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第6章
第99話
しおりを挟むジャン達のチームが先に入り、少しすると扉が開いた。
「じゃあ行きますか!」
声をかけると、エレナは嬉しそうに俺の手をとり、ロゼッタと紅葉は不機嫌オーラが全開だった。
「あの、2人とも…?とりあえずその殺気を抑えてくれるかな?」
「すみませんマスター、それは無理です。」
「別にそんなもの出しておらん。」
「いや現在進行形で出てますやん?この階層の魔物が俺たちから逃げてる気がするんですけど!」
俺のツッコミも虚しく、2人にぷいと無視されてしまった。
「レイの友達は怖い人が多いのね。」
エレナの言葉に2人の殺気が更に増した。
(やめて!『クリリンのことかー!』状態になりそうだから!)
「あ、あのエレナ…?手を離してもらってもいいかな?戦えないから。」
「なら私も参加するよ!」
「いや、これ試験受ける人しか戦闘は参加できないからさ。終わるまで待っててくれる?」
今度はエレナが不機嫌そうな顔になったが、とりあえず手を離してくれた。少しだけ2人の殺気が静まった気がした。
「マスター、後でじっくり話を聞かせてもらいます。」
「レイ…やはり今はいい。」
「いや怖いわ!せめてなんか言ってくれよ!」
とりあえず、俺→ロゼッタ→紅葉の順で階層の魔物を倒していく事にした。
第1階層は平地に所々岩があるようなフィールドだった。魔物(おそらくゴブリン)の反応は、先程の殺気のせいか岩陰に隠れてしまっている。
「一気にやるか…。」
俺はしゃがんて地面に手をついた。
「『地蜘蛛の拘束糸』。」
地面に魔力を流すと、岩陰のゴブリン達の足元に魔法陣が浮かび、そこから土で出来た網がゴブリン達を拘束した。
そのまま手を離さず魔力を流すと、網が小さくなっていきゴブリン達は細切れになった。
魔石を10個ほど回収してギルドで貰った袋に入れ、次の階層へ向かった。
第2階層の敵は、草原に隠れた様々なスライム達だった。
「流石にFランクのダンジョンは弱い魔物が多いですね。」
ロゼッタはぼやきながらも、右手をゴツい銃に変えた。そしめ銃を構え、ためらう事なく引き金を引いた。
「さむっ!!!」
銃口からは、まさかの炎ではなく凍えるような冷気が放射され、あたりは美しい銀世界となった。
数秒して凍ったスライム達が砕け、氷と魔石が転がった。
「こんなものですかね…。」
ロゼッタは魔石を回収して、第3階層に向かった。
第3階層は低木林にマタンゴたちが隠れていた。紅葉が前に出て、大きく息を吸った。
「あちぃ!」
紅葉が大きく息をはくと、青白い狐火があたりを火の海に変えた。マタンゴ達の苦しそうな呻き声が聞こえてくる。
ある程度燃えたところで、紅葉が小さく息をはくと火は自然と消えて行った。
「ふぅ…全くつまらなすぎるな、ここは。」
そのまま、俺たちは手こずる事もなく下の階へと降りて行った。
場所は変わり、10階層でジャン達のパーティーの前には1匹のゴブリンロードがいた。普通のゴブリンよりも少し大きく、能力値も高い。
今回はエリーとクレアの2人の試験なので、Eランクのジャンとドミニクは後方で見守ってるだけだった。
クレアが目眩しの魔法を放った直後に火球を撃ち、エリーが魔力を回復するなどサポートをして、ゴブリンロードを少しずつ押していく。
「あの2人もなかなかいい連携がとれるようになったね。」
「…そうだな。」
ドミニクが話しかけても、ジャンは不機嫌なのかそれ以上何も言わなかった。
「まだ怒ってるの?あの少年は僕達なんかより強い子だよ。」
「うるさい。俺がいつか必ず倒してやる…!」
「はぁ。少しは協力を頼んだり…」
ドミニクの発した言葉は最後まで続くことはなく、ジャンの横で突然倒れた。
「お、おい!どうした!」
「こんにちはぁ🎶」
「っ!」
振り返ると、ジャン達の真後ろに1人の男が立っていた。
「お、お前誰だ!ドミニクに何をした?!」
「そう怒らないでくださいよぉ。彼は少し眠っているだけですから♫それより…」
そう言って男は懐から赤黒い肉塊を出した。よく見ると少し動いているようだ。
「これをあなたに差し上げます♬」
「なんだこの物体は…。」
「それがあれば、あなたの憎む相手と少しはマトモに闘えるかもしれませんよぉ?」
「なに?」
「ま、それを使うかはあなた次第ですけどねぇ🎶」
そう言って男は影に沈んで消えていった。
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