26 / 41
転生幼児は友達100人は作れない13
しおりを挟む
「!!!」
躊躇なく差し出されたきのこを口に含んだ私を見て、タウカは微笑みながら目を潤ませた。
「ティカ、よーく聞いてくれ」
「? うん」
「ティカは俺が用意した食い物は何でも食べてくれるいい子だ。俺は好き嫌いしないティカが誇らしいし、大好きだ!」
「うん! 私もお父さん大好き!」
今世の父に言葉で好きだと言ってもらえて、嬉しくてニコニコしてしまう。
「ありがとうな、でも!」
タウカは唐突に私の手を掴んだ。
「俺以外の誰かに食べ物を差し出されてもすぐ口に入れたら駄目だぞ!」
「うん、分かった」
私はこう見えても精神は成人なのだ。目の前で喋っている大人達の会話をちゃんと理解している。「あーん」は家族以外としたら恥ずかしいことだ、とちゃんと理解した。
「それから、自分が口をつけたものを誰かにあげるのも駄目だ!」
「う、ん?」
「もちろん誰かの食べかけをもらうのも駄目だぞ! 求婚を受け入れたことになるからな!」
「あの、お父さん、私……もう何度も友達と食べ物わけあってるけど……」
私達、三の村の子供達は五人しかいないので仲良しなのだ。美味しいものはみんなで分け合うのが習慣のようになっている。
その樣を子供当番に咎められることも、みんなの父親達を慌てさせることも無かったのに。
タウカは私の手を掴んだまま首を横に振る。
「分け合うのは良いんだ。半分こもいい。でも食べかけをあげるのは駄目だ! 特に口をつけたところを相手に食べさせるのは本当に駄目だ!」
虫歯菌云々の話ではないのは流れ的に察した。
「"貴方の毒見を一生したい"って意味に取られて、結婚の申し込みだと思われるからな!」
人に食い止しをあげたらプロポーズになるとは。
小さな友人たちとは、甘い花の蜜が吸えるツツジみたいな花を回し吸いしたりしている。これがプロポーズになるなら困ったものだ。しかし私達はまだ幼気な子供だ。恋愛感情など毛ほども芽生えていない。これはノーカンだ。
子供当番にタウカお手製粽の食べかけをあげたとき、なんとも言い難い表情で見られた理由が今わかった。
私は知らぬ間にプロポーズをしてしまっていたらしい。
しかし私は幼児なので、彼等にとっても意味をなさなかったはずだ。あれもノーカンになると思う。
「わかったよ、お父さん!」
友人達が食べかけを分け合いっこするのを止める気は無いが、慣習を知った私は今後気を付けていこうと思う。
友人達の恋の当て馬になるのは本望だが、わざわざ黒歴史を作りまくらなくても、数多あるBL本を嗜んだ私だ。そんな自虐行為をしなくても立派な当て馬になれるはずだ。
大きく頷いて見せた私に、タウカは真剣な顔で続けた。
「それから! 絶対人前で裸を見せるんじゃないぞ!」
ギクリとした。
男性らしからぬ私の体を晒してはいけないことはわかっていたが、既に上半身はイレインス達に見られてしまっている。
タウカの言い付けを破ってしまっているのだが、大事な下半身はまだ誰にも見られていない。それならばギリギリセーフのはずだ。これもノーカンに入るだろう。
「わ、わかってるよ!」
何度も頷く私を見て、タウカはようやく安堵したように表情を緩め、手を放した。
「良かったな、ティカは物わかりが良くて」
トールは当然のように私の隣の丸太風椅子に腰掛けた。タウカも何も言わず、自然な仕草でトールの前に黄魚の塩煮をよそった木のお椀と白いフォークを置いた。四本爪のフォークは獣の白い骨製だ。幼児の私が二爪木製フォークを置かれていることから、骨のそれはお客様用のイイヤツなのだと思われた。
トールはタウカに短く礼を言うと、黄魚を一口食べて微笑んだ。
「うちのマールは利かん坊だったからな。やめろと注意すると余計にやるんで大変だった。成長したらそれを皆にからかわれてなあ、大喧嘩するやら泣かされるやら泣かすやら……ことを収めようと親同士出しゃばったが反抗期突入されて……本当に大変だった」
意外な事実を知ってしまった。
トールの息子、マールは現在理知的な肉っ子大好きベータなのに。黒歴史がてんこ盛りな少年時代を過ごしていたらしい。
幼馴染への過去の振る舞いがプロポーズだったことに気付き、ギクシャクしてしまった二人がお互いを意識しまくった果てに恋に落ち、本当のプロポーズをするという甘酸っぱいBLシチュエーションは、マールが体現してくれそうな気がした。
これは……マールのおはようからお休みまでを観察しなければならないという神のお告げでは?
