お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO

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第二章・王都学園にて

9・伝説のルート

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 「よぉ、エリオット!今日も散歩かい?」

 その声に振り向くと、坊ちゃまの同級生スチュワート・グレイ様の従者であるトムさんが、ニコニコとしながら近付いて来るのが見える。それに笑顔で手を振る僕。
 トムさんは侯爵家の使用人。だから同じ貴族家に仕える者同士、仲良くしてもらっている。そしてもう一つ言うなら…トムさんの仕えるスチュワート様もまた、攻略対象っていうわけ。だからって意識的に近付いた訳じゃないよ?

 「そうなんです。仕事が一段落したので、今の内に散歩しちゃおうって。それにしてもトムさん…重そうですね?」

 見ると、分厚い本を沢山持っている。僕と違って上背があり筋肉隆々のトムさんは、まるでトレーニングかのように両肩それぞれ本を担いでいた。あのムキムキな上腕三頭筋…ポ◯イかな~?
 だけどこれだけの量を一度に運ぶのは、流石に大変そうだ。それで…

 「良かったら、僕も手伝いますよ。どこに持っていくんです?スチュワート様のお部屋でしょうか」

 それにトムさんは、助かった!とばかりに満面の笑みを浮かべて、僕は両肩に乗った本をそれぞれ一冊づつ受け取った。非力な僕だからそれで精一杯…イマイチ役に立っているとは言えないけど勘弁して欲しい!
 ヨイショとしっかりと抱えたところでふと気付くと、トムさんは困った顔をしている。それに、おや?と顔を向けると…

 「学園内の図書室まで持って来いって言うんだ。スチュアート様って、人使いが荒いんだよね。あっ、許可は取ってあるから大丈夫だよ?エリオットは初めてかな。学園の中に入るのは」

 ──ええーっ、神ぃ~

 それに感謝感激!実は僕、坊ちゃまの入学式の時に一度だけ学園内に入っている。坊ちゃまのご両親が来られなかった為に、スミンさんと二人で入学式を見守らせていただいたんだ。役得~!って喜んだけど、公爵様と奥様は何故来ていただけないんだろうと僕は憤った。高位貴族なんてそんなもんなんだろうか?公爵様はいつだって仕事が忙しく、奥様はお茶会や何やとお出掛けしてばかりだ。あの時はもっと坊ちゃまを構って差し上げればいいのにと悲しくなってしまって…
 うっ!思い出すと複雑な気持ちになっちゃう~だからそれは一旦置いといて!
 
 結局、それ以降学園に入ることは一切無かったから無茶苦茶嬉しい~!坊ちゃまって完璧だからさ、忘れ物とかしてくれないんだよね。これほど大手を振って学園に入れるチャンス、なかなかないから!

 「僕は一度しか入ったことがないんです。それも入学式の時だけなので、普段坊ちゃまがお使いになっている図書室なんて初めてですっ!」

 そう言いながら僕は、また違うことも考えていた。それは…図書室は重要なイベント発生場所なんだよね。それもスチュワートルートの!
 
 スチュワート・グレイは、いわゆるガリ勉キャラだ。
 元は良いものを持っているのに、それに自分では一切気付いてはいない。分厚い眼鏡を掛けて、勉強しか興味を示さないその態度は、大抵の令嬢令息から敬遠されているだろう。だけどね…スチュワートルートは『君恋』ファンからは、伝説のルートと呼ばれているんだよ?
 
 まず、すっかりジュリアス色に染められたスチュワートが超絶イケメンになる…それはもうマジック!あの地味な子が?ってビックリだよね~。眼鏡を取ったらイケメンなんて、ベタっちゃベタだけどさ。
 それからジュリアスに愛されることで自信を付けたスチュワートは、優秀な成績で卒業してその頭脳をかわれ、何と宰相補佐に大抜擢!もうこの国の将来の宰相は、スチュワートで決まりでしょ!
 だけど…攻略の難しさでもよく知られているんだ。ちょっとへそ曲げたら、元のガリ勉に戻っちゃうからね?気難しいったらありゃしないの…
 だからスチュワートを間近で見れるチャンスなんて有り得ない!楽しみ~

 そんなこんなで学園の正面玄関までやって来た僕達は、受付で図書室まで行きたい旨を告げて『グレイ侯爵家使用人』と書かれた簡易の名札を胸に付け、学園の中を歩きはじめた。僕は式典があった講堂以外は初めてで、キョロキョロと見渡すのを止められない。

 「エリオット、こっちだよ!この通路をずっと端まで進んだ先に、図書室はあるんだ」

 僕はウンウン頷いて、トムの後ろに慌てて駆け寄る。どうやらトムは、何度も訪れたことがあるらしく、まるで通っている生徒のように迷いなく歩いて行く。その逞しい背中を見ながら僕は思った。苦労してるんだねぇ…

 ──こんなに学園内を熟知してるほど呼び出されているって、何ごとよ?スチュワートめぇ!

 甘ったれんなよ?と心の中で呟いて、そんな性格なのに本当に超絶イケメンになる?と疑いだした。イケメンってさ、見た目だけじゃないのよ?心もイケメンじゃなきゃね。あーあ、そろそろ腕が痛くなってきたな…本が分厚過ぎるっ!

 そうこうしているうちに、遠くに図書室らしい部屋が見えて来た。中にスチュワートが居るのかな?と思いながら、もう少しだ!と駆け足ぎみで進むと…

 「何をしてるんだ?」

 ヒヤッと震える…芯から凍えるような冷ややかな声。これまで聞いたことが無いような、そんな声が…
 まさか?と僕は、恐る恐るその声の方へと振り返る。すると…

 「へーぇ、エリオットって、グレイ侯爵家の使用人なんだ?」

 ──ぼ、坊ちゃま!なんでいつもマズい所を見つかっちゃうのー!

 こんな所でまさか坊ちゃまに会ってしまうなんて…
 自慢じゃないが、今まで僕は坊ちゃまから本気のお叱りを受けたことはない。いつもあの調子なので、嫌味かな?と思うことはあれど、こんなに冷ややかな表情で見つめられたのは初めて!どうしたらいいの?

 
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