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第一章

第56話 王都散策

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 バタバタと王様との謁見……と言って良いのか分かんねえが褒賞をもらい、王都まで来た用事がひとまず終わった。

 ギルマスの依頼は王様を王城へ送り、向こうでのあれこれ終わらせてからって事で、俺達は夕方まで王都を見てまわる事にした。

 帰ってくる時に門番に見せる、客人のって事を証明する印、ギルマスの家紋が書かれた紙切れを預かり、クロセルに収納をしてもらって俺達は屋敷を出た。

 屋敷の門から出る前に、正面の大きな門を守る門番から聞いたんだが、この屋敷の近くには、立派な屋敷しかない貴族街で、歩いて三十分行った所の門をくぐってやっと店や屋台がある地区に行けるそうだ。

 言われた通り三十分ほど歩いて、なんの手続きもなかったが、一応もらってきた紙は見せて貴族街の門を抜けた。

「やっと貴族街ってのを抜けたな、思ったより人は少ないぞ? アシアは馬車から見てただろ、こんなもんなんか?」

「ん~、馬車から見ていた時も、この門を抜ける前は少なくなっていたわ」

「うんうん、私も見ていたけど、アシアちゃんの言う通りだったよ」

「んじゃ、店とかはもっと先なんか? この辺りは店っぽいの無いもんな」

 大通りは、馬車が行き交える広さがあって、人は端の方を歩いている。

 俺達もアンラを除いてだが俺が先頭で、横にアシア、後ろにエリスとプリムがついてきてる。

(おお♪ ケント、このハゲたおじさんこんなに付いてたよ♪ ほらほら~♪ それにこの子は中位のレイスになりかけだし♪)

 うろちょろしながらモヤモヤのレイスを捕まえては浄化しているアンラ。

『良かったのですか? お仕置きの代わりにレイスを浄化させる事にして』

 ん~、ああ、素直にやってるしな、ってか今そこの路地から出てきた奴!

 少し先に串焼きを噛ってる男達が、大通りをまたいで向かいの路地に入っていった。

「みんな、向こうに屋台か店はあるみたいだぞ、とりあえず行ってみっか」

「そうみたいね、行きましょう」

 男達が出てきた馬車も通れないような細い路地に入ると、先にも人通りが見え、人の声が聞こえてきた。

 すれ違う者もなく通り抜けると、馬車がなんとかすれ違える道幅の通りに出たんだが、道幅を狭くしているのは色んな屋台だ。

 屋台が通りに面した壁際に、ところせましと建ち並んでいるから真ん中の道が狭くなってるんだな。

「お店がいっぱい!」

 隣ではしゃぐアシアの言う通り、男達が持っていたような串焼きはもちろん、野菜を売る店や、酒やジュース、鍋やコップなんかも売る店まであって、人の数も大通りのパラパラじゃなく、混雑している。

 俺はとりあえず、串焼きの屋台でなんの肉か分かんねえが七本の串を買い、みんなに持たせる。

 人の邪魔にならない屋台裏の壁際で、そろって食べるんだが、どうやってアンラに渡すか……。

 とりあえず一本は咥えて、背中の鞄からクローセに出てもらい、しゃがみこんで串から抜いた肉をクロセルに出してもらった皿に乗せて食べさせる。

 その皿の横に肩からソラーレをおろし、串付きのまま上に乗せてやる。

 さあ、ここからが問題だな。

 チラっと見上げるとみんなは串焼きを頬張りながらこっちを見てない――。

 ――アンラ! 今だ! 早く受け取れ!

(ほ~い♪ ありがとね、美味そー、あ~ん♪)

 ひょいっと俺の咥えてた串焼きを持っていきやがった……。

(中々美味しいわね、オークかな、塩だけじゃなくて、他にも何か使ってるわよこれ)

 お前のはこっちだろ! まあ良いけどよ、食べ終わった串はソラーレに渡してくれよ。

 咥えていたものは取られたから仕方なく渡そうと手に持っていた物を噛る。

 アンラの言う通り、確かに塩だけじゃなくて、緑や赤色の物が振り掛けられていて、ピリッとした辛さも感じられる。

 ん~、なんだろうな、これってボア肉でも合いそうだし、見付けたら買いだな。

(んぐんぐ、んくん。美味しかったよ~。んと、残った串はソラーレにだよね、は~いソラーレ~)

 アンラはあっという間に食べてしまうと、食べている途中のソラーレの上に串を乗せた。

 その後は、まだ食べ終わっていない俺達から少し離れたところでうろちょろして、またモヤモヤ捕まえ出したんだが、ピタリと止まり、通ってきた路地よりさらに狭い路地を覗き込んでいる。

(ケント~、小さい子供達が大人に囲まれて殴られてるよ、放っておいて良い? 連れてかれそうだけど)

 ふ~ん……おい! それは駄目だろうが!

「ちょっと人助けしてくるぞ!」

ふへっ?え?

 立ち上がり、アンラが覗いてる路地に駆け込むと、そこには五人の俺達より小さな子供達が、おっさん三人に囲まれているところだった。

「おら! グズグズするんじゃねえ! 大人しくしやがれ!」

「いやだ! 戻りたくない!」

 大人に囲まれた子供達は寄り添って、囲むおっさん達が伸ばす手を必死に払い除けている。

「おいおっさん! 止めやがれ!」

 素早く覚醒して声をかける。

「なんだお前は! 関係ない奴は黙っていろ!」

 一瞬驚いたようだが、おっさん達が顔だけこちらに向け、睨み付けてきた。

「なんだお前ら、人攫いか、人攫いは重罪って知らねえのか! 俺が捕まえてやる!」

 一気に間合いを詰めるか……剣を持たないおっさん達だ、剣は抜かず体術で戦う事にするぞ。

 それに気付いた子供が一人、こっちを向いて、隙ができた男達の間を抜けて走りよってきた。

「お兄ちゃん助けて! もう孤児院には戻りたくない!」

 え? 今なんて言った?

「黙らねえか! お仕置きするぞ!」

 ボスッと俺に抱き付いてきた子供は、頭ひとつ分俺より背が低くく、庇うように抱え込むと、その体が思ったよりガリガリなのが分かったんだが……孤児院?
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