最愛の敵

ルテラ

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チャムク帝国

92話 過去の真実(2)

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「ふむ、ラズリ、君にとって人の温もりは苦痛かもしれない。だが今だけだ。いつか分かる人の温もりがどれ程、尊いのかを」
「(残酷なものかを)」
「ですが、全て話します」
 話し終えるとレアが泣いていた。
「(泣くな気持ち悪い)」
「ごめん、ごめんね。もっと早く見つけてあげられれば、ごめん・・・」
「(お前が見つけたとって何になる)」
「保護したという奴は何処だ?」
「大佐!」
「(チッ、面倒なのが来た)」
「よい、構わん楽にしろ」
「こいつが保護したという?」
「そうです。先程、調書しましたので、まとめ次第報告されていただきます」
「(大した実力もないお前が私に指図するな。忌々しい)」
「お前、軍に入らないか?」
「大佐、お言葉ですが・・・」
「お前に意見を求めた覚えはない!」
「申し訳ございません」
「(余計な!・・・いや、いい案かもしれない)」
「贖罪にはうってつけの場所だ」
「贖罪?」
「お前は大勢の人間を殺した。そんな人間は償わなければならない。だが償うのはとても大変なことだ。多くのものが贖罪できずに死ぬ」
「(偶には気が効くじゃないか)」
「しかし、お前は運がいい。ここは合理的かつ効率的に償うことが出来る。大勢のものを救い守ることが出来るのだからな。どうだ?」
「入ります」
「分かった。ホルス、お前が面倒を見ろ」
「了解しました」
「(悪くない。腕が衰えては意味がないからな)」
「ホルス、パーチミお願い止めて!」
「(自分で言ったらどうだ)」
「あの子はまだ子供よ。命の重さも分からない子に・・・間違ってる!」
「(何も出来ないお前が言ったて何の説得力にもならない)」
「レア、それは違う。あの子は誰よりも命の価値を分かっているよ」
「(無くすためには必要なこと)」
「ふむ、初めて会った時の話しをしたろ?あの子は死を望んだと。それは自分に価値が無くなったからではなく命を奪った償いをしようとしたんじゃないかって思うんだ」 
「(完成のため、何とかこの場を収めるしかないか)」
「心さえ生きていればどうにでもなる。心が死んでしまった時、人は命の価値が分からなくなり、死んでしまう。あの子が今こうして生きているのは命の価値分かっている。あるいは理解しようとしているんだよ」
「(頼むから、これ以上私をイラつかせないでくれ)」
「ふむ、確かに選択した結果は余り喜ぶべきものではない。だが今はそれでいい。分からないのなら学べばいい。それだけのことだ」
 ホルスはパーチミを見る。
「パーチミ学ぶ為には生きなければならない。生かす為に協力してくれないか?」
「あんなこと聞いて見て見ぬフリなんて出来ねぇよ。協力するよ」
「(無能でも少しは役に立てよ)」
「で、これからどうするんだ?」
「ふむ、やっぱり歳の近い子の方が心を開けやすいと思うから、あの子達に合わせて見よう」
「(“ヴィジョン”があっていれば・・・)」
 子供達を合わせる。
「レオ、ライは僕達の子供で、2人は僕が連れてきた子達だ」
「少し緊張しているだけさ。この子はラズリだ。みんな仲良くね」
「(感情を育てるために仲良くしてくれよ)」
 
 バシ
 反射でアイシャの手を弾く。アイシャは驚きのあまり手鏡を離してしまい、床に落ちて割れる。
「どうした!」
「(余計なことをしたんじゃないだろうな)」
「あっ、えっと・・・」
 子供達は驚いて思考が停止し、上手く話せない。状況を理解するために子供達を退室される。レアは子供達と一緒に出ていき子供達から事情を聞く。
 パーチミは落ちて割れた手鏡を拾う。
「ラズリ」
 ラズリは小さい体をベットの上で縮まらせていた。過呼吸になっているのか呼吸が荒い。
「(チッ、何を震えている。お前に弱さは許されない)」
「ふむ、大丈夫、何が怖かったのか教えてくれるか?」
「(計画に支障が出てはまずいからな)」
 ラズリは震えながら首を横に振るう。
「ラズリ、誰も責めない。もう君を縛りつけるものはなくなったんだ」
 しばしの沈黙ののちラズリは話し始める。
「分からない。ただ記憶が蘇ってきて。あの人達の目がこっちを見ていて、ソロモン様の声が聞こえて・・・」
 破片を片付けながらパーチミは思う。
ああ、この子まだ囚われているのか。
「ラズリ、君は人の温もりが苦痛に感じるだろう。だが今はそれでいい。いつか自ら求めてしまうから。その声もいつか忘れる程、楽しい毎日が君を待っている。ゆっくりでいい君のペースで前に進もう」
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