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第一章
第100話 エクストラヒール
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ギイィン! キギイィン!
くそ、結界を、張る、余裕が、無い!
「キヒッ! キヒッ! キヒッキヒッ!」
左手だけでシークジールの繰り出す俺の顔の倍はある拳を受け流し、傷が付く気配もない。防御力が高いと分かるが、魔力を纏わせた、切る事に特化している刀で傷も付かない何て馬鹿げてる。
ブンと頭の上を過ぎる腕を掻い潜り、脇腹に突き立てたらほんの少し傷が付いた。
「よし! こっちだ!」
なるべく部屋の中央で、戦うようにしているのは壁なんかを壊されるのを防ぐためだが、ソファーやテーブルも戦いだしてすぐに収納したから無事だ。
それでも被害はある。床の敷石にヒビが入りこれは交換しないと駄目だろうな。
「ウロチョロトスバシッコイヤツメ! イツマデニゲキレルカナ! キヒッ! キヒャヒャヒャヒャ!」
ギギィン! ギャギャッ!
よし。傷は塞がってない、このまま同じ脇腹と膝裏も突きで削っていく!
「しっ! はっ!」
一分足らずの攻防で、何回拳をさばき、突きを入れたのか分からないが、最初の一センチから今は十センチほど切っ先が刺さり込み、どんどん血が流れ出している。
それに気付きもせず腕を振るい続けるシークジール。
「オナジトコロヲチクチクト! モウガマンナラン! ナグルノデハナク、ツカマエニギリツブシテクレルワ!」
拳を開き、俺の事を追うように手を動かし、捕まえようとする。
「捕まるか! しっ!」
だが、シークジールの伸ばした左手が俺の右手を掴んだ――しまった!
砕けた右手は俺の動きに付いてこれず、一拍遅れて俺の後を付いてきていたからだ。
「ぐあぁぁぁぁっ!」
「「「アイテール!」」」
「キヒャヒャヒャヒャ! ツカマエタゾ! モウニガサヌ! キヒャヒャヒャヒャ!」
腕を捕まれたまま宙に持ち上げられた。
だが、これならいける!
痛みで気を失わないよう集中――っ!
「ぐっ、結界!」
「――! ――――!」
「ぐががっ、ミ、ミラーノ! シークジールの手首を切り落としてくれ!」
俺は死んでしまいたくなるほどの痛みに耐え、シークジールの腕を切り落とせる可能性はミラーノにしかないと思い、掠れた声を上げる。
「はい! お姉ちゃん! 身体強化お願い!」
「おう! 任せろ! 全開で行くから頼んだ! 身体強化!」
ミラーノは俺の声と共に動きだし、それに答えたマルガリータが身体強化の魔法をかけ、一気に俺が吊り下げられている腕の前に来て飛び上がる。
俺はそれに合わせミラーノの持つ大剣に魔力を纏わせた。
「全力全開! 後は任せます! 大・切・斬!」
ザシュ!
