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第4章 誕生、ユニークなハンター?
第44話 総本部長、登場
しおりを挟む春風とリアナの戦いが終わってすぐ、2人は総本部内のとある一室で、1人の男性と向き合っていた。
そんな状況の中、春風は心の中で呟く。
(どうしてこうなった?)
それは、少し前に遡る。
「ん」
戦いが終わった後、春風は彼岸花を鞘に収めると、座り込んだリアナに手を差し出した。
「あ、ありがと……!?」
リアナは差し出されたその手を取ろうとして顔を上げると、春風の表情には勝利した事への喜びは無く、リアナを見つめるその瞳には、
「くだらない事をした」
という想いが宿っていた。
リアナは春風の顔を見てショックを受けながらも、その手をとって立ち上がった。
「は、ハル……」
リアナが何か言おうとしたその時だった。
「いやぁ、2人とも中々良い勝負でしたよ」
「「!」」
突然の声に驚いた2人が、バッと声がした方に振り向くと、そこにはロングコートをマントの様に羽織る眼鏡をかけたスーツ姿の初老の男性がいた。
「あの、あなたは……」
春風が男性に何者なのか聞こうとすると、
「フレデリック総本部長!」
と、驚いたリアナが声を上げた。
「……ソウホンブチョウ?」
春風はリアナが何を言っているのか理解出来ず、キョトンとした表情で首を傾げた。
すると、初老の男性は春風を見て、
「初めまして。私の名は、フレデリック・レイクロフト。このハンターギルド総本部の総本部長を勤めています。以後よろしく」
と、穏やかな口調で名乗った。
理解した春風は大慌てで、
「す、すみませんでした! 自分は、今日からハンターになりました、ハルと申します!」
と、フレデリックに頭を下げて自己紹介した。ただし、名乗ったのは偽名だが。
「ああ、これはご丁寧に」
そう言って、フレデリックは穏やかな表情を崩さずに周りを見て「ふむ」と頷くと、
「まずは色々と聞きたい事があるのですが、ここではなんですので、2人とも私の部屋でお話をしましょうか」
その後、春風とリアナはフレデリックに連れられて小闘技場を後にし、彼の部屋である「総本部長室」に案内されて、現在に至る。
「なるほど。つまりハルさん、貴方はリアナさんのお父上の友人の息子で、修行してこいと言われてリアナさんの所に送り込まれた、というわけですね」
そして今、その総本部長室で、春風は緊張しながらもそれを表に出さない様に、フレドリックに打ち合わせで決めた自身の「プロフィール」を話した。
「はい。父から『世界を見てこい』と言われて、知り合いの魔術師に転移の魔術で故郷からここまで飛ばされてきました」
「ふむ、そうですか。因みに、剣術は誰から習いました?」
「はい。父の知り合いに剣術の使い手がいますので、その人に習いました」
「ほう、そうでしたか」
春風の説明に納得したフレデリックは、用意された紅茶を一口飲むと、
「それでハルさん、貴方の今後の予定はどうしてますか?」
と質問した。
「はい。取り敢えず、今日は近くの宿に泊まって、明日からハンターとしての仕事を開始する予定です。ああ、勿論、ここに来るまでに魔物を倒しましたので、入手した素材を売ってからですけども」
春風はハハハと苦笑いしながらもハッキリとそう言うと、フレデリックは「わかりました」と言って立ち上がり、春風の前に立って、
「改めて、ようこそシャーサルへ。ハンターギルド総本部長として、私は貴方を歓迎します」
と、右手を差し出した。
春風はそれを見て、
「こちらこそ、よろしくお願いします」
と、その手を掴んだ。
すると、フレデリックは顔を春風に近づけると、リアナに聞こえないように、
「本当の事を話したくなったら、何時でも来て下さい。私、楽しみに待っておりますので」
と、小声で言った。
その言葉に、春風はフレデリックの顔を見て、
(まさか……な?)
と、引き攣った笑みを浮かべながら、心の中で呟いた。
因みに、リアナは春風の後で「?」を浮かべて、首を傾げていた。
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