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第二章・王都学園にて
10・逆鱗に触れる
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僕って、何でマズいところをいつも見られちゃうんだろ?
僕だってグレイ侯爵家使用人と書かれた名札を付ける時は躊躇したよ?だけどさ、こんなに広い学内なんだから坊ちゃまに見られることは無いだろう?って思ったよねぇ…
「すみません坊ちゃま。今日はお手伝いをしています。ほんの小一時間ほどですからお許し下さい!」
僕は素直に謝った。そんな名札を付けて、エドモア公爵家の使用人としての自覚がないんじゃないのか!とのお叱りを受けても仕方が無い。坊ちゃまの攻略対象の一人を見たかった…なんて言えないし。くはあっ!弱ったな…
それから坊ちゃまを見ると少しだけ冷たい表情を崩して、またまたプクッと膨れっ面をしている。だからそれ、可愛いんだって~
「申し訳ありません!私がエリオットに頼んだのです。沢山の本を運ばなければならなかったので…」
トムがジュリアス様の憤慨に、流石にマズい!と思ったようで機転を利かせてそう謝ってくれた。本当は僕から手伝うって言ったんだけどね…
坊ちゃまはそのまま無言で僕とトムの顔を繰り返しチラチラと見てから、それからフゥーと溜息を吐いた。
「ふーん…そうか。ところで君は、スチュワート令息の従者だよね?何度も学内で見掛けたことがある。そんなに度々用事があるものなのかい?それも今回はそんなに沢山持って…」
坊ちゃまは目を細めて、訝しげにトムの肩の上の山積みの本を見られた。トムはと言えば、自分の主人よりも格上で美しいと評判な坊ちゃまを前にして、どう答えたら…とシドロモドロになっていた。
そんなトムの様子をじっと見ていた坊ちゃまは何故か、ヨシ!と突然声を上げる。
──えっ…坊ちゃま?
坊ちゃまは、クルリと踵を返して図書室の扉をバン!と開け放った。そして…
中へとカツカツ!と足音を響かせなから入られると、廊下が何やら騒がしいことに気付いて驚きの表情していたスチュワート様と僕達は目が合った。
「えっ、ジュリアス令息…それにトムかい?」
何ごとかと目を丸くしているスチュワート様に対して、坊ちゃまは表情も変えることなく無言だった。そして、僕が持っている分厚い本をむんずと掴んで、スチュワートめがけて投げ付けた!
「あ、危なーい!」
僕らの悲鳴に似た叫びにも怯むことなく、坊ちゃまはもう一冊を僕から奪うと更に勢いよく投げ付ける。
──ああーっ、ヤメてぇ~どうしちゃったの?坊ちゃま…
僕は坊ちゃまの予想外の行動におっかなびっくりで、相当怒らせちゃったんだ!?とビビリ散らしていた。
スチュワート様はドッチボールよろしく華麗に避けて、当たってはいないがガタガタと震えているご様子で…
それから坊ちゃまはトムさんの方を、見たこともない三白眼でギロリと睨む。これはヤバいぞ…トムさんの持っている本も投げる気だ!
だけどこれ以上投げたら、流石に当たってしまう~流血の惨事か…?
──ぎゅーっ!
咄嗟に僕は、坊ちゃまの身体をぎゅっと抱きしめた。これ以上やったら坊ちゃまが学園側から罰せられることになるかも知れない。僕がこんなところまでやって来た為に、坊ちゃまがそのような目に合うなど、あってはならない!その一心で。そして…
「ぼ、坊ちゃま!気を落ち着かせて下さいませんか?僕が一番悪いのです…坊ちゃまがお使いになられている図書室を、ひと目だけでも見てみたいと思ってしまったのです!僕の坊ちゃま愛が強すぎるのが悪いんです~」
伝われ!僕の心…そう思って一生懸命叫んだ。叱られるかも?だけど、ぎゅうぎゅうと坊ちゃまを抱きしめ続けながら…
ふと気付くと、ガチガチに硬かった坊ちゃまの身体の力が抜けていた。やったのか?赦していただけたのかな?
そう思って、坊ちゃまの胸にスリスリしていた頬を離して前を見た。すると、少し離れた所に立っていたスチュワート様とトムは、ポカンと口を開けたままこちらを見ていた。えっ…もしもし、口開いたままですよ?
僕の言葉に感動…とは違うのかな。なんだか、心ここにあらず…ってぇの?不思議な表情をしている。なんだよ?人の一世一代の告白をさぁ~
だけど待てよ…僕を見ているというより、坊ちゃまを見ているのかな?えっ…
僕はバッと坊ちゃまの顔を見上げた。もちろん抱きついたままだ…こんなチャンス、早々とは手放さないでしょ?頭一個分高い筈の坊ちゃまの背は、いつの間にかもっと高くなっていて、見上げるとスッとした顎先しか見えない。それでも分かった…坊ちゃまのお顔が真っ赤になっているのを。うん?
