男しか存在しない世界に女として転生した私の幸福な毎日。

ココナツ信玄

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転生幼児は友達100人は作れない12

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 私の腹の音を聞きつけたタウカは、自分で食べられるというのに手ずからせっせと私の口にご飯を詰め込んだ。

「これ食え!」

「もぐ、自分で食べられるよ、お父さん!」

「こっちも食え!」

「もぐぐ、まってまだ口の中に、もぐ」

「昼食べてないんだからそっちも食え! ちゃんと食え!」

「むぐぐ」

 飲み込む暇もない程口の中に詰め込まれ、私がフォアグラにされる鳥に共感を覚えたその時、

「何をしているんだ、このバカモノ!」

 後ろから伸びてきた手がタウカの脳天に垂直チョップした。

「イテ!! いきなり何しやがる!」

 右手で頭を押さえ、左手で茸が刺さった棒を持った格好でタウカが背後を振り返る。

「何しやがるとはこっちの台詞だ! ティカを窒息させるつもりか!」

 そこには、家のドアを背にして仁王立ちしているトールがいた。

「馬鹿言うな! 窒息なんてさせない!」

「させそうだったんだ、自覚しろ! ティカは子供なんだ、ゆっくり食べないと腹を壊す!」

「そ、そうなのか? ……俺は……昼飯の分も食べさせてやりたくて……」

 目に見えてしゅんとしてしまったタウカに、トールは呆れた風に苦笑した。

「子供に腹いっぱい食べさせてやりたい思いは俺もわかる。親の性ってもんだ」

「そうだろ!?」

 ぱあ、と我が意を得たりとばかりに喜色満面になったタウカに、トールは首を横に振る。

「だが! 食べ物を丸呑みさせるような速さで口に物を詰め込むな! まずは子供に自分にあった食事スピードを守らせるんだ。自分の体調を自分で把握できるよう基礎を作ってやるのが親の務めだぞ」

 それに、と続けてトールはちらりと私を見た。

「お前がすることを真似して、ティカが友達にするようになったらどうするんだ? 後で恥ずかしい思いをするだろうが」

「?」

 どういう意味だろうか。
 確かに「あーん」し合うカップルはハタから見ていて気恥ずかしいものがあるが、友達同士で「一口ちょうだい」し合うのは前世日本でお見かけしたことはあったが、恥ずかしいとは思わなかった。微笑ましいとは思ったが。
 口の中のものを噛み砕き、飲み込んでから首を傾げると、タウカがはっと息を呑んだ。

「それはマズイ! 求婚されたと勘違いされてティカが結婚を迫られちまう!」

 きゅうこん?
 求婚。
 球根でも窮困っでも吸根でもないと思う。
 話の流れ的に愛を乞う行為のことだろう。
 何故、単なる「あーん」がプロポーズと同等になってしまうのか。
 意味がわからない。

「いや、求婚されたとまでは誰も思わないだろうが……」

「そんなの分からないだろう! ティカはこんなに可愛くて利発なんだ! これ幸いと結婚を押し切られちまう!」

「……その可能性よりも、成長したティカが、家族か番になった相手にしかしないことを自分が友達相手にしていたと知った時の事を心配しろ。そこに反抗期でも重なったら最悪だ」

 青褪めるタウカ余所に、私は自分の友人達の振る舞いを思い返していた。
 思い出せる限りでは、四人の友人達はまだ「あーん」しあったことはない。食べ物を半分こしあうことは頻繁にあったが、残念ながら将来オイシイ思ひ出になるであろう事象は起こっていない。
 唇を噛み締め口惜しく思いながらも、まだこれからいくらでもチャンスはあるはずだと自分を鼓舞していると、タウカがきのこを差し出してきた。
 トールとの話は終わったのかわからなかったが、親に好物を差し出されたらパクついて見せるのが子供の務めだ。
 フォアグラにされかけたが、先程までされていたことでもあったので、私は目の前のそれを食べた。

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