ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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間章

間話2 残された者達(王族編)

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 それは、「勇者召喚」の儀式が行われた、その日の夜のことだった。

 召喚された「勇者」達がそれぞれの思いに耽る中、セイクリア王国の国王ウィルフレッドは、疲れ切った表情で自身の寝室のベッドに座って、

 「ハァ……」

 と、溜め息を吐いていた。

 何故ここまで疲れ切っているのか?

 そうなった原因は1つである。

 幸村春風。

 召喚された「勇者」達の中で、唯一「選ばれし勇者」の称号を持たず、こちらの救いの願いを拒否して、騎士を相手に大暴れした後、リアナというハンターの少女と共に外へと飛び出した少年だ。

 その一件の所為か、ウィルフレッドは精神的にショックを受け、食事も僅かしかとらないという状態にまでなってしまい、今もそのショックから立ち直れないでいた。

 「どうして、こうなってしまったんだ?」

 今にも消えてしまいそうな表情でそう呟いていると、トントンと寝室のドアをノックする音がした。

 「私です」

 「! ああ、入ってくれ」

 ガチャリとドアを開けて入ってきたのは、ウィルフレッドの妻である王妃マーガレットだった。マーガレットは寝室に入ると、ウィルフレッドが座っているベッドに近づき、彼の隣に座った。

 「昼間の事を考えていたのですか?」
 
 マーガレットは穏やかな表情でウィルフレッドにそう質問すると、

 「……うむ」

 と、ウィルフレッドは弱々しく答えた。

 暫く沈黙していると、ウィルフレッドが口を開いた。

 「『自分達の為に戦って死ねなんて言うコイツらが気に食わないし信用出来ない』」

 「? それは?」

 「昼間、あの少年が言った言葉だ」

 「!」

 「……言えなかった」

 「……何をですか?」

 「『そんなつもりは無い』と、言えなかった」

 そう言って、ウィルフレッドはグッと左右の拳を握り締めて、悔しそうな顔をした。

 マーガレットはソッとその拳に触れると、

 「でしたら、もう1度会った時に、ちゃんと言いましょう?」

 と、笑顔で優しく言った。

 「! ああ、そうだな」

 その言葉に、ウィルフレッドは握り締めた拳を解いて、そう決意した。

 しばしの沈黙後、今度はマーガレットが口を開いた。

 「それにしても……」

 「? どうした?」

 「彼、物凄い少年でしたね」

 「どういう意味だ?」

 「昼間の彼の、あの

 「! ああ、あれか」

 その言葉を聞いて、ウィルフレッドは春風から受けたあの暴言を思い出した。

 「あれは強烈だったな」

 「ええ、本当に殴られたかの様な感覚でしたわね。ただ……」

 「? ただ、何だ?」

 ウィルフレッドに問われると、マーガレットは顔を赤くして、

 「ちょっと……キュンとなってしまいましたわ」

 と、恥ずかしそうに言った。

 どうやら、目覚めてはいけない「何か」に目覚めてしまった様だ。

 「何!? そうなのか!?」

 マーガレットのとんでもない答えに、ウィルフレッドは驚きのあまり声を荒げた。
 
 この時、もし彼がだったら、

 「おのれ幸村春風、許さんぞ!」

 と、春風に対して怒りの炎を燃やすだろう。

 だが、

 「……実は私もなんだ」

 「まぁ!」

 どうやら、国王様も、目覚めてはいけない「何か」に目覚めてしまった様だった。

 所変わって、国王の寝室から離れた位置にある部屋では、その部屋の主である第2王女のイブリーヌが、

 「ハァ……」

 と、溜め息を吐きながら、ベッドの中で考え事をしていた。

 (あのお方、『春風』っていいましたっけ)

 考えていたのは、謁見の間で見た少年、春風の事だった。

 (あの戦いぶり、すごく綺麗だったなぁ)

 イブリーヌは、昼間騎士を相手に戦った春風を思い出し、その戦いぶりに、「美しいもの」を感じていた。

 (それに、お父様とお母様を相手にあの物言い)

 そして、その戦いの前の、春風の3回に渡る暴言を思い出して、

 「ちょっと、キュンとなってしまいました」

 そう口に出し、イブリーヌは顔が熱くなるのを感じた。

 どうやら、第2王女様も、目覚めてはいけない「何か」に目覚めてしまった様だった。

 さらに所変わって、イブリーヌの部屋から少し離れた位置にある部屋では、

 「おのれ、幸村春風!」

 と、部屋の主である第1王女クラリッサが、1人、春風に対して怒りの炎を燃やしていた。

 「よくも、この私だけでなく、お父様、お母様、そして可愛いイブリーヌにまであんな暴言を! そして、騎士や魔術師達にあんな暴力を! 挙げ句の果てに仲間で「勇者」様達を置いてここを去るなんて!」

 そう叫んで、クラリッサは部屋に置かれた小さなテーブルをバンバン叩いた。

 「許せない! 絶対に、許せないぃ!」

 どうやら、なのはクラリッサだけの様だった。
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