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第5章 対決、断罪官
第75話 激突
しおりを挟む「俺達の進む道に、未来に、お前らは邪魔だ! だから、ぶっ潰す!」
春風は目の前の断罪官2人に向かってそう宣言した。
「ほう、我らを『邪魔』と言うか」
そう言うウォーレンの瞳には、強い「怒り」が宿っていた。それは、隣にいるルークも同じだった。
今、春風とリアナ、ウォーレンとルークの2組が睨み合い、その場は重い空気に包まれている。結界内のアリシア達と、手当てを受けていた断罪官の隊員達は、ゴクリと固唾を飲んでいた。
その最中、春風はリアナに尋ねる。
「リアナ、行ける?」
「うん。やっと痛みが引いたし、いつでも行けるよ」
リアナは力強く頷きながら答えた。
「わかった。それじゃあ……」
春風は小さな声で、リアナに作戦を伝えた。
リアナはその作戦に、
「うん、わかった」
と頷くと、2人はそれぞれの武器を構え、戦闘態勢を整えた。それに合わせるように、相手も武器を構えた。
睨み合いが暫く続いて、最初に動いたのは、
「行くよ!」
「了解!」
春風達だった。
2人はまず、魔力を体に流して身体能力を強化すると、そのままダッシュで目の前の敵に突っ込んだ。
(速い!)
その後、春風はウォーレンに、リアナはルークに攻撃を仕掛けた。
当然、ウォーレン達は持っている剣でこの攻撃を止めた。
しかし、そんなのはお構いなしと言わんばかりに、2人はさらに攻撃を続けた。
春風の彼岸花による斬撃と、リアナの燃え盛る薔薇による連撃が、容赦なくウォーレンとルークを襲うが、
「「舐めるなぁ!」」
と、このまま黙って攻撃され続けるわけがない2人は、春風達の攻撃を強引に弾き返して、春風達の態勢を崩し、攻撃に転じようとした。
だが、
「チェンジ!」
「「!?」」
と、春風がそう掛け声を上げた。
すると、その声に反応したリアナが、ルークからウォーレンに向かってジャンプし、春風はウォーレンからルークに向かって駆け出した。
その後、
「両剣技、『双刃連撃』!」
リアナはウォーレンに、魔力を纏わせた燃え盛る薔薇による連続斬撃を、
「求めるは“土”、『アース』!」
春風はルークに、土属性の攻撃魔術をくらわせた。
「フンッ!」
ウォーレンは目にも止まらぬ速さで全ての斬撃を打ち消したが、
「グハァッ!」
ルークは腹にアースをくらい、ダメージを受けた。
そこに隙を見出した春風は、ルークの顔面に強烈な飛び蹴りをお見舞いした。
「ぐ……お……」
飛び蹴りをくらったルークはそのまま吹っ飛ばされ、地面に転がると、そのまま意識を失った。
「ルーク!」
「どこ見てんの!」
驚いたウォーレンに攻撃を仕掛けるリアナ。
しかし……。
ガキン!
「な!?」
「調子に乗り過ぎだ」
リアナの一撃を止めたウォーレンは、再び目にも止まらぬ斬撃をリアナにお見舞いした。
「くぅっ!」
リアナは斬撃を少々受けながらもどうにか防御するが、
「フンッ!」
「!?」
ウォーレンの回し蹴りが、リアナに炸裂した。
「がはっ!」
防御出来なかったリアナはその勢いで数回地面にバウンドすると、そのまま地面に突っ伏した。
「リアナ!」
春風は慌ててリアナに駆け寄ろうとするが、
「させんわ」
「ハッ!」
ウォーレンは長剣を左手に持ち変えると、空いた右手で春風に鉄拳をお見舞いした。
「ぐっ!」
春風は咄嗟にそれを防御したが、その衝撃で後ろに吹っ飛ばされた。
なんとか踏ん張る事が出来たが、衝撃が強すぎたのか全身が痺れていた。
「春風様、大丈夫ですか!?」
ガントレットに装着された零号内のジゼルが、中から春風に話しかけた。春風はそれに小声で答える。
「だ、大丈夫です。ジゼルさんは、まだ中にいて下さい」
「ですが!」
「大丈夫です。俺、まだ諦めてませんから」
きっと零号内で心配そうな表情をしてるだろうなと考えながら、春風は笑顔でそう言った。
「春風様……」
そんなやり取りをしていると、何やら明るくなったのを感じた春風が目の前を見ると、そこには手にした長剣を眩く輝かせたウォーレンが立っていた。
ウォーレンは春風を睨むと、静かに口を開く。
「お前達はよくやった。我々をここまで追い込んだのは、お前達が初めてだ。そんなお前達に敬意を表して、私が、この最強の技をもって……殺してやろう」
ウォーレンのその様子から、もの凄い大技が来ると感じた春風。
(うわ、どうしよう。あれ、どう見ても小手先の技や魔術で防げるものじゃないぞぉ)
と、そんな事を考えていると、ふと、ある事を思いついた。
(あ、そうだ。こうゆう時こそ、『あれ』の出番じゃないか)
そう考えた春風は、静かに彼岸花を鞘に収め、いつでもそれを抜き放つ事が出来る態勢をとった。
(は、春風様! まさか!?)
「ぬ?」
突然の春風の行動に、ウォーレンは「?」を浮かべた。それは、他の人達も同様だった。
(! は、春風様!)
しかし、零号内のジゼルは、「それ」が何であるかを知っていた。
そう、春風がとったのは、
(まさか春風様、『居合い切り』をするつもりですか!?)
「居合い切り」の構えだった。
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