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第4章 誕生、ユニークなハンター?
第42話 どうしてこうなった!?
しおりを挟む(何故だ? 何故こうなったんだ!?)
と、心の中でそう叫ぶ春風は今、小闘技場の舞台の上で、リアナと対峙していた。
「ええっと、リアナさん。何がどうしてこうなってるのか全然理解出来ないんですけど?」
いきなりの展開に、思わず敬語になってしまった春風。そんな春風を前に、リアナは真剣な表情を崩さずに言う。
「心配しないで春風。これは腕試し模擬試合みたいなものだから」
「はぁ、そうですか……じゃなくって! 何で俺、リアナと戦う事になってるんだ!?」
「言ったでしょ、『腕試し』だって。ああ、因みにこの『小闘技台』には特別な術式が施されていて、多少の怪我もすぐに治してくれるから、大丈夫だよ」
「はぁ、そうですか……って、そういう問題じゃないだろ!?」
「というわけで、職員さーん審判お願いします」
「コラァ、無視すんな!」
春風の突っ込みを他所に、審判役の職員が小闘技台に上がる。
「おいコラ! アンタも上がるんかい!?」
職員は春風の突っ込みを無視して、春風とリアナの間に立つ。
(えぇ? 無視? アンタも無視すんの?)
職員の態度に、春風はちょっと泣きそうになった。
そんなやり取りをしていると、何やら周囲が騒がしくなり、春風は「何だ何だ?」と見回すと、
(うわぁっ! 何か人集まってんですけど!?)
そう、いつの間にか小闘技台の周りには沢山の人ーー先輩ハンターらしき人達やギルドの職員が集まっていたのだ。彼等は全員、小闘技場に立つ春風達を好奇心に満ちた眼で見ていた。
(や、やばい。これ、絶対逃げちゃいけないやつだ)
表情にこそ出さないが、内心ではビビりまくりの春風。
いっその事、スキルを使って逃げようかとも考えていたが、場の雰囲気的にそんな事をしたら、後でどんな被害に遭うかわからないし、何より目の前のリアナに多大な迷惑をかけてしまうのではないかと思い、やめておこうと考えた。
その後、観念した春風は「ハァ」と溜め息を吐き、リアナに向き直って話しかける。
「あのさ、リアナ」
「? なあに?」
「この模擬試合ってさ、スキルや技とかの使用はありなの?」
「うん。ありだよ」
「そう……」
リアナの答えを聞いた春風は、目を閉じて深呼吸する。
(大丈夫。俺もあれからレベルを上げたんだ)
リアナと別れてから1週間の間、春風は精霊王達の指導の下で、ログハウス周辺の魔物を倒してレベルを上げていった。
現在の春風のレベルは25で、まだリアナのレベルには届かないが、それでもこの世界に来たばかりの頃よりは強くなっている。最も、春風自身はまだ足りないと思っているが。
春風は心の中で、自身に言い聞かせる。
(落ち着け、落ち着くんだ春風。多分お前が今やるべき事は、今の自分の『強さ』を思いっきりぶつける事なんじゃないのか? 目の前にいるリアナも、それを望んでいるんじゃないのか? だったら……)
「かっこ悪いとこ、見せちゃあいけねぇよなぁ」
ボソリとそう呟くと、左手で腰のベルトに下げた刀ーー彼岸花の鞘を押さえて、右手でその柄を握った。
(ぐっ!)
すると、春風は右腕と彼岸花が繋がった感覚に襲われた。感覚は右腕の中を通って右目に届く。そして届いたと言わんばかりに、右目が熱くなっていくのを感じた。
やがて、感覚が収まったのを感じると、春風はゆっくり両目を開けて、スラリと彼岸花を鞘から抜いた。
『おおっ!』
真紅に染まった反りのある片刃の刀身に、周囲の人達の視線が突き刺さる。
「何だありゃ?」
「真っ赤な刀身?」
「綺麗だけど……何か、怖い」
と、周囲からそんな声が聞こえてきたが、春風は気にせずにリアナに向かって彼岸花を構えた。
リアナはそんな春風の雰囲気に一瞬のまれそうになったが、すぐに気を持ち直して、燃え盛る薔薇を構え直した。
春風の持つ真紅の刀と、リアナの持つ2つの銀色の刃が、ギラリと煌めいていた。
2人の間に緊張が走る。
周囲の人達だけじゃなく、審判役の職員も、場の雰囲気にゴクリと固唾を飲む。それと同時に顔から一筋の汗がツーっと垂れ、ポタリと下に落ちる。
しかし、職員はそれでも役目を果たそうと右腕を振り上げて、
「それでは、両者、始め!」
と叫び、勢い良く振り下ろした。
次の瞬間、2人は同時に動き出し……。
ーーガキィン!
刃と刃をぶつけた。
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