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第十四章

彼の家族⑧

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「蒼空くんが騙されているんじゃないかと思って相手を見に来たの」
「なんで美和が凛花のことを知っているんだ?」
「大介くんに聞いた」
「はあ? あいつ……」
「だって、蒼空くんが急に会ってほしい人がいるなんて中途半端に言って帰るからでしょう?」
「次に帰る時は凛花も一緒にと思っていたから、前もって伝えたんだ」

 兄妹喧嘩が始まってしまう。声を荒げているわけではないけれど、ここはSAKURAのラウンジなのだ。

「蒼空さん」
「ん?」
「ここでは……」
 
 周囲を見回した私の視線で、注目されていることに気づいたのだろう。周囲に頭を下げて謝罪をしている。

「場所を変えよう」
「わかったわ」

 あっさりと納得した妹さんを連れて、フロントでいつもの部屋を取っている。いつも疑問に思うけれど、突然訪れて部屋が取れるのが凄い。いつか理由を聞いてみたいけれど、今ではないことはわかる。

 部屋に入ってリビングのソファに腰を下ろし、部屋をマジマジと見回す。何度か滞在したけれど、大半を寝室で過ごしている。

「で? こそこそと凛花を呼び出してどうするつもりだったんだ?」
「私が蒼空くんに相応しいか見てあげようと思って」
「はあ?」

 蒼空さんの声は、呆れを通り越して若干怒っているように聞こえる。

「だって、今までどちらかと言えば女性から距離を取っていた蒼空くんが、急に会ってほしい人がいるなんて言うから、騙されているんじゃないかと思うじゃない」
「俺にも凛花にも失礼だな」
「だって~」

 先程の強気な態度はどこへ行ったのか、目をウルウルさせている。

「先ずは凛花に謝れ」
「ゴメンナサイ」

 小さい声でボソリと謝罪の言葉を呟いたけれど、まだ納得はしていないようだ。

「さっきチラッと聞いたけど、高校のバスケ部のマネージャーだったって」
「ああ」
「蒼空くんがよく大介くんと話していた働き者のマネージャーって」
「凛花のことだ」
「あの頃からこっそりつき合ってたわけではないよね?」
「最近つき合い始めたんだ」
「同じ会社で働いているのに?」
「ああ」
「全く理解できない」


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