僕だってグレイ侯爵家使用人と書かれた名札を付ける時は躊躇したよ?だけどさ、こんなに広い学内なんだから坊ちゃまに見られることは無いだろう?って思ったよねぇ…
「すみません坊ちゃま。今日はお手伝いをしています。ほんの小一時間ほどですからお許し下さい!」
僕は素直に謝った。そんな名札を付けて、エドモア公爵家の使用人としての自覚がないんじゃないのか!とのお叱りを受けても仕方が無い。坊ちゃまの攻略対象の一人を見たかった…なんて言えないし。くはあっ!弱ったな…
それから坊ちゃまを見ると少しだけ冷たい表情を崩して、またまたプクッと膨れっ面をしている。だからそれ、可愛いんだって~
「申し訳ありません!私がエリオットに頼んだのです。沢山の本を運ばなければならなかったので…」
トムがジュリアス様の憤慨に、流石にマズい!と思ったようで機転を利かせてそう謝ってくれた。本当は僕から手伝うって言ったんだけどね…
坊ちゃまはそのまま無言で僕とトムの顔を繰り返しチラチラと見てから、それからフゥーと溜息を吐いた。
「ふーん…そうか。ところで君は、スチュワート令息の従者だよね?何度も学内で見掛けたことがある。そんなに度々用事があるものなのかい?それも今回はそんなに沢山持って…」
坊ちゃまは目を細めて、訝しげにトムの肩の上の山積みの本を見られた。トムはと言えば、自分の主人よりも格上で美しいと評判な坊ちゃまを前にして、どう答えたら…とシドロモドロになっていた。
そんなトムの様子をじっと見ていた坊ちゃまは何故か、ヨシ!と突然声を上げる。
──えっ…坊ちゃま?
坊ちゃまは、クルリと踵を返して図書室の扉をバン!と開け放った。そして…
中へとカツカツ!と足音を響かせなから入られると、廊下が何やら騒がしいことに気付いて驚きの表情していたスチュワート様と僕達は目が合った。
「えっ、ジュリアス令息…それにトムかい?」
何ごとかと目を丸くしているスチュワート様に対して、坊ちゃまは表情も変えることなく無言だった。そして、僕が持っている分厚い本をむんずと掴んで、スチュワートめがけて投げ付けた!
「あ、危なーい!」
僕らの悲鳴に似た叫びにも怯むことなく、坊ちゃまはもう一冊を僕から奪うと更に勢いよく投げ付ける。
──ああーっ、ヤメてぇ~どうしちゃったの?坊ちゃま…
僕は坊ちゃまの予想外の行動におっかなびっくりで、相当怒らせちゃったんだ!?とビビリ散らしていた。
スチュワート様はドッチボールよろしく華麗に避けて、当たってはいないがガタガタと震えているご様子で…
それから坊ちゃまはトムさんの方を、見たこともない三白眼でギロリと睨む。これはヤバいぞ…トムさんの持っている本も投げる気だ!
だけどこれ以上投げたら、流石に当たってしまう~流血の惨事か…?
──ぎゅーっ!
咄嗟に僕は、坊ちゃまの身体をぎゅっと抱きしめた。これ以上やったら坊ちゃまが学園側から罰せられることになるかも知れない。僕がこんなところまでやって来た為に、坊ちゃまがそのような目に合うなど、あってはならない!その一心で。そして…
「ぼ、坊ちゃま!気を落ち着かせて下さいませんか?僕が一番悪いのです…坊ちゃまがお使いになられている図書室を、ひと目だけでも見てみたいと思ってしまったのです!僕の坊ちゃま愛が強すぎるのが悪いんです~」
伝われ!僕の心…そう思って一生懸命叫んだ。叱られるかも?だけど、ぎゅうぎゅうと坊ちゃまを抱きしめ続けながら…
ふと気付くと、ガチガチに硬かった坊ちゃまの身体の力が抜けていた。やったのか?赦していただけたのかな?
そう思って、坊ちゃまの胸にスリスリしていた頬を離して前を見た。すると、少し離れた所に立っていたスチュワート様とトムは、ポカンと口を開けたままこちらを見ていた。えっ…もしもし、口開いたままですよ?
僕の言葉に感動…とは違うのかな。なんだか、心ここにあらず…ってぇの?不思議な表情をしている。なんだよ?人の一世一代の告白をさぁ~
だけど待てよ…僕を見ているというより、坊ちゃまを見ているのかな?えっ…
僕はバッと坊ちゃまの顔を見上げた。もちろん抱きついたままだ…こんなチャンス、早々とは手放さないでしょ?頭一個分高い筈の坊ちゃまの背は、いつの間にかもっと高くなっていて、見上げるとスッとした顎先しか見えない。それでも分かった…坊ちゃまのお顔が真っ赤になっているのを。うん?
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