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プロポーズ

予兆

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今日は職場の同期2人と飲み会。

結局、水族館デートの後、プロポーズは断った。
だってやっぱり付き合ってないのに結婚って飛びずきだし!
じゃあまずはお付き合いから、と言われたのでそれは保留にさせてもらった。

すぐに断らなかったのは自分でもよくわからない。ただ、郁人からのスキンシップは嫌ではなかったし、水族館も楽しかった。

好きかと言われると、友達として好きなのはもちろんだが恋愛感情があるかまでははっきりしない。


「花咲は柊だろ?」

突然話を振られて心臓が跳ねた。しかも郁人の名前が出たから余計である。

「ごめん、なんの話だった?」

「ちゃんと聞いてろよっ!ったく、恋人がいる奴はいいよなー!」

まださほど時間は経っていないのにすでに出来上がってないか?

「いや、だからなんの話だよ」

「だーかーらぁー、お前と柊の話だよ!いつ結婚すんの?」

「はい!?いや、付き合ってないから!」

「あ?なんだよ今更。照れ隠しか?バレバレだぞ?」

バレバレってなんだ!付き合ってないのに!

「本当だって!どっからそんな話が....」

「あー、そういや付き合ってるとは言ってなかったな」

だから誰が!?

「んでもプロポーズするって言ってたし付き合ってると思うだろ」

「だな」

「は!?それ誰が言ってた!?」

「そりゃ柊本人だよ」

ですよね!....あいつ、俺の同期にそんなこと言ってたのか....!?

「まあそれがなくても付き合ってると思ってたけどな」

「会社の奴らもみんなそう思ってるんじゃないか?」

「み、みんな!?なんで....」

「なんでって、めっちゃわかりやすいじゃん。柊」

「え」

「俺花咲の肩に手置いただけなのに睨まれたことある」

「えぇー....」

「俺もある!あれめちゃくちゃ怖いよなー。口元笑ってんのに目笑ってないんだぞ?」

......これ、郁人の話だよな....?
全然想像できないんだけど。

「知らないのお前だけじゃないか?」

「そんなんだからいい人止まりなんだぞ?」

余計なお世話です。

ぐいっとお酒を呷りおかわりを頼む。

「で、ほんとのところどうなんだ?」

「だー!もう!俺のことはいいから!」

「えー、なんだよー。教えろよー」

話から逃れるために酒に逃げたら、ペース配分を完全に間違えた。







「うぅ~....」

完全に飲み過ぎた。ここどこ?おれどうやって帰ってきた?

頭がぐらぐらする中、薄目を開けて確認すると見慣れた部屋が映る。

「先輩?起きましたか?気持ち悪くないです?」

だれ?
声のした方を見ると郁人が心配そうに俺を見つめている。

「いくと?」

「はい。そうですよ。水飲みますか?」

「のむ.....」

どうやら俺はベッドに寝かされていたらしい。
スーツのジャケットとズボンは皺になるので脱がせてくれたようだ。
できる男だ。こういうところがモテるんだろう。

水を注いでくれたコップを体を起こして受け取るが、どうも距離感が掴めない。案の定、水は口ではなくワイシャツと布団に吸われていく。

「ああ、なにやってるんですか」

「うぅ....、ごめん....」

コップを奪われ、零した水も郁人が拭いてくれた。
水は飲みたかったけどもう諦めて寝てしまおう、と横になった直後、柔らかいものが唇に押し当てられた。そして、諦めていた水がゆっくりと唇の隙間から注ぎ込まれる。
どういう状況かいまいち理解できていなかったが必死に喉を動かした。

「ん.......ぁ、もっと.....」

全然足りなくてそうせがむとうめき声のようなものが聞こえた。
不思議に思った瞬間、再び柔らかいもので唇を塞がれる。水だ!と思って口を開けると、水とは全く別の感触のものがぬるりと入り込んだ。

「んう!?」

咄嗟に顔を背けようとしたが、両頬押さえられそれもできない。

「んっ.....ふ....、んんっ.....」

ぬるりとしたそれは逆に口の中の水分を奪うかのように激しく動き回り、かと思えば、つーっとゆっくり俺の舌を這う。
キスをされていたと気づいたのは解放された後だった。

「あ.....、な.....」

だんだん意識がはっきりしてきて、羞恥がこみ上げる。

「あー!もう!どんだけ無防備なんですか!他の人の前でもそんな顔してるんじゃないでしょうね...?」

「え....?」

そんな顔ってどんな顔?

「俺じゃなかったらとっくに喰われてますからね!?わかってます?」

くわれる、食われる....?

わからず首を傾げると、郁人は苛立ったように髪の毛をかき乱した。

「お、怒ってる....?」

「はぁ....、怒ってませんよ。......ですけど、伊織先輩は誰にでもなっちゃうんですか?」

「へ.....うぁ!」

突然、身体の中心に甘い刺激が走った。
見るとパンツしか履いていない俺の下半身の中心に郁人が膝を押しつけている。
しかもなぜかそこはすでに緩く勃ち上がっている。

「え、あ..なんで....」

「それはこっちの台詞せりふです。誰にでもこうなるんですか?」

「ひっ!ぁ、ちがっ....」

「違う?じゃあなんで勃ってんですか?俺だから?」

「や、ぁっ!わか、んない.....っ」

「わからない?自分のことなのにわからないんですか?」

「ぁっ、ん....ごめ.....」

や、やっぱりなんか怒ってないか...!?

思わず謝った俺を見て、郁人はまたため息をついた。

「いく...んっ」

整った顔が近づき、首筋にぢゅっ、と強く吸いつかれる。
離れていく時の顔をじっと見つめるとふっ、と笑った。

あれ...、怒ってたんじゃないの....?

その笑顔に少しドキっとしてしまった。

「じゃあ、俺帰りますね」

「え.....」

そう言ってあっさり離れていく郁人をぽかんと見つめることしかできない。

「あれ、なんか期待してました?」

にやりと揶揄うように笑われ、少なからず期待していたことを思い知らされる。

「し、してないっ...!」

そんな心の内を悟られたくなくて、慌てて視線を逸らす。

「ふふ、この先は伊織先輩が泣いて懇願するまでしませんよ」

「なっ....」

「ちゃんと水飲んでくださいね。何かあったら夜中でも連絡してくれていいんで。....おやすみなさい」

頬をさらりと撫でて郁人は本当に部屋を出て行ってしまった。
俺は身体の熱が治るのを待ってから、言われた通り水を飲んで無理矢理目を閉じた。
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