最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

13話 何か

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 自分達は今、皇帝陛下の御前にいる。
「この度・・・」
 皇帝陛下が話す。
「用件だけ言え。何度も言わせるな」
「(ラズリさん!?)」
 自分は目を大きくする。
「ふん。相変わらず愛想がないな。まぁよい」
「(これが普通なのかな?)」
「で、わざわざ呼び出したんだ。大事な用なんだろうな」
 フィールさんが不満そうに言う。
「(フィールさん!!)」
「うむ、トートという者に会いたくてな」
 自分は思考が停止する。
「えっ!自分ですか?」
「あぁ、パイロンがお前を指名したいと頼んできたんだ。だから我の命令でそなたをパイロンに入れたのだ」
「そうだったんですね。皇帝陛下に彼らに合わせてもらったこと感謝します」
 自分は頭を深々と下げた。
「ほう、此奴らの隊のやつにしては随分礼儀正しいな。ハハハ」
「もういいな。そろそろ本題に入れ」
 ラズリさんが皇帝の笑いを無視して言う。
「(本題?何のことだろう?)」
「うむ、トート、そなたは退出してくれ」
 皇帝が自分を見て言う。
「はい、失礼します」
 一礼をする。
「後程、迎えに上がります。トート」
 レオさんが申し訳なさそうに言う。
 自分は退出した。

 どれほど時間が経っただろうか。自分はどこに居ればいいのか分からず考えていたが、その心配はなかった。皇帝が配慮してくれたようで執事さんが自分には不相応な応接間に通してくれて、高級な茶菓子を用意してくれた。
「(そう言えば皇帝の周りに誰もいなかったな。護衛がいないんなんて不用心だな。いや、パイロンさん達がいるから大丈夫なのかな?5人だけの会話・・・やっぱり国家機密レベルの話しなんだろうな。自分まで緊張してきた)」
 勝手に妄想を膨らましながら腰にある銃を取り出し眺める。
 コンコンコン

「それで、話しとはなんですか?」
 レオが皇帝に聞く。
「捕虜の腕を切ったそうだな」
「それは・・・」
 3人が思はず言う。しかし、ラズリが制する。
「あぁ、そうだ。処罰でも下すか?」
「いや、いい。大方予想はついているが、詳細を話してくれないか?」
「わかった」
 ラズリは静かに言った。
 詳細はレオが話した。そこにいた“何か”について。そしてラズリも思い出すそこで見たものを。

ー1ヶ月前ー 
 ラズリがたまたま見つけた『研究室No.3』の地下。そこには“元人間”、“元動物”などがいた。
 なぜ「元」なのか、それは原形を留めていなかったからだ。何かを植え付けられた様な形をしていれば、薬物を投与されたモノもいた。彼らはあくまで生命をもったものではなく“モノ”、そう考えなければおかしくなりそうだった。
 それらがいた牢の先に扉があった。中には手術室の様な設備があり、奥にはデータを入力するための機械などもあった。
 ラズリはデータを入力するための機械へと行くが
「チッ」データは既に消去されていたため何のデータも残されてはいなかった。
 ズキ
『黙れ!騒ぐな!』
『もう無理だ?喋れるんだまだやれる。やれ』 
「うるせぇ」
 ラズリは頭を振るい、来た道を戻る。
「た・・・助け・・・」
 まだ生きている“モノ”がいた。
 ラズリは牢に近づき、膝をつきしゃがむ。
「悪いが英雄じゃないんだ」
 ラズリはそういい。それにトドメを刺す。
 動かなくなった“それ”をしばらく見つめ、立ち去る。

ー現在ー
「俺からは以上です」
 レオが話し終える。
「そうか」
 皇帝は深刻そうな顔して静かに応える。
「“ノーネーム”、何か付け足すことは」
 皇帝が問う。
「ない」
「“奴ら”については何も?」
「繋がっていたかえさえわかっていない。だから『ライ』に頼んだ」
「あれだけ見れば、“奴ら”と繋がっているっていうのは明白だが・・・」
「考えるのはみんな同じだからね」
 フィールの言葉にアイシャが続く。
「そう言えば、あやつには言わないのか?」
「あやつ?」
「トートですね」
「あぁ、あやつもパイロンの一員だ。どうなんだ」
「入ったばかりだからなんとも」
 アイシャがため息混じりに言う。
 どうやら話すつもりはないようだ。少し考えた後、
「そうか。また何かあったら教えてくれ」
「あぁ」
 
 コンコンコン
「はっはい!」
 自分は条件反射で立ち上がり同時に銃をしまう。
「トート」
 フィールさんが顔を出す。
「フィールさん、もう終わったんですか?」
「あぁ、終わった。帰んぞ」
 手招きする。
「はい」
 廊下に出ると3人がいた。
「お待たせね、トート」
 アイシャさんが手を振るう。
「いえ、お疲れ様です。皆さん」
「では、帰りましょう」
「はい」
 自分はパイロンの後に続く。
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