シークジールの約一メートルはある手首を切断。
俺は床に落下しその横にミラーノも着地したんだが膝が崩れ、俺の上に倒れ込んできた。
「んぎぎぎぎ! お前らも手伝え!」
「くぅっ、堅いですわ! 負けませんわよ!」
「なんやこれ! 切り離しても握り続けてるやん!」
「離すにゃ! んにゃにゃにゃにゃ!」
マルガリータとエイア、セレーナにリーン、アンジェラとリュールも一緒になって、シークジールの切り離された手を開こうと奮闘しているが、中々開こうとしない。
「す、すまん! おい、サブマスも手伝え! バラバラにやるんじゃなくて親指から順に行くぞ! 力を合わせろ! せーのっ!」
指を一本ずつ開かせるやり方に変えてから、親指が開き、人差し指、中指と順に開かれて俺の腕がシークジールの手から開放された。
「お姉ちゃん回復魔法だよ!」
「おう! 任せろ! ハイエンドヒ――」
「待ってお姉ちゃん、エクストラヒールにしよう! 骨も筋肉もぐちゃぐちゃだよ!」
「足りるか······考えてる暇はねえな! ちいとばかり痛いが我慢しろよ! 俺も気絶したら頼むぜ! エクストラヒール!」
マルガリータは強い光を放ち、俺のぐちゃぐちゃなった腕を引っ張りまっすぐにして、エクストラヒール、教国の教皇が使えると噂があるだけの回復魔法を唱えた。
「んぐぐぐ!」
歯を食い縛り、痛みに耐えていると、ミシミシと骨が繋がっていくような感覚があり、どんどん痛みが遠ざかっていった。
「あはは······なんとか魔力は足りたが限界だぁぁ」
ボスッとマルガリータも俺の上に倒れ込んで、はぁはぁと荒い息をしている。
「エクストラヒールとは······聖女マルガリータ、お前」
「おう、すげえだろ? 俺の隠し球だ。誰にも言うんじゃねえぞ」
いや、治してもらって言うのもなんだが、ラカス枢機卿が目を見開いて見てるぞ。
よし、指も動く、感覚も元のままだ。
俺は上半身を起こし、ミラーノとマルガリータの頭を膝の上に乗せながら逃げなかった『狂乱の狼』の連中と、音で駆け付けた冒険者ギルドの職員達、リマンダ男爵、ヒョンビー子爵、そしてラカス枢機卿をを見て声を出した。
「今ここにいる者にはマルガリータの使った魔法について外部に漏らさないでほしい。良いよなラカス枢機卿。冒険者の隠し技は漏らさないのが暗黙の了解だろ?」
「しかし、エクストラヒールですよ······今期の教皇にさえ使えないと言われる欠損部位を治せる者なのですよ?」
「それでもだ。すまないがそんな事が世に知られたらマルガリータが治したい者の治療もできなくなる。ちょっと怪我をした仲間や、たまたまあった冒険者達、街ですれ違った者達もだ」
「そうだな。教会の奥にいて高い身分や高い金を出せる者だけ治すなんてやってられっか。俺は自由に冒険者したいんだからよ」
その通りだな、これは王様と公爵様に相談してみるか。
くそ、結界を、張る、余裕が、無い!
「キヒッ! キヒッ! キヒッキヒッ!」
左手だけでシークジールの繰り出す俺の顔の倍はある拳を受け流し、傷が付く気配もない。防御力が高いと分かるが、魔力を纏わせた、切る事に特化している刀で傷も付かない何て馬鹿げてる。
ブンと頭の上を過ぎる腕を掻い潜り、脇腹に突き立てたらほんの少し傷が付いた。
「よし! こっちだ!」
なるべく部屋の中央で、戦うようにしているのは壁なんかを壊されるのを防ぐためだが、ソファーやテーブルも戦いだしてすぐに収納したから無事だ。
それでも被害はある。床の敷石にヒビが入りこれは交換しないと駄目だろうな。
「ウロチョロトスバシッコイヤツメ! イツマデニゲキレルカナ! キヒッ! キヒャヒャヒャヒャ!」
ギギィン! ギャギャッ!
よし。傷は塞がってない、このまま同じ脇腹と膝裏も突きで削っていく!
「しっ! はっ!」
一分足らずの攻防で、何回拳をさばき、突きを入れたのか分からないが、最初の一センチから今は十センチほど切っ先が刺さり込み、どんどん血が流れ出している。
それに気付きもせず腕を振るい続けるシークジール。
「オナジトコロヲチクチクト! モウガマンナラン! ナグルノデハナク、ツカマエニギリツブシテクレルワ!」
拳を開き、俺の事を追うように手を動かし、捕まえようとする。
「捕まるか! しっ!」
だが、シークジールの伸ばした左手が俺の右手を掴んだ――しまった!
砕けた右手は俺の動きに付いてこれず、一拍遅れて俺の後を付いてきていたからだ。
「ぐあぁぁぁぁっ!」
「「「アイテール!」」」
「キヒャヒャヒャヒャ! ツカマエタゾ! モウニガサヌ! キヒャヒャヒャヒャ!」
腕を捕まれたまま宙に持ち上げられた。
だが、これならいける!
痛みで気を失わないよう集中――っ!
「ぐっ、結界!」
「――! ――――!」
「ぐががっ、ミ、ミラーノ! シークジールの手首を切り落としてくれ!」
俺は死んでしまいたくなるほどの痛みに耐え、シークジールの腕を切り落とせる可能性はミラーノにしかないと思い、掠れた声を上げる。
「はい! お姉ちゃん! 身体強化お願い!」
「おう! 任せろ! 全開で行くから頼んだ! 身体強化!」
ミラーノは俺の声と共に動きだし、それに答えたマルガリータが身体強化の魔法をかけ、一気に俺が吊り下げられている腕の前に来て飛び上がる。
俺はそれに合わせミラーノの持つ大剣に魔力を纏わせた。
「全力全開! 後は任せます! 大・切・斬!」
ザシュ!
シークジールの約一メートルはある手首を切断。
俺は床に落下しその横にミラーノも着地したんだが膝が崩れ、俺の上に倒れ込んできた。
「んぎぎぎぎ! お前らも手伝え!」
「くぅっ、堅いですわ! 負けませんわよ!」
「なんやこれ! 切り離しても握り続けてるやん!」
「離すにゃ! んにゃにゃにゃにゃ!」
マルガリータとエイア、セレーナにリーン、アンジェラとリュールも一緒になって、シークジールの切り離された手を開こうと奮闘しているが、中々開こうとしない。
「す、すまん! おい、サブマスも手伝え! バラバラにやるんじゃなくて親指から順に行くぞ! 力を合わせろ! せーのっ!」
指を一本ずつ開かせるやり方に変えてから、親指が開き、人差し指、中指と順に開かれて俺の腕がシークジールの手から開放された。
「お姉ちゃん回復魔法だよ!」
「おう! 任せろ! ハイエンドヒ――」
「待ってお姉ちゃん、エクストラヒールにしよう! 骨も筋肉もぐちゃぐちゃだよ!」
「足りるか······考えてる暇はねえな! ちいとばかり痛いが我慢しろよ! 俺も気絶したら頼むぜ! エクストラヒール!」
マルガリータは強い光を放ち、俺のぐちゃぐちゃなった腕を引っ張りまっすぐにして、エクストラヒール、教国の教皇が使えると噂があるだけの回復魔法を唱えた。
「んぐぐぐ!」
歯を食い縛り、痛みに耐えていると、ミシミシと骨が繋がっていくような感覚があり、どんどん痛みが遠ざかっていった。
「あはは······なんとか魔力は足りたが限界だぁぁ」
ボスッとマルガリータも俺の上に倒れ込んで、はぁはぁと荒い息をしている。
「エクストラヒールとは······聖女マルガリータ、お前」
「おう、すげえだろ? 俺の隠し球だ。誰にも言うんじゃねえぞ」
いや、治してもらって言うのもなんだが、ラカス枢機卿が目を見開いて見てるぞ。
よし、指も動く、感覚も元のままだ。
俺は上半身を起こし、ミラーノとマルガリータの頭を膝の上に乗せながら逃げなかった『狂乱の狼』の連中と、音で駆け付けた冒険者ギルドの職員達、リマンダ男爵、ヒョンビー子爵、そしてラカス枢機卿をを見て声を出した。
「今ここにいる者にはマルガリータの使った魔法について外部に漏らさないでほしい。良いよなラカス枢機卿。冒険者の隠し技は漏らさないのが暗黙の了解だろ?」
「しかし、エクストラヒールですよ······今期の教皇にさえ使えないと言われる欠損部位を治せる者なのですよ?」
「それでもだ。すまないがそんな事が世に知られたらマルガリータが治したい者の治療もできなくなる。ちょっと怪我をした仲間や、たまたまあった冒険者達、街ですれ違った者達もだ」
「そうだな。教会の奥にいて高い身分や高い金を出せる者だけ治すなんてやってられっか。俺は自由に冒険者したいんだからよ」
その通りだな、これは王様と公爵様に相談してみるか。
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