【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね？

第三章・伯爵家当主マリン

37・ロテシュ改革

　あれから、相当渋るミシェルを説き伏せてロテシュ伯爵家に帰って来た。
　約一年半ぶりに帰ってみると、ギルフォード公爵家とは違って凄く居心地が悪い…
　僕は、公爵家がすっかりと自分の家になっていたのだと気が付いた。

　この先あの家に帰ることはあるのだろうか…？
　少し不安にはなるけど、取り敢えずはロテシュ伯爵家を何とかするのが急務だから！そう思って頑張るしかない。

　父と兄の葬儀をきちんと終わらせてから、屋敷の使用人達を集めた。
　この家に居たのは一年ほどだけど、その時親切にしてくれたのはオリヴァー一人。
　父と兄が怖かったのかもしれないが、もう少し人情味があってもいいんじゃないか？って思った。それで…

　「皆さん、集まっていただいてありがとうございます。これからこのロテシュ伯爵家は、この僕が当主になります。」
　そう伝えて、ここに居る人達を一人一人見た。

　真剣に聞いている人、不安になっている人、自分とは関係ないと思っている人、明らかに僕を馬鹿にしている人、お前を当主とは認めない！と思っている人、いろいろだ。

　僕はいろいろいて当たり前だと思っている。

　使用人だって、父や兄がこんなに呆気なく死ぬとは思ってなかっただろう。僕だってそうだ。
　二人共嫌いだったけど、死んで欲しいとは思っていなかった。今度関わりたくないな？って思っていただけで、死んで欲しいほど恨んでもいなかったし。

　だけど二人が居ない今、この家をどうにかしなくちゃならない。それにはこの人達の力も必要になって来ると思う。

　以前の確執は忘れてもいいけど、これからは僕に従ってもらわないといけないんだ。
　以前のマリンなら冷ややかな皆んなの視線で諦めていたかも知れないし、馬鹿にされたままだったかも知れない。

　──だけど僕は、マリンであり宮崎海人だ！以前のマリンだと思ってもらっちゃ困るよ？

　「皆さんが困惑される気持ちも良く分かります。だけど敢えて言っておきます。僕が伯爵になる事に反対な人はここを去って下さい。それに僕に協力出来ない人も。その場合はもちろん退職金をお支払いします。それも二倍支給しますね！それぞれ自由に決めていただいて結構ですよ？お引き止めはしませんから。」

　この場に居る人達は騒然とする。そりゃそうだよね？
　どのくらいの人が僕に付いてきてくれるのか分からないけど、非協力的な人はいても迷惑だ。
　
　退職金を二倍…それに惹かれて辞める人は、そもそもやる気がないだろう。
　目先の事だけで決めずに、二倍ならこのまま働いてたらもっと貰える？って思わなきゃ！そういう人材求む！！

　先程、僕にいい感情を向けてなかった人は案の定退職する事になった。
　残った人の中には迷った人もいると思うけど、これからロテシュ伯爵家の改革の為に一緒に頑張ってくれればそれでいい。

　僕はそれから一人一人面接をして、希望を聞いたりそれぞれの適性を判断したり忙しく過ごす。
　
　──もちろんオリヴァーは、当主付き侍従長に抜擢だよ！

　ほんの少しずつだけど、「新生ロテシュ」始動し始めてます！

　少し落ち着いてから、僕をロテシュ伯爵家の当主として任命して貰う為に城に向かった。
　直接王様から任命の書状を受け取るらしいんだけど、会うのはもちろん見るのも初めてで。
　
　──ちょっと緊張しちゃうけど、その後レオ殿下のところにも行っちゃおうかな～！

　僕は城に行ったついでに、乃恵留に会ってこれからのことを相談したいと思った。　

　だけど…この判断が、さらなる混乱を招くなんて思ってもいなかったんだ。