ふとBL神の意志に触れた気がして、私はキクイモと茸にフォークを突き刺した格好で止まる。
「そうだったのか、あのマールがなあ」
「タウカ、お前はティカが恥ずかしい思いをしないで済むように気を付けてやれよ」
「ああ。ありがとう、トール。でもまあ、そんな大騒動も今は楽しい思い出なんだろ? だったら俺もティカの好きにさせてやるかなあ。どうせ大きくなったら自然と止めるんだろうし、友達と分け合う思いやりの心と協調性は村にとっても良い事だし」
そんな事を言ってタウカが笑うと、トールは大きなため息を吐いた。
「俺も、そう思っていたんだがな……」
苦く、眉間に深い皺を作りながらトールは苦笑し、話し出した。
躊躇なく差し出されたきのこを口に含んだ私を見て、タウカは微笑みながら目を潤ませた。
「ティカ、よーく聞いてくれ」
「? うん」
「ティカは俺が用意した食い物は何でも食べてくれるいい子だ。俺は好き嫌いしないティカが誇らしいし、大好きだ!」
「うん! 私もお父さん大好き!」
今世の父に言葉で好きだと言ってもらえて、嬉しくてニコニコしてしまう。
「ありがとうな、でも!」
タウカは唐突に私の手を掴んだ。
「俺以外の誰かに食べ物を差し出されてもすぐ口に入れたら駄目だぞ!」
「うん、分かった」
私はこう見えても精神は成人なのだ。目の前で喋っている大人達の会話をちゃんと理解している。「あーん」は家族以外としたら恥ずかしいことだ、とちゃんと理解した。
「それから、自分が口をつけたものを誰かにあげるのも駄目だ!」
「う、ん?」
「もちろん誰かの食べかけをもらうのも駄目だぞ! 求婚を受け入れたことになるからな!」
「あの、お父さん、私……もう何度も友達と食べ物わけあってるけど……」
私達、三の村の子供達は五人しかいないので仲良しなのだ。美味しいものはみんなで分け合うのが習慣のようになっている。
その樣を子供当番に咎められることも、みんなの父親達を慌てさせることも無かったのに。
タウカは私の手を掴んだまま首を横に振る。
「分け合うのは良いんだ。半分こもいい。でも食べかけをあげるのは駄目だ! 特に口をつけたところを相手に食べさせるのは本当に駄目だ!」
虫歯菌云々の話ではないのは流れ的に察した。
「"貴方の毒見を一生したい"って意味に取られて、結婚の申し込みだと思われるからな!」
人に食い止しをあげたらプロポーズになるとは。
小さな友人たちとは、甘い花の蜜が吸えるツツジみたいな花を回し吸いしたりしている。これがプロポーズになるなら困ったものだ。しかし私達はまだ幼気な子供だ。恋愛感情など毛ほども芽生えていない。これはノーカンだ。
子供当番にタウカお手製粽の食べかけをあげたとき、なんとも言い難い表情で見られた理由が今わかった。
私は知らぬ間にプロポーズをしてしまっていたらしい。
しかし私は幼児なので、彼等にとっても意味をなさなかったはずだ。あれもノーカンになると思う。
「わかったよ、お父さん!」
友人達が食べかけを分け合いっこするのを止める気は無いが、慣習を知った私は今後気を付けていこうと思う。
友人達の恋の当て馬になるのは本望だが、わざわざ黒歴史を作りまくらなくても、数多あるBL本を嗜んだ私だ。そんな自虐行為をしなくても立派な当て馬になれるはずだ。
大きく頷いて見せた私に、タウカは真剣な顔で続けた。
「それから! 絶対人前で裸を見せるんじゃないぞ!」
ギクリとした。
男性らしからぬ私の体を晒してはいけないことはわかっていたが、既に上半身はイレインス達に見られてしまっている。
タウカの言い付けを破ってしまっているのだが、大事な下半身はまだ誰にも見られていない。それならばギリギリセーフのはずだ。これもノーカンに入るだろう。
「わ、わかってるよ!」
何度も頷く私を見て、タウカはようやく安堵したように表情を緩め、手を放した。
「良かったな、ティカは物わかりが良くて」
トールは当然のように私の隣の丸太風椅子に腰掛けた。タウカも何も言わず、自然な仕草でトールの前に黄魚の塩煮をよそった木のお椀と白いフォークを置いた。四本爪のフォークは獣の白い骨製だ。幼児の私が二爪木製フォークを置かれていることから、骨のそれはお客様用のイイヤツなのだと思われた。
トールはタウカに短く礼を言うと、黄魚を一口食べて微笑んだ。
「うちのマールは利かん坊だったからな。やめろと注意すると余計にやるんで大変だった。成長したらそれを皆にからかわれてなあ、大喧嘩するやら泣かされるやら泣かすやら……ことを収めようと親同士出しゃばったが反抗期突入されて……本当に大変だった」
意外な事実を知ってしまった。
トールの息子、マールは現在理知的な肉っ子大好きベータなのに。黒歴史がてんこ盛りな少年時代を過ごしていたらしい。
幼馴染への過去の振る舞いがプロポーズだったことに気付き、ギクシャクしてしまった二人がお互いを意識しまくった果てに恋に落ち、本当のプロポーズをするという甘酸っぱいBLシチュエーションは、マールが体現してくれそうな気がした。
これは……マールのおはようからお休みまでを観察しなければならないという神のお告げでは?
ふとBL神の意志に触れた気がして、私はキクイモと茸にフォークを突き刺した格好で止まる。
「そうだったのか、あのマールがなあ」
「タウカ、お前はティカが恥ずかしい思いをしないで済むように気を付けてやれよ」
「ああ。ありがとう、トール。でもまあ、そんな大騒動も今は楽しい思い出なんだろ? だったら俺もティカの好きにさせてやるかなあ。どうせ大きくなったら自然と止めるんだろうし、友達と分け合う思いやりの心と協調性は村にとっても良い事だし」
そんな事を言ってタウカが笑うと、トールは大きなため息を吐いた。
「俺も、そう思っていたんだがな……」
苦く、眉間に深い皺を作りながらトールは苦笑し、話し出した。
10
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています
水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。
そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。
アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。
しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった!
リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。
隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか?
これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる