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第一章・僕が公爵家に居るワケ

3・僕の運命

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 ──ん?やっぱり僕のお尻見えちゃって嫌だったの?

 僕はお尻をチラッと見ながら自分でヒップラインをなぞってみる。
 プリッと上がってるし悪くないよね?って思った。
 ツルリとして綺麗だと思うけど…見苦しいものでもない筈なんだけどなぁ~。
 
 違うとすれば…胸か!?って、パジャマの襟元を引っ張って覗こうとすると…

 「先ほどから何をやってるんですか!君は他にやる事があると思いませんか?特に私にです!」

 ──えっ…何だろう?やる事だって?

 僕はう~ん?…と考えてみたけど何も思い当たらない。
 この臭い匂いを何とかする他に何があるってーんだ?

 「私に謝るべきだと思いませんか?あなた死ぬところだったんですよ?」
 そんな僕に痺れを切らしたミシェルが堪らずそう言った。

 ──確かに…この公爵家で僕が死んだとしたら、責任を問われるのはミシェルだろう。
 ミシェルの父であるグランバード公爵は領地の方に行っていて不在だ。
 となると何かあった場合はミシェルの責任になるだろうな?

 ──もしかして、賠償問題とかになるんだろうか?まだ婚約者なだけで結婚していないし。
 あの父…ロテシュ伯爵なら言い出しかねない。

 うん!それは迷惑掛けるところだったな。謝るべき案件だ!

 「すみませんでした。とんだご迷惑をお掛けするところでしたね。ん?でも何で池に落ちたんだったっけ?」

 そう言えば、池に落ちた経緯いきさつの記憶がない…
 て言うか、前世を思い出してから今世の記憶が曖昧で。
 もちろん記憶喪失じゃあるまいし、全く分からない訳じゃない。でも…意識の主導権は前世である宮崎海人なんだと思う。
 考え方も行動も海人になっている気がする。

 そう思って、目の前の憮然とした表情をしているミシェルをじっと見つめる。

 あぁ~少し前までの僕に教えたかったな。無駄な努力はするな!って。
 そう思って、この公爵家に来てからの…って言うか、あの諸悪しょあく根源こんげんロテシュ伯爵家に引き取られてからの事を思い出していた──。


 僕は14歳まで自分は平民で貴族とは縁もゆかりも無いと思っていた。
 母子家庭で、ここから馬車で半日くらいの所にあるルンダ村で母と二人で慎ましく生活して…
 そんな僕達の貧しくても幸せな生活が流行り病によって突然崩れることになる。
 母が亡くなったのだ…

 僕はこれからどうしたら…って途方に暮れたけど、周りの人達に助けられながら何とか自分一人分の扶持ぶちを稼ぎながら生活していた。

 そんな時、ロテシュ伯爵家の執事だと名乗る人物が現れる。
 聞けば、僕はロテシュ伯爵の隠し子だと言う事で…

 母は元々ロテシュ家のメイドで、伯爵に見初みそめられて妾になったらしい。
 でも本妻から目の敵にされ、僅かばかりの手切れ金を渡されて伯爵家から出たそうだ。
 そして、その後妊娠に気付いて僕を産む…というお決まりのパターンで。

 最近になって僕の存在を知った伯爵は、引き取りたいと執事を僕のところにつかわした。

 僕は母を亡くしたばかりのまだまだ子供で、寂しかったんだろうな?そんな言葉にまんまと乗せられて!
 よく考えたら、そんなに引き取りたかったなら執事に任せてずに本人が来るべきだよね?

 喜んで伯爵家に行ったら、父も兄だという人も使用人達も何もかもが冷たくて…
 僕を好きになって欲しい!認めて欲しい!って、言われるがまま貴族としてのあらゆる勉強をして。何と一年で!

 僕は元々、頭は良かったらしい。今思えば無意識に前世の記憶が役に立ったのかも知れないね?
 高校生だった僕は、勉強するといった環境に慣れていたし、計算などの生活に役立つものは既に自分のものにしていて。

 こうして、たった一年で貴族の令息として可怪しくない程度になった僕を目の前にして、ロテシュ伯爵は言い放つ。

 「マリン、お前は公爵家嫡男のミシェル・グランバードと結婚しろ!その為にこの家に引き取ったんだからな?この平民が!有り難くも公爵家に入るんだぞ。生きている間はこの私に感謝して言う事を聞くんだ。まずはミシェルを自分のものにしろ?お前は容姿しか取り柄がないんだから上手くやるようにな!」

 僕は父が言っている事が理解出来なかった。

 ──公爵家の嫡男と結婚する?
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