っていった。その様子からして、余程重要な報告だろうとモーゼスはそう感じた。
「た、大変です、教主様! たった今、断罪官のウォーレン大隊長の部隊が戻って来たのですが……」
「何ですってぇえ!? ウォーレン大隊長が、たった1人の異端者に、敗北したですってぇえええええ!?」
男性の報告を聞いて、モーゼスは声を荒げて椅子から立ち上がった。
「そ、それは、本当なのですか!?」
「はい! 本当の事です!」
「そ、そんな馬鹿な! 歴代の大隊長よりも強いと言われ、鬼神の如き強さと鋼鉄の精神を持つことから、『鉄鬼』と異名を持ち恐れられてきた、あの、ウォーレン・アークライト大隊長が!?」
「はい! 信じられない事ですが、事実です!」
「そ、それで、ウォーレン大隊長は、どうなってしまったのですか!?」
「はい、負傷はしましたが、命に別状はありません! ですが……」
「ですが、なんですか!? 他にもあるのですか!?」
「はい! そ、それは……」
「な、なぁあんですってぇえええええええ! 大隊長の証である『聖剣スパークル』が、真っ二つにされたですってぇえええええええ!?」
「はい! その異端者は、真紅に輝く魔剣を用いて、ウォーレン大隊長の最大の奥義『聖光轟雷斬』を真っ向から打ち破り、そのまま聖剣スパークルを、真っ二つに折ったのです!」
「そ、そんな……神聖剣最大の奥義をも破った……ですって?」
モーゼスはそれらの報告を聞くと、へなへなと背後の椅子に座り込んだ。その姿を、男性は心配そうに見た。
「そ、それで、他の隊員達は?」
「はい。副隊長のルーク・ウェリントン含む隊員10数名も、異端者の操る技と見たこともない魔術によって全員負傷したとの事ですが、幸いにも1人も死者は出ておりません」
「そ、そうですか」
男性からの報告に、モーゼスはホッと胸を撫で下ろすと、次の質問に移った。
「それで、その異端者というのは何者なのですか?」
「はい、『ハル』というハンターの少年です」
「ハル?」
その名前を聞いた瞬間、モーゼスの脳裏に、1人の少年の姿が出てきた。
「ちょっといいですか?」
「? はい」
「その少年が使ったという見たこともない魔術とは、どの様なものなのですか?」
「はい、ルーク副隊長によると、風、土、火、水の4つの属性の魔術を操っていた様です」
「よ、4つですか!?」
「はい、4つです」
「そ、その魔術の名前と詠唱は?」
「いくつか出てきたのですが、その内の1つは確か……」
ーー求めるは“風”、『ウインド』。
その魔術の名前を聞いて、モーゼスは恐る恐る尋ねた。
「もう一ついいですか?」
「は、はい」
「そのハルという少年は、もしかして黒い髪に可憐な少女の様な顔つきではありませんでしたか?」
「はい、その通りです。そしてその所為で、隊員2名が純情を弄ばれ、ウォーレン大隊長もショックを受けたと申しておりました」
「んなぁ!」
男性からの報告に、モーゼスは開いた口が塞がらなかった。
「あ、あの、教主様?」
「その報告、他の人に話しましたか?」
「い、いえ、教主様だけです」
モーゼスはその言葉を聞いて再びホッと胸を撫で下ろすと、男性に向かって、
「いいですか。今、報告した事は他言無用です。絶対に外に漏らしてはなりません。ルーク副隊長にもそう伝えてください」
「え、それは、ウィルフレッド陛下にもですか?」
「陛下にもです! わかったらすぐに伝えに行きなさい!」
「は、ハイ! わかりました! 失礼しました!」
モーゼスに怒鳴られると、男性はまた大慌てで執務室から出ていった。
1人になった瞬間、モーゼスは「ハァ」と溜め息を吐くと、
「うおおおおおおおっ! またか! また貴様かぁあああああああ!」
モーゼスは怒りに任せてそう叫ぶと、机にあった大量の書類を床にばら撒いた。
だが、それでもモーゼスの怒りはまだ治らず、
「おのれ許さん! 許さんぞぉおおおおお! 幸村春風ぁあああああああっ!」
と、この場にいないその少年、ハンターのハルこと幸村春風に、憎悪を込めた叫びをあげるのだった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、今日から新章の始まりです。
前回の最後で書きました通り、今章では春風君が、ある大きな「決断」をすることになります。
一体どんな決断をするのでしょうか?
この後の彼の行動に、ご期待ください。
応援ありがとうございます!
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