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第4章 誕生、ユニークなハンター?
第46話 宿屋「白い風見鶏」
しおりを挟むその後、春風とリアナ屋上を出て受け付けに向かった。目的は当面の活動資金を得るためだ。
ハンターの新規登録した所とは別の部署の受け付けに着くと、2人は今日まで倒した魔物から剥ぎ取った素材を出した。何処から取り出したのかは今後の話の中で説明するので、ここでは省いておく。
暫くすると、2人合わせて1万クルトンになった。この世界ではお金の単位は「クルトン」と呼ばれている事は春風も予め教わっていたので、何も言わず受け入れていた。
そして、手にした1万クルトンを2人で半分に分けると、総本部を出てこれから泊まる宿へと向かった。その頃になると、外は既に夕方になっていた。
「こっちだよハル」
リアナに案内されて辿り着いた場所は、とても頑丈そうな石造りの大きな建物だった。
玄関の扉の上を見上げると、そこには「白い風見鶏」と書かれた看板があった。
「ここがリアナの拠点なの?」
「うん。ベッドの寝心地が良いし、ご飯もとっても美味しいんだ」
リアナは笑顔でそう言うと、扉を開けて中に入った。当然、春風も後を追うように中に入った。
中に入ると、隅々まで掃除が行き届いた綺麗な受け付けが待っていた。
(おお、中も結構立派な造りしてるなぁ)
と、心の中で感心する春風を他所に、リアナは受け付けカウンターに近づいた。
「すみませーん!」
リアナが大声でそう言うと、「はーい!」と言う返事と同時に奥の方から1人の女性が走ってきた。
「いらっしゃいませ……って、リアナじゃないか!」
「はい、レジーナさん。ただいま戻りました」
長い茶髪を後ろで1つに纏めたその女性は、リアナの顔を見て驚いていた。リアナの方は普通に女性の名前を呼んでいた。どうやら2人は知り合いのようだと感じた春風は黙って2人のやり取りを見守る事にした。
「今日の仕事はもう終わったのかい?」
「いえ、今日は仕事じゃなくて、彼を迎えに行ってたんです」
そう言って、リアナは春風の方を振り向いた。
「彼?」
レジーナと呼ばれた女性は、リアナの後ろにいる春風を見ると、
「……そっちのお嬢ちゃん?」
と、思いっきり女の子呼ばわりした。
春風は一瞬「ピキッ!」っとなったが、
「はじめまして、ハルと申します。こ・ん・な顔付きですが、男です」
と、笑顔でそう言った。台詞の一部に怒気が含まれていたが。
「え、そうなのかい!? すまないねぇ、可愛かったもんで、つい……」
レジーナは慌てて謝罪するが、春風は笑顔を崩さずに、
「いえいえ、謝罪の必要はありません。こ・ん・な顔付きの自分がいけないので」
と、レジーナの謝罪を切り捨てた。そしてやはり、台詞の一部に怒気が含まれていた。
リアナは春風から感じる怒りのオーラにオロオロしていたが、すぐに「コホン」と咳き込むと、レジーナに向き直って、
「れ、レジーナさん! 彼のチェックインをお願いします!」
と、春風のチェックインをお願いした。
「あ、ああ、わかったよ。ええと、ハル……で良いのかい?」
「はい、構いません」
「じ、じゃあハル。うちは一泊500クルトンになるけど、取り敢えず何泊する予定だい?」
レジーナの質問に、春風は少しの間考え込むと、
「そうですね……まずは4泊5日でお願いします」
「5日ね。それじゃあ2500クルトンになるけど、払えるかい?」
「はい、大丈夫です」
春風はそう言うと、腰のポーチから2500クルトンを取り出した。
「どうぞ」
「はいよ、確かに受け取ったよ」
レジーナは春風から受け取ったお金を持って奥に引っ込むと、すぐに戻ってきて、
「シェリル! お客さまだよ!」
と、大声で誰かを呼んだ。
すると、
「はーい!」
カウンターの後ろにある階段から、リアナと同い年くらいの少女が降りてきた。
シェリルと呼ばれた少女が降りてきた後、レジーナは春風に向き直って、
「そういや自己紹介がまだだったね。アタシはこの「白い風見鶏」のオーナーをしている、レジーナ・バークリーだよ。で、こっちは娘のシェリル」
「はじめまして、シェリル・バークリーです」
「あ、これはご丁寧に。自分はハルと申します……って、あの、シェリルさん?」
ジーッと見つめるシェリルに、春風は幾つもの「?」を浮かべていると、
「あ、すみません! 可愛らしかったので、てっきり女の子かと思ってしまいました!」
と、シェリルは大慌てでレジーナと同じように謝罪した。
春風は再び「ピキッ!」っとなったが、
「男です」
と、笑顔でそう返した。目は笑っていなかったが……。
「ああ、ほらほら、お客さんを部屋まで案内するんだよ!」
そう言うと、レジーナはシェリルに鍵を渡して、部屋まで案内する様にと指示した。
「あ、うん、わかったよ! さあさあどうぞ、こちらになります!」
シェリルは慌てる様に言って、春風達を部屋に案内した。
(何か、先が思いやられるなぁ……)
春風は心の中でそう呟くと、リアナとシェリルに気づかれない様に、「ハァ」と小さく溜め息を吐くのだった。
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