最愛の敵

ルテラ

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チャムク帝国

102話 銃の真実

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 バン
 突然、扉が勢いよく開き、誰もが黙り、背筋を伸ばす。緊張と驚きで生徒の顔が複雑となる。
「では、講義を始める」
 そこにいたには、パイロンのリーダー、ラズリだ。
「君達の名前は知らないから出席番号で指名させてもらう」
 ラズリは自己紹介もどのよな内容なのかも話さず、話しを進める。
「これは何だ」
 黒いそれを見せる。
「6番これは何だ」
「銃です」
「そうだ」
 そう言い窓の方に銃を向ける。
 バーーーン
 突然の銃声に驚く生徒達。目をパチパチさせる。
「逃げないんだな」
「そりゃそうですよ。銃如きに臆する僕たちではありません」
 1人の生徒が生意気な口調で言うが、殆どの生徒がその状況に理解が出来ていないだけだった。
「そうか。では」
 先程、発言した生徒に銃を向ける。
「防げるか?」
「もちろんです」
「やってみろ」
 カチャ
 引き金を引く。生徒の顔色が悪くなる。
「・・・あれ?」
「できたな」
「え?・・・ちょっと・・・」
 バン
 生徒の足元に打たれる。生徒は床に尻もちをつく。他の生徒達の顔色が曇る。
「ひぃ・・・」
「外れてしまった。もう一度行く」
 カチャ
「ま・・・待って!!」
 逃げ出す。それが引き金となり他の生徒達も逃げ惑う。机の下に隠れる者、廊下に逃げようとする者だが
「あ、開かない」
 力いっぱいに開けるびくともしない。
「座れ」
 ラズリは静かに重く言う。
「この部屋は魔法により完全な空間になった。座れ。それとも死ぬか?」
 ラズリは生徒達に銃口を向ける。
「一体どうやって!」
「空間掌握・・・」
 一人の生徒がつぶやく。
「そうだ」
 しばらく沈黙が走ると生徒達は座って行く。その顔はこの世の終わりがなのよな顔している。
「魔法は万能では無い。それはさっきそれをお前たちが証明した。お前達は自分達が有能と思い込みあのような失態をした。恥をしれ」
 全員の顔から血の気が引く。
「武器は実にいい。魔法が使えない状況でもこうして使えるのだから」
 再び生徒達に向ける。生徒達は半べそをかく。ラズリは銃を教卓の上に置く。
「それゆえに危険だ。だが銃に恐怖を抱くのはお前達ではなくそれを持つ者だ。例外もあるがな、4番ことらへ」
 4番の子は恐る恐るラズリの方へ行く。
「これを持て」
 背中からもう一つの銃を出す。
「構えろ」
 全員の方へ構えされる。
「撃て」
「えっ?」
「誰でもいい。撃て」
 4番はみんなの方を見る。そしてどうすればいいかわからずラズリの方を見る。
「安心しろここで誰かを撃っても私がもみ消してやる。撃て」
 ラズリは冷徹に言う。4番は汗が出てきて手が震え出す。
「で、出来ません」
「そうか。なら」
 4番の銃を掴み自らのおでこに銃口を向ける。
「なら」
 4番の子の銃を自身に向ける。
「撃て」
「無理です!」
「命令だ」
 バタ
「でき・・・ません」
 4番は力なく床に倒れる。
「10番、今この場で最も恐ろしい人間は誰だ?」
「教官です・・・」
「なぜ?銃を持っているのはこいつだ。銃を持っていない」
 一拍入れ。
「これが先程言った意味だ。例え銃を持っているからといってそいつが怖いとは限らない。先程のように誰かに脅されて持っているかもしれないからな」
 4番の銃を奪い自身のこめかみに当てる。
 カチャ
 全員がビックとなる。
「球は入っていない」
 ラズリは銃を教壇の上に置く。
「4番、なぜ撃たなかった?」
「殺してしまうかもしれなくて、怖かったからです」
「そうだ。銃と魔法、いや魔法よりも命を奪いやすい。戦場では魔法遮断装置が働いている。魔法よりも武器を扱うことが多い。しかし近年では魔法をどれほど派手に扱うか芸術性を求める者が多くなった。そのため武器の扱いを疎かにする軍人が多くなった。命よりそちらを選ぶとは素晴らしい価値観だ」
 ラズリは生徒達に皮肉をいい生徒達は唾を飲み込む。
「このリテラシーの重要部分は武器の扱いを疎かにするなっと教える目的もあるが、一番は命は疎かにするなっということだ。お前たち失敗した。だが今はそれでいい。失敗することは恥だと誰かが言った。だがその恥も生きていなければ得られない。ここは戦場ではなく『学ぶ』場所だ。何故武器を持ち、魔法を使い、どのような責任を持ち、何を成す、目標無き人生は無いっと一緒だ。失敗したら考え続けろ、歩み続けろ、イバラの道も歩けばそこが道となる」
 生徒達はいつの間にか涙を流していた。
「リテラシーを終わりにする」
 自身も涙を流し彼女を見つめていた。そして、その時初めて世界が鮮やかだと気付く。きっとその頃から自分は・・・
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