【完結 R18追放物】勇者パーティーの荷物持ち~お忍び王女とダンジョン攻略。あれ? 王女のダンジョンも攻略しちゃいました~

いな@

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第一章

第101話 魔人薬

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「いや、しかし、今の教皇も御高齢で近々教皇選出があるかもしれません。そうなれば、マルガリータ様が最有力候補で、ほぼ当選確実。エクストラヒールは、現在教国で使った事のある方は、教皇だけです。それも、ここ数年はお歳による衰えで使う事もありませんので」

 ラカス枢機卿は真ん中のシークジールを避け、大回りしながらマルガリータの前までたどり着き、そんな事を言うが、マルガリータはニヤリと笑いながら――。

「んじゃ、俺が確実に教皇なれるんだったら良いぜ。そのかわりヒールを患者に一回掛けんのは怪我によって銅貨一枚から五枚まで、ハイヒールも大銅貨一枚から銀貨までだ。後、俺は教国の教会の奥にいるつもりはねえから冒険者として活動する。それが通るなら喜んでなってやるぞ。どうだ?」

 くくっ、今はヒールで銀貨だからな。それを聞いたラカス枢機卿は笑顔ではあるが、頬がひきつってピクピクしている。

 そこにギルドマスターが焦った顔で同じようにシークジールを避けて俺の方にやって来た。

「お、おい。アイテール、それは良いがコイツ、シークジールはどうするんだ?」

「そうだな、コイツの腕や首に嵌まる奴隷の魔道具はあるか? 人がこの姿に変わる薬があるようだから聞き出したいんだが」

 腕でも一メートルは太さがある、その大きさの物がすぐ造れるかと言われれば······いけるのだろうか。

「後、コイツの調査もしたいところだな」

 俺はシークジールが飲んだ薬が入っていた瓶は、収納して確保してある。それを出してギルドマスターに見せた。

「おお、それを確保してくれていたのか。すぐに錬金術師ギルドに依頼······いや、まずいかもな。なあ、王様に頼めないのか? これはあまり外部に出せる物じゃないと思うんだが」

「それもそうか、分かった。それとシークジールの魔道具も色々とあったし······。なあ······コイツ、どうやってここから出す? あっ、アイテールちょっと耳を貸せ」

 ギルドマスターの提案はこうだ。

 今は普通に喋っても奴には聞こえないが『狂乱の狼』と、奴が連れてきたラカス枢機卿やヒョンビー子爵にリマンダ男爵がいる。

 もしかすると裏で繋がっている可能性もあるかもしれないとの事で俺だけに伝えてきた。まあこれが後々分かった事だが、正解となる。

 まずは王城でラカス枢機卿、リマンダ男爵、ヒョンビー子爵を抜いた状態で、俺が使った念話を使い、シークジールの詰問をし、それの報告として集め、そこでも念話で聞ければ多くの情報が得られて解決できるんじゃないかとの事だ。

 俺は頷きその提案に乗ることにした。

 マルガリータはまだラカス枢機卿と話ていたが、教皇の話は後日時間を取ると約束し、シークジールを運ぶため応接室の壁を一面だけ破って裏の馬車や厩舎があるところに出し、そこに用意した大型の馬車に身体強化をした冒険者ギルド職員が総出で乗せ、王城に向かって王城の庭でシークジールの詰問をする事となった。

「まったく、暗殺ギルドをパナケア王国からの撲滅が見通しが立ち。タナトス王国の件も、外交的に賠償という形で折り合いがつく段取りになったと思えば今度は教国か」

 王様が『もう止めてくれよ』って顔をしながら言うが、俺は悪くないよな。

 そして馬車の上で寝かされたままのシークジールへの詰問が始まった。

「聞こえるだろシークジール」

 奴は黙ったままだが聞こえているはずだ。

 耳と、口元だけ自由になるように結界に穴を開けたからな。

 フシュー、フシューとシークジールの息づかいだけが俺達、王様、公爵様を始め、兵士と護衛達の耳に届く。

 そして――。

(くそ、こう動きが取れないのではどうしようもない。体がデカくなり転移の魔道具も弾け飛んでしまったからな。なんとしてもこの場を乗り越えなければ)

「シークジール。黙ってないで答えろ。お前のその姿になった薬はどうやって手に入れたんだ?」

 俺が聞く方が反発するだろうという事で、寝転んだ奴の上に俺が乗って話をしている。

 奴は目玉だけ動かし、俺を睨み付けるだけで喋ろうとはしない。

(くそ、忌々しいガキめ、貴様さえ言う事を聞いていれば、寿命を一年縮める魔人薬を飲まなくても良かったものを)

 魔人薬か。シークジールの言い方ならあの薬は寿命を縮め、肉体が変化し、身体能力が跳ね上がる物なんだろうな。

(後、一時間ほどで体が縮み、元に戻ってしまう、それまでに当事者としてここにいるだろうリマンダ男爵が上手く誘導してくれれば良いが。それか奴が持つ魔人薬を追加で飲めれば――)

(アイテール、リマンダ男爵ってあそこにいた奴だよな? ならアイツもコイツみたいにデカくなるんかな? 今の内に捕まえた方が良くないか?)

(お姉ちゃん。アイテールの結界と同じのははできないの?)

(俺じゃあ無理だ。あんなに上手くできねえな、空気穴開けなくて良いなら簡単だぞ)

 おいおい、それは死んでしまうだろ。

(マルガリータよ、それならここにリマンダ男爵を呼び、アイテールに任せる。まずはシークジールを問い詰める事としよう、どこで手に入れたのか、作った者は、他に持っている者は、どれほどの数があるのか聞いてくれるか?)

 王様の言う通りまずはそれからだな